バイデン政権の国防予算は物足りない(ヘリテージ財団の記事)
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ヘリテージ財団は2021年6月7日に、バイデン政権の国防総省の予算に関する記事を発表した。内容としては、国防力を弱体化させるものであるとして批判するというものである。当初から懸念されていた事項ではあるが、思っていたよりも深刻になる可能性が高い。このため、本記事の概要を紹介させていただく。
↓リンク先(Biden’s First Defense Budget Batters the Army)https://www.heritage.org/defense/commentary/bidens-first-defense-budget-batters-the-army
1.本記事の内容について
・2022年度の国防予算は、インフレ率を考慮すると最低でも1,800億ドル必要となるが、バイデン政権は1,730億ドルしか計上しておらず、7億ドルの購買力が低下することとなった。これはオバマ政権末期への本家帰りであり、軍の即応性が大きく損なわれることになる。
・今回の予算削減で影響を受ける事項は訓練、前線の戦力、防衛装備であり、全軍が影響を受けることになる。旅団の訓練は30%削減されており、戦闘訓練センターの対象となる軍は、2021年度の26から17軍(15の常備軍、2の州兵)に削減され、NATO軍の訓練は3.39億ドル削減された。
防衛装備については、ブラックホーク、アパッチ、チヌーク各ヘリコプターの整備事業が削減された。その他、車両のハンヴィーの更新は延長され、2055年まで使用することとなっている。1960年代物のM113装甲兵員輸送車の更新も、実質的に停止されてしまった。
・元陸軍参謀総長のマーク・ミルレイは、常備軍は少なくとも50万人必要と主張しており、超党派の国防戦略委員会の専門も戦略目標を達成するためには、今日よりも軍を拡大する必要があるとしている。
・これに対してバイデン政権の予算では、国防総省、国土安全保障省以外の省庁は16%も予算が増額されている。他国が軍備を増強しているにも関わらず、安全保障を主管する両省庁の予算だけがなぜか不当に減額されている。今回の予算案に議会が注文を付けている点は救いであり、今後の見直しに期待したい。
2.本記事読後の感想
今回の国防予算案は、1,800億ドル中の70億ドル(4%減)ということで、それほど影響がないように見えるが、実は非常に大きな影響がある。その理由は、燃料を再生可能エネルギーで代替するという予算が含まれており、見かけ上はそれなりの金額が維持されていても、燃料費などの維持管理費が増大する可能性が高い。海軍の1回の作戦で、生物由来燃料を使用した際には1,200万ドルを要したとされており、インフレを考慮すると実質的には10%カットに近いレベルになるのではないかと思われる。
このことは、バイデン政権の基本姿勢が反映されているように思われる。つまり、気候変動対策が安全保障上の最大の脅威であり、そちらに予算を傾斜させること、二酸化炭素を排出する化石燃料を入手するためのシーレーン防衛(中東から台湾海峡)から撤退し、クリーンエネルギーにシフトすることである。最も、党内左派に配慮を示したということで、本気ではない可能性もあるが、いずれにしても日本に大きな課題を突き付けていると言える。
幸いにして、ヨーロッパが艦隊をアジアに派遣するなどしており、防衛に携わる国々の厚みは増している。日本政府は、口では勇ましいことを言いつつも、防衛予算を実質的に減額しているなど、防衛に対して注力していないように思われる。補正予算の活用などにより、防衛費の見直しを期待したい。
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