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密漁のマネーロンダリング対策(RUSIの記事)

写真出展:Jean van der MeulenによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/jeanvdmeulen-919322/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=7015038

 2022年11月16日に英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)は、密漁に関連した違法金融対策に関する記事を発表した。内容は、他の違法金融対策と比較して、密漁による違法金融対策の遅れている現状を指摘するものである。
 貿易によるマネーロンダリングはいまだに違法金融の主流になっており、野生生物や環境汚染なども地球温高対策の下で注目を浴びているものの、密漁に関しては関心が薄い。今後、各国が連携して取り組むべき重要課題の一つであり、マネーロンダリング対策の進む方向性を考えるうえで参考になることから、本記事の概要を紹介させていただく。

↓リンク先(Swimming in Dirty Money: It’s Time to Dive Below the Surface)
https://rusi.org/explore-our-research/publications/commentary/swimming-dirty-money-its-time-dive-below-surface

1.RUSIの記事について
 ・世界のマネーロンダリング対策は、暫時的に進められてきた。金融活動作業部会(FATF)のような国家横断的な組織は、地域別の組織が主体的に活動している。例えばアジア太平洋部会(APG)は国連薬物・犯罪事務所と連携し、2017年に違法野生生物取引(IWT)からもたらされる違法金融取引の調査や監視に関する再検証を実施した。FATFもこの先例に倣ってIWTの取組を進めると共に、違法伐採、違法採掘、廃棄物の違法取引などにもその範囲を進めたが、不思議なことに密漁については対象外となってきた。このことについては批判の対象となっているものの、環境犯罪が加えられたのみで密漁については未だに対象となっていない。
 ・G7も、密漁のマネーロンダリング対策には熱心ではない。2021年のG7イギリス会合では、環境大臣・内務大臣の会議の席で密漁の違法金融取引が取り上げられ、金融大臣会議では環境犯罪が取り上げられたが、国際的な取り組みには広がっていない。漁業は海から港、スーパーマーケットから銀行まで様々な利害関係者が関わっていることから、密輸は国際的な組織犯罪の形を取っており、その対応の困難さが取り組みを妨げているのである。
 ・このような状況の中で、アジア太平洋部会(APG)がまたしても口火を切ることとなった。最近の報告書において密漁の違法金融対策に1章を割き、高度に産業化された犯罪の具体例の分析を披露した。他の地域の部会もFATFの先導を待つことなくアジア太平洋部局の例に倣うべきである。また直接的なマネーロンダリング対策よりも中小規模の国々に対する影響力も大きいことから、違法金融対策としても有効であり、取り組む価値があると言える。
 ・ただ、FATFも密漁に取り組むべきである。部会長のラージャ・クマリ博士は、任期中の取組として環境や野生生物犯罪対策強化を表明しているが、この取り組みを密漁にまで広めるべきである。
 ・漁業は数十億の利益を生み出しており、これが新たな犯罪や漁船、水産加工機器、輸送車両などのインフラに用いられている。密漁は実態が見えやすいことから、金融調査や犯罪捜査などで割合容易に対処可能である。ただゾウやサイなどは分かりやすい保護対象であるが、海洋は世界中に広まっている分わかりにくく、対策が遅れるほど海洋汚染の負の影響が甚大になる可能性がある。今こそ違法金融対策として、密漁に着目するべきである。

2.本記事についての感想
 海洋国家たる日本にとって、密漁による違法金融対策は重視されるべき課題であると言える。電子マネーなどが普及してきたとはいえ、実物の貿易によるマネーロンダリングはいまだに主流であり、農業や野生生物の取引だけでなく、漁業もその一角を占めていると認識するべきである。日本は輸入大国であり、違法貿易の機会も多いことから、水際の対策も急務である。金融機関による対策だけでなく、実物経済のマネーロンダリング対策への強化も望みたいものである。
 ただ野生生物や環境対策については、地球温暖化対策と親和性が高く注目されやすいのか、やたらと資金が投入されている。ここも地球温暖化論者による汚い資金で汚染されているのだろうが、それなりに効果も上げてしまっているのも確かである。いずれにしても結果が出るのであればよいが、対策を進めるうえでもこういった隠れた危険性も認識しておくべきである。

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