小型原子力発電所革命は目前にあり(CFACTの記事)
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2024年10月6日にCFACTは、小型原子力発電所の現状に関する記事を発表した。内容は、アメリカの小型原子力発電所の現状や巨大技術企業の原子力発電所再稼働への動きを、今後の展開について概観するものである。
AIの発展に伴って電力需要が大幅に増加することが見込まれているが、再生可能エネルギーではこの電力需要を賄うことができず、かといって二酸化炭素排出の抑制という空気に逆らわずにエネルギーを確保するには小型原子力発電所が必須となる。今後のエネルギー事情を予見する参考として、本記事の概要を紹介させていただく。
↓リンク先(The small modular reactor revolution is arriving soon)
https://www.cfact.org/2024/10/06/the-small-modular-reactor-revolution-is-arriving-soon/
1.本記事の内容について
・2024年は、原子力エネルギーにとって大きな年になりそうだ。エネルギー省は、第三世代以上の小型原子炉の研究開発に9億ドルの予算を計上すると発表した。またインフレ抑制法にて原子力事業への投資減税が認められ、4月にはヴォーグル原子力発電所からの電力供給が開始された。9月20日には、マイクロソフトはAIの電力需要を見越し、ペンシルバニア州スリー・マイル島の835メガワット相当の原子力発電所を再稼働させ、データセンターに電力供給することを発表し、この発電所再稼働に160億ドルを拠出することとしている。
・長年の間、原子力エネルギーは失敗した、危険なエネルギー源としてみなされてきた
。IPCC第6次評価報告書の政策決定者向け要約でも原子力発電は1度しか言及されておらず(削除に反対したのはアメリカである)、2024年のピューによる世論調査でも、原子力発電所の支持率は56%である。(太陽光や風力発電はそれぞれ78%、72%である。)ただ気候変動論者も徐々に原子力発電所を受け入れる方向に態度を変化させており、例えばC3 ソリューションという気候関連のシンクタンクは、原子力発電所の実際の危険性は想定よりもかなり低いと発表している。
・このような中、原子力業界では小型原子力発電が主役の座を占めつつある。国際原子力エネルギー産業の定義によると、小型原子力発電は先端原子炉を使用した発電方式であり、1基当たり300メガワットの発電量までのものとなっている。従来の原子力発電所と比較すると、建設期間は、3~4年(従来は10年)、コストは従来の原子力発電所の2分の1、危険区域は40エーカー(従来は半径10マイル)と格段に改善している。
・世界原子力協会によると、440の民間原子力発電所の発電量は、世界の発電量の9%、低二酸化炭素排出型発電量における割合は12%を占めているが、ここには小型原子力発電所は含まれていない。原子力発電所には加圧水型と沸騰水型があり、これら技術が小型原子力発電所に応用されている。技術別に企業を分類すると以下の通り。
加圧水型原子炉:NuScale Power、Holtec Inernational、ウェスティングハウス
沸騰水型原子炉:GE Vernova
・現在小型原子力発電所は第4世代までが誕生している。まだこの世代の発電所は稼働していないが、技術的に大菊進展している。前世代とは異なり、ある程度高濃縮されたウラン(5~20%)を使用しており、核燃料サイクルは24か月以上となっている。この濃縮ウランは次世代核燃料と呼ばれているが、ロシアと中国以外に大規模な生産施設を有しておらず、まだ商用では普及していない。ただアメリカで生産施設を建造するには多大な予算と時間が必要となることから、当面はロシアの台頭を抑止するため、ロシア産ウラン輸入禁止法が下院で可決され、2024年5月13日から施行されている。
・現在小型原子力発電所の認可を受けているのは、NuScaleのみである。認可までは42か月も要し、更には5億ドルも投じた。再エネの流れで手続きは進まず、コストは増すばかりであるが、マイクロソフトとブラックロックが立ち上げた300億ドルのAI及びエネルギーファンドにNuScaleが絡んでおり、今後小型原子力発電所が重要な役割を果たす可能性は高い。今後AI需要の高まりに伴いエネルギー需要も高まり、巨大技術企業が小型原子力発電所に着目していくことが見込まれており、クリーンエネルギーの有望株として小型原子力発電所が発展することは間違いないだろう。
2.本記事読後の感想
バイデン政権はエネルギー政策で大きな失敗を犯しているが、議会の方は現実路線で政策を考えているようであり、小型原子力発電所の推進を着実に進めている。トランプ政権が成立すれば、この現実路線はますます大きく進むことになるだろう。この成果が見えてくるのは数十年後だろうが、こういった布石が後に大きな違いとなって現れるのであり、エネルギー政策は長期的な視点で見ていかなければならない。
日本では電気料金等の補助が継続するというニュースが流れているが、本質的に重要なことは、発電方式の多様化であり、一時的な補助金の拠出ではない。電気料金の高騰は火力や再生可能エネルギー一辺倒の発電になっているからなのであって、原子力発電所を稼働させるだけで、塗炭の苦しみにあえぐ人々の多くが救われるのである。
石破政権は選挙で大敗する可能性が高く、結果としてアメ玉を数多く用意してくるだろうが、エネルギー政策の重要事項の一つは間違いなく原子力発電所の稼働である。もしこのことに手を付けなければ、半年後の参議院選挙で更にお灸をすえるというぐらいの脅威を与えなければならない。
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