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ドイツはついに「高尚な」エネルギー政策に目覚めてしまったか(CFACTの記事)

 写真出展:Alexandra_KochによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/alexandra_koch-621802/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=7644060

 2023年3月15日にCFACTは、ドイツのエネルギー政策の現状に関する記事を発表した。内容は、ドイツの再生可能エネルギー推進とエネルギー不足へのちぐはぐな対応を概観し、地球温暖化対策の非現実性を明らかにするものである。
 ドイツは地球温暖化対策の先導者として、原発の廃止や電気自動車の推進、化石燃料から再生可能エネルギーへの移行などを推進してきたが、非現実的なエネルギー政策で危機に陥り、ちぐはぐな対応を繰り返している。地球温暖化対策の思想汚染がもたらす深刻な帰結を認識するうえで参考になることから、本記事の概要を紹介させていただく。
↓リンク先(https://www.cfact.org/2023/03/15/is-germany-waking-up-to-virtuous-energy-policies/)

1.本記事の内容について
 ・人文科学を専門とするオーストリアウェブスター大学のシェールハンマー教授は、ドイツのエネルギー研究は、地球温暖化対策のために大きく毀損されたと批判した。これは、エネルギーの地政学的情勢を十分に考慮に入れることなく再生可能エネルギーへの移行を推進するあまり、エネルギーが不足する事態に陥ったことを批判したものである。
 ・ここ最近のドイツの地球温暖化対策は、大きく前進した。2012年に、ドイツ政府は2022年までにすべての原子力発電所を閉鎖すると発表した。この目標を達成するため、ロシア産の天然ガス輸入が激減した昨夏、ハベック経済担当大臣は、原子力発電所に頼らないと発言した。この決定は、シンクタンクがエネルギー移行しない場合に2050年までに数兆ドルものコストがかかると試算したことを根拠としている。更には、2028年までに石炭発電所を全て閉鎖するとも公約しているのである。国内だけに留まらず、G7においても天然ガスへの投資を停止するよう主張している。また、エネルギー確保のために締結されたEUの1994年のエネルギー憲章に関する条約からも脱退することを決定した。
 ・しかし、ウクライナ戦争に伴いロシアからの天然ガス輸入が激減してしまったことから、原子力発電所ではなく、石炭・石油の発電所に頼ることとなり、冬季の暖房に重要な天然ガスを確保することを余儀なくされた。今後もドイツはエネルギー確保に難儀することが必定であり、3月6日のマッキンゼーが発表した報告書によると、2030年までに最大30ギガワットの安定電源が不足するとしている。たとえ大量に再生可能エネルギー発電を増加させたとしても賄いきれない電力量であり、天然ガスや石炭発電所に頼らざるを得ないのである。
 ・太陽光と風力発電による発電量が電力を賄いきれなくなった直後、ハベック経済担当大臣は、天然ガス発電所の新規建設の公募を発表した。それでもなお、この大臣は2045年までに温室効果ガス排出ゼロを達成できると考えているようである。1月のドイツ連邦ネットワーク庁(エネルギー政策管轄)の報告書では、2030年までに石炭火力発電所を廃止しても、エネルギー安全保障上問題ないとしているのである。
 ・国内でも問題山積だが、アメリカのインフレ抑制法により北米で生産された自動車が優遇されるようになったことから、ドイツの自動車産業も大きく打撃を受けることとなる。ドイツ商工会議所の調査によると、23%の自動車企業はアメリカやカナダに生産拠点を移転することを考えているとされている。テスラはドイツでのバッテリーを減産し、北米の生産を強化するとしている。アウディやフォルクスワーゲンも、北米で精査した場合に与えられる自動車1台当たり5,700ドルの補助金を欲しがっているほどである。
 ・このような状況下においても、EUは保護主義的な政策を採用しようとしない。ドイツのリンドナー財務大臣も、すでに8600億ドルの公的部門向け基金を創設して財源が不足しており、アメリカ並みの補助金をねん出することができないと認めている。ボッシュやIGメタルなどの労働組合は、工場移転による人員整理を懸念しており、90万人もの内燃機関関連の企業向け雇用が危機に陥るとして警告を発している。
 ・さらに悪いことに、ドイツは1月から電気自動車の補助金を6000ユーロから3000ユーロに引き下げてしまった。電気自動車の需要が堅調であろうという楽観的な見込みを根拠としているようだが、交通行政関係者は2023年の生産台数は8%しか増加しないと見ているようである。また政策もちぐはぐであり、ウィッシング運輸大臣は、内燃機関系の自動車であってもクリーンエネルギーを利用する場合にはEUの規制対象から外すよう求めている。ドイツの現状は、社会を混乱させることなく再生可能エネルギーへの移行はできない、という好例であろう。

2.本記事読後の感想
 ウクライナ戦争に伴いエネルギー安全保障の問題が顕在化し、地球温暖化対策を強力に推進してきたドイツの偽善ぶりが明らかになって愉快なほどである。これまでお花畑な議論で散々日本を批判してきたわけであり、日本はこういった機会をとらえてドイツを徹底的にたたけばよいのである。
 ヨーロッパ諸国は長年ルールメイキングで優位を確保し世界を先導してきたが、ついに無理がたたって行き尽く所まで来たという感があるEUが勝手に定めたルールなどに、日本はお付き合いしてあげる必要はない。あまりこういったことは言いたくないが、こと地球温暖化対策においては中国やロシアを見習った方がいいのである。EUにルールを守らせつつ、再生可能エネルギー市場はきっちりといただくという、強かさこそが重要である。
 ただ当の日本の政権は全くの無策であり、こういった機会をも全く生かせないだろう。かろうじて原発再稼働の道筋がつきつつあるように見えるが、ちょっとしたことで腰砕けになることは必定である。放送法の下らない議論などしている場合ではなく、もっと本質的なエネルギー政策や外交・安全保障政策に注力して欲しいものである。

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