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1.1兆ドルインフラ予算の意味するもの(ヘリテージ財団の記事)

写真出展:MotionStudiosによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/motionstudios-3323223/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=1675540

 ヘリテージ財団は2021年8月10日に、1.1兆ドルインフラ予算に関する記事を発表した。内容は、8月10日に1.1兆ドルインフラ予算が上院で可決されたことに伴い、今後の展開について概観するものである。今後、アメリカ民主党の左翼政策がどのように推進されるのかを占ううえで参考になることから、本記事の概要を紹介させていただく。

↓リンク先(6 Troubling Leftist Wins in $1.1 Trillion Infrastructure Bill)
https://www.heritage.org/budget-and-spending/commentary/6-troubling-leftist-wins-11-trillion-infrastructure-bill

1.本記事の内容について
・8月10日に、上院で民主党50名及び共和党19名の賛成多数により、1.1兆ドル予算案が可決した。超党派による合意と言うことで、折衷案になったと言う印象があるが、実際の所左翼の勝利と言える。詳細については以下の通り。

  ① 3.5兆円の社会保障予算とのバーター
   民主党は3.5兆円の社会福祉予算とのバーターで、1.1兆ドルのインフラ予算案を可決しないと宣言していた。その内容たるや極左の願望の塊であり、福祉対象年齢の拡大、失業を生む増税、進歩的な気候変動対策、不法移民への恩赦などである。

  ② 債務上限闘争前の共和党の財政赤字支持
   議会予算局によると、本法案により財政赤字が2560億ドル拡大するとしているが、一部の予算が含まれておらず、甘い見込みである。実際にはその倍以上に赤字が拡大することとなり、一家庭当たり2,900ドルの負債増加となる。
   また時期も悪く、7月31日で失効となる債務上限について審議している最中であり、新しい債務上限を簡単に超過してしまうことが予想される。民主党への妥協は、小さな政府を標榜する共和党の姿勢とも相反している。

  ③ インフラへの左翼正義及び気候変動対策の埋め込み
   インフラ法案にも関わらず、身障者への特別支援、女性トラックドライバーの増員、囚人へのインターネット整備などが含まれている。気候変動対策に関しては、電気自動車、電気スタンド、電気バス、電気フェリー、低反射アスファルト舗装などが含まれている。


  ④ 反自動車主義
 アメリカは人口密度が低く、移動の手段として自動車が多く用いられている。しかし本法案は自動車を制限し、公共交通機関を使うように仕向けている。
 例えば、道路の削減が盛り込まれており、このことにより道路が不便となり、渋滞が発生しやすくなる。また自動車による旅行税も検討されている。その他、公共交通機関の強化に予算が割かれているが、アメリカの移動手段において電車はそれほど使われていないため、効果がそれほど見込めない。

⑤ 政府の権限強化
 政府があらゆる分野に介入するような法案となっており、例えば地方政府が担うべき水道システムに550億ドルもの予算を計上している。また州政府への交付金削減も含まれている。その他、ブティジェッジ運輸長官は1000億ドルのインフラ補助金を民族差別解消や平等などに優先的に振り向けるとしている。更に悪いのは、民間部門への介入である。エネルギーとブロードバンドインターネッに1380億ドルの予算が配分されているが、民業圧迫になるような内容ばかりである。
   アメリカは多様な社会であり、連邦政府の画一的な価値観を押し付けるのではなく、州ごとの意思決定に委ねるべきである。

  ⑥ 利用者支払いの原則の終焉
   高速道路や空港利用などの料金は、利用者が支払うものである。この利用者支払いの原則のため、悪質なインフラ事業が制限され、利便性の高いインフラが実現されてきた。
   しかし今回の予算ではこの原則が崩れており、例えば高速道路にガソリン税以外のインフラ以外の予算が割り当てられている。また、石油備蓄基金や電波オークションの予算が、新たなインフラへの予算に割り当てられている。この傾向が進めば、左翼が好む無駄な事業に予算を配分することを正当化することになる。

2.本記事読後の感想
  私は過去何度もこの予算案について記事を書いているが、それは予算案を見ることで実現される政策が明確になるためである。日本では、メディアを通じて政治を知ろうとする人があまりにも多いが、重要な一次情報を見なければ政治を理解することは不可能であり、その中でも予算案を追跡し続けることが政治を知る上で最も有効であるということを認識しておいていただきたい。
  さて本予算案であるが、下院にて9月に審議される予定となっており、できれば大幅に修正されて欲しいものである。本予算は金額こそ大きいものの、不発に終わりそうな案件が多々あることから、民業圧迫のインターネットの部分だけでも解消していただければと思う。
  ただこれは悪いことばかりではなく、日本としてはある意味でチャンスが巡ってきている。アメリカのインフラ予算の一部だけでも取れれば儲けものであり、例えば無駄な公共交通機関の案件などで日本企業が入れそうな案件を今から探っておいた方がいいのではないか。その他、気候変動対策や差別解消という体裁さえ整えていれば、案外簡単に入り込めそうにも思われる。アメリカの失政に落ち込むのではなく、この機を活用して日本の経済成長を促進するというぐらいのしたたかさを見せてもらいたいものである。
 

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