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中国の重要資源輸出規制と米中技術覇権(CSISの記事)

写真出展:Gordon JohnsonによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/gdj-1086657/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=7656759

 CSISは2024年12月4日に、中国の重要資源輸出規制に関する記事を発表した。内容は、ここ5年間にわたる半導体の輸出規制とその影響の概観、12月3日にアメリカ商務省から発表された新たな半導体規制に対し、中国が重要資源禁輸で対抗してきたことへの影響について分析するものである。輸出規制という文字が躍ると何か実質的な変化が発生しているかのように論じられがちだが、実態が報じられることは少なく、半導体や重要資源の現状を理解することできるような情報があまりないことから、今回の記事はよい情報源と言えるだろう。今後の米中覇権戦争の動向を考える参考として、その概要を紹介させていただく。

↓リンク先(China Imposes Its Most Stringent Critical Minerals Export Restrictions Yet Amidst Escalating U.S.-China Tech War)
https://www.csis.org/analysis/china-imposes-its-most-stringent-critical-minerals-export-restrictions-yet-amidst

1.記事の内容について
 ・Q1. 12月2日にバイデン政権が発表した、最先端半導体の中国への輸出規制は何か。
   A1.商務省が発表した最先端半導体輸出規制は、中国人民解放軍がAIを軍の現代化に活用できないようにし、過去の規制をさらに強める措置を講じたものとなっている。具体的には、24の半導体開発装置や3つの関連ソフトが禁輸され、140の中国企業がエンティティリストに追加され、第3国経由でアメリカのチップが海外企業に流れることも防止する建付けとなっている。
・Q2. これに対し、中国はどのような対抗措置を講じてきたのか。
  A2. 中国はアメリカの規制に対して即座に重要資源の輸出規制で対抗した。具体的には半導体や防衛産業に使用されている鉱物類であり、ガリウム、ゲルマニウム、アンチモンが禁輸され、グラファイトも輸出に際してより厳格に審査されることとなった。これはアメリカが軍民両用の資源として発表したリストに掲載されているものである。
 ・Q3. 中国の対抗措置は、アメリカの国家安全保障にどのような影響があるのか。
  A3. 中国はアメリカの5~6倍のペースで軍拡を継続しており、軍事的にはほぼ有事下の体制にある。このような中で軍民両用の資源を禁輸するとなると、アメリカと中国の軍事バランスが崩壊することにつながりかねない。特にアンチモンは、アメリカでは生産することができないことから、9月に中国からの輸入が激減した際は、価格が200%も上昇した。このようなことからも、アメリカの兵器開発に一定の影響があると考えられる。
 ・Q4. アメリカの輸出規制は、経済安全保障上どのような意味を持つのか。
   A4. ガリウムとゲルマニウムは、デバイスのスピードやエネルギー効率を高める性質を持っていることから、次世代の先端半導体開発に重要な資源となっている。アメリカ地質調査所の報告書によると、中国の禁輸措置でアメリカのGDPが34億ドル縮小する可能性があるとされている。
 ・Q5. 過去5年間のアメリカの輸出規制は、どのように運用されてきたのか。また重要資源のサプライチェーンにどのような影響があったか。
   A5. 2019年に当時のトランプ政権がファーウェイを標的とした半導体輸出規制を開始したが、第三国経由で入手することが可能という欠点があったことから、更に強力な規制を行った。またファーウェイ以外の中国企業もエンティティリストに追加するなど、中国全体を規制する方向へ舵をきった。バイデン政権もこの流れを受け継ぎ、2022年に中国による安全保障上の脅威に対抗するための、半導体規制を実施し、商務省産業安全保障局は輸出規制対象の半導体を列挙した。2023年7月に中国は対抗措置としてガリウムとゲルマニウムの輸出制限を発表し、中国からの輸入が激減することとなった。2023年10月に、バイデン政権はAI向け半導体や半導体製造装置の輸出規制を開始し、中国は高純度・高品質のグラファイトの輸出規制で対抗した。両国とも規制を強化してきており、米中の対立は深まっている。
 ・Q6. アメリカはどのように中国以外の国から重要資源を入手すればよいのか。
     A6. 友好国等への鉱物開発支援が重要となる。例えばマダガスカル、モザンビーク、タンザニアは世界のグラファイト埋蔵量の21%を誇っており、2024年に国際開発金融公社は、モザンビークにグラファイト採掘のため、1.5億ドルの借款を供与した。タングステンについては韓国が重要であり、カナダのアルモンティインダストリーズは、韓国の鉱山を再開し、2025年に処理工場を建造すると発表している。中国の輸出はこの規制処理前から激減してきており、中国の発表は単なる脅しに過ぎないと考えられるが、それでも中国は他の鉱物についても圧倒的なシェアを誇っており、貿易戦争は継続するだろう。

2.記事読後の感想について
  バイデン政権の半導体規制に対するCSISの評価はずいぶん高いようだが、今回の措置はすでに禁じられているものを少しばかり細かく条件を設定したという程度にとどまっており、実質的な効果は限定的である。中国の対抗措置も単なるブラフであり、メンツにこだわって反発しているに過ぎない。冷静に見て行けばアメリカの対中政策はバイデン政権の間は劇的に変化しないという事であり、次期トランプ政権に期待と言った所だろう。
レアアースなどの重要鉱物は採掘に際してウランなどが発生することから環境負荷が大きく労働者への補償も大きくしなければならないという点で、先進国をはじめとしたまっとうな国では非常に高額となってしまう。こういう意味で中国のような強権的な国では安価に掘削することができ、世界的な市場を握ることができるわけだ。ただ、中国のレアアースは正直な所低価格以外に魅力はなく、世界各国がレアアース採掘を始めれば、価格の高騰を伴うものの資源確保ができないわけではない。
  安全保障より重要な事項はないわけであり、価格高騰に短気を起こして政権を交代させてしまうという愚行を国民が犯しかねない状況がある。この問題は短期間で解決しないことから、政権がどれだけ国民を説得し続けられるのかにかかっている。

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