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効果的なマネーロンダリング対策と監視体制(RUSIの記事)

写真出展:Mohamed HassanによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/mohamed_hassan-5229782/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=4319002

 2024年9月20日に英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)は、イギリスのマネーロンダリング対策の進捗状況と監視体制強化を提言する記事を発表した。内容は、金融活動作業部会の第5次評価が迫る最中、イギリスのマネーロンダリング対策の現状を概観するものである。
 イギリスは金融大国ではあるが、その規制の甘さからマネーロンダリングの温床となっているとも指摘されており、なかなか有効な対策を示せていない。ただ規制を強化すれば金融センターとしての魅力が低下するため、犯罪抑止と経済を両立させるための政策を考案するのが容易ではないということも現実である。今後のマネーロンダリング対策の在り方を考える参考として、本記事の概要を紹介させていただく。

↓リンク先(I Know it When I See it: Effective Anti-Money Laundering Supervision)
https://www.rusi.org/explore-our-research/publications/commentary/i-know-it-when-i-see-it-effective-anti-money-laundering-supervision

1.RUSIの記事について
 ・2012年に金融活動作業部会(FATF)は、効果的なマネーロンダリング対策のため、40の推奨事項を設定すると共に、以下の3つの目標政策を掲げた。1) マネーロンダリング対策とテロリストへの資金援助を防止措置、2) 経済制裁や資産凍結を含めた脅威の検知と防止措置、3) 金融システムにテロリストからの利益や資金が入り込まない仕組みを導入すること。この目標を達成するため、11の細目についても定めた。
 ・この細目中でも各国が苦慮しているのが、リスク前提に基づいた金融機関等の監視である。例えば2018年の相互評価によると、本項目におけるイギリスの評価は「平均レベル」というものだった。金融活動監視機構、ギャンブル監視委員会の評価は比較的高かったが、それでもリスク前提に基づいた対策が可能か否かについては、職員個々人の能力に依存しているとして、必ずしも効果的な対策ができているとは言えないと評価されている。
 ・金融活動作業部会は、第5次評価が迫っている中、241ページにも及ぶ新しい基準を発表し、リスク前提の対策に関する細目を更に詳細にした。まず金融機関と暗号資産に関する基準を特出しで独立させ、非金融機関を含めた効果的な監視対策に関する評価と分離した。イギリスはここ数年の改革により、金融機関への監視体制は改善してきたが、それでも非金融機関の監視は不十分な部分がある。このような中、金融機関取締機関検査室、国家経済犯罪対策センター、国家犯罪対策庁は、組織間でマネーロンダリング対策官の育成等に努めると発表し、組織間連携を強化する動きに出ている。
 ・ただ効果的なマネーロンダリング対策は、建前だけでは実践できない。金融活動作業部会の基準では結果が求められており、法執行機関の活動と監査結果、監査官と産業のリスクへの理解、情報共有などの組織間の協力体制などに関する詳細な評価項目が設定されている。イギリス政府がマネーロンダリング対策強化答申にて設定した集中改革期間は、2023年9月に完了するが、目覚ましい進歩を遂げたとは言えない。もっとも、金融活動作業部会の項目を充足している国はほとんどなく、現在提示されている基準を満たすのか、それとも各国が独自で対策を推進するのか、手探りで進めていくしかないだろう。

2.本記事についての感想
 今回はあまり内容が薄いものとなっているが、マネーロンダリング対策はなかなか進まない現状があるということをよく示したものとなっている。法執行機関が効果的にマネーロンダリング対策に尽力しているかどうかを監視することも難しいが、監視側の能力向上も相変わらず課題となっている。
世界的なテロ活動の活発化、移民などの大量流入、暗号資産の台頭などマネーロンダリングの温床となる環境が醸成されており、取り締まり側の対応が追い付かない。有効な対策としては、せいぜい金融機関利用者への規制を強めるといった小手先のものしかなく、効果的な対策のためには官民の協力が必要となる。財務省や金融庁はある程度の役割を果たすことができるだろうが、権力で脅すような手段では継続的かつ有効な対策とはならない。協力関係を構築できるような場の設定から始めていくしかないだろう。
 このことに関して思ったことは、自民党の総裁選では外交・安全保障の話がほとんど出てこない。岸田政権のかりそめの成果が誇大広告されているためか、なかなか宣伝文句として採用しにくいのだろうが、マネーロンダリング対策やサイバーセキュリティ対策は今後の日本を左右するような大きな問題である。夫婦別姓などの細かいジェンダー政策などにかまけている暇があるなら、こういった普段の生活に影響がある話題を優先するべきなのだが、これはお花畑の思想にかまけている日本人があまりにも多いということなのだろう。
 
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