イギリスとUAEの違法金融対策協定(RUSIの記事)
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2021年10月1日に英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)が、イギリスとUAEのパートナーシップ協定締結に伴う、今後の展望に関する記事を発表した。内容は、イギリスの現在の取組とUAEの取組の対比、今後の違法金融対策の方向性などについて概観するものである。個別具体の取組として、日本にも参考とできる点が多々あることから、本記事の概要についてご紹介させていただく。
↓リンク先(Getting Serious? The UK–UAE Illicit Finance Partnership Holds Promise)
https://rusi.org/explore-our-research/publications/commentary/getting-serious-uk-uae-illicit-finance-partnership-holds-promise
1.RUSIの記事について
・違法金融活動の中心地として悪名をはせているイギリスとUAE(アラブ首長国連邦)は、2021年9月16日違法金融を共同で調査するパートナーシップ協定を締結した。イギリスが経済犯罪計画の見直しにおいて重視している多国間での取り組みの一端であり、望ましい方向での政策推進と言える。この協定の成功は今後の活動にかかっている。
・先日特ダネとして報道された金融活動作業部会(FATF)の審査結果において、この協定が失敗した場合、UAE及び第三国は更に経済犯罪に苦しめられることになると評価されていた。更にバーゼルガバナンス研究所のランキングでは、UAEは110か国中79位とされ、FATFのグレーリストへの追加の危険性もある。2020年度のイギリスのリスクアセスメントでも、イギリスにとってのマネーロンダリング脅威国と評価されている。
・ここ近年、両国は積極的に違法金融対策を進めてきた。イギリスは2018年の相互審査報告書の結果を受け、2019年経済犯罪計画を策定し、2021年3月に発表された統合戦略においても、外交、防衛、安全保障政策の一環として違法金融に取り組むとした。UAEは数多くの金融犯罪研修、会議、ワークショップを開催しており、国家的に金融脆弱性の克服に取り組むというレポートを発表している。
・こういった発言は歓迎すべきものだが、具体的な内容については言及されていない。イギリスはNGOや民間部門との連携を推進するとし、2020年2月に市民社会運営グループを創設し、経済犯罪計画策定に民間の声を取り込むよう尽力している。
対してUAEの違法金融対策には透明性がなく、独立した学術的な検証を受けることに積極的ではない。例えば金融犯罪対処のための国家戦略を公開しておらず、金融犯罪調査の民間組織も存在していない。このことから、UAEはイギリスの仕組みから学ぶべきことが多々ある。
・今後この取り組みの成果は、以下の点に着目することで明白になるだろう。両国が関係している金融事件の現象、資産没収の頻度、違法金融犯罪者への制裁などである。
2.本記事についての感想
イギリスは個々の所、外交に積極的である。統合戦略において、ブレクジット後はアジア地域へ注力すると宣言しており、中東外交もその一環に含まれている。中東には一定の権益を持っており、各国との関係も総じて良好であり、こういった取り組みが今後も推進されるだろう。
またマネーロンダリング対策として、イスラム金融への対応が必要と言う観点もあるのだろう。イスラム金融は一種独特の体系となっており、特にその現金送金システム「ハワラ」は不透明であり、デジタル時代にとっても非常に相性が悪いシステムである。こういった旧態依然の仕組みに有効に対処するためには、イスラム教国を取り込んでいく必要がある。
日本は第4次相互審査において成績が悪かったこともあり、更なる違法金融対策を推進していく必要がある。日本単独でできることには限りがあることから、今回のようなパートナーシップ協定に積極的に取り組んでいただきたいものである。
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