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高温及び低温による死亡リスク:各国比較(2)


今回の記事は、高温及び低温による死亡リスク:各国比較(1)の続編である。前回の記事については、以下のリンクを参照いただきたい。

https://note.com/karzy_kemaru/n/n5f28d0a084c7

② 各項目の詳細について
  今回研究の対象とした死亡者数は、気温の影響による死亡が明らかであるもののほか、死因が明らかでない場合は外的要因がない場合に限り計上している。(国際疾病分類基準 [ICD]-9 0-799, ICD-10 A00-R99に準拠。)
最も死亡率が高い国はイタリア、中国、日本であり、最も低い国はタイ、ブラジル、スウェーデンとなっている。全ての国において、ほとんどの気温要因の死亡は中度の低温に関連しており、全体の死亡率の試算では6.66%(95%信頼区間は6.41%から6.86%)であった。この結果は、図1の各国を代表する13都市のグラフに示した結果と一致している。(灰色の縦線は、死亡率が最小となる最適気温であり、灰色の網掛け部分は、死亡率の幅である。)

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 また、中度の気温と極度の気温に関連した構成要素に分割して死亡危険度を分析した場合の結果とも一致している。(図2参照)

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 極端な気温に着目した研究によると、熱波により死亡リスクは8.9%から12.1%増加し、寒波による死亡リスクは12.8%増加することが示唆されている。高温による死亡率は、欧州3か国では0.37%から1.45%の間であるとしており、ロンドンにおける死亡のうち、5.4%が低温によるものであり、高温によるものはないと試算している。
 高温は心臓血管系疾患の最大の要因であり、心拍、血液の粘性・凝固性、脳かん流、血管収縮反応の減退などの後に、体温調節機能の限界を超えた場合に、急速な症状が誘発される。このことは図1の極端な高温における危険度の急上昇と合致している。
 低温に関係する死亡率の主な要因となっている生理学的プロセスは、心臓血管及び呼吸器系への影響である。低温にさらされることにより、血圧、血漿フィブリノゲン、血管収縮、血液粘性及び炎症反応のような要因により心臓血管にかかるストレスと関係している。低温は気管支収縮を引き起こし、粘膜線毛運動、他の免疫反応を抑制し、部分的な炎症及び呼吸器系への感染リスクを増大させる。これらの生理学的反応は長期間継続する傾向にあり、中度の低温が継続した場合における死亡率の増加につながっている。
 ただ、この結果が普遍的であると結論付けることまではできないことに留意する必要がある。本研究において取り扱った国や都市は、多様な気候帯や民族を抱えており、更に地方都市やアフリカや中東地域が除外されているという点においても、本結論が全世界的に適用可能であるとまでは言えない。ただ、高温及び低温に関する一般的な傾向を明らかにすることには成功しているだろう。
 今回の知見は、様々な気候変動シナリオにおける健康への影響を適切に考慮するための基準が必要とされていることを示唆している。

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