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ファーウェイは最先端のプロセッサーを生産することができるのか(The Wall Street Journalの記事)

写真出展:Jacek AbramowiczによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/jacekabramowicz-1981807/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=1201074

 2024年8月13日にThe Wall Street Journalは、半導体の輸出規制と中国の動きに関する記事を発表した。内容は、ファーウェイがアメリカをはじめとした西側諸国の半導体輸出規制の網をかいくぐり、エヌビディアに対抗するべく新たな規格のプロセッサーを生産する動きを見せていることから、現在の開発状況に係る情報を概観し、今後の技術開発に係る動きを予測するものである。
 中国の技術革新については極端な情報が流布する傾向にあるが、かといって全てが嘘であるというわけでもない点に注意が必要である。こういった情報の一端から状況を正確に注視していなければ、西側諸国の輸出規制も効果が限定的となってしまう危険性もはらんでいることから、こういった情報の分析が重要なのである。技術の発展と規制の在り方について理解を深める参考として、本記事の概要を紹介させていただく。

↓リンク先(Huawei Readies New Chip to Challenge Nvidia, Surmounting U.S. Sanctions)
https://www.wsj.com/tech/ai/huawei-readies-new-chip-to-challenge-nvidia-surmounting-u-s-sanctions-e108187a?st=y2x8r500ktwcwv8&reflink=desktopwebshare_permalink

1.本記事の内容について
 ・ファーウェイは中国のAIプロセッサー市場において、エヌビディアを猛追しようとしている。ファーウェイが制作したアセンド910Cという最新のプロセッサーは、中国市場では調達できないエヌビディアのH100に対抗する能力を有しているとされており、中国のコンピューター業界から注目されている。この半導体生産技術の進歩は、中国がアメリカをはじめとした西側諸国の輸出規制を回避し、最新技術の研究開発能力を維持していることを示唆している。
 ・TikTok、バイトダンス、チャイナモバイルなどがアセンド910Cの調達契約交渉に入っているとされ、契約金額は20億ドルで7万組以上のチップが調達されると見込まれている。ただファーウェイの生産計画は遅れ気味となっており、当初10月に納品する見込みだったものが、現在は納期未定となっている。
 ・ファーウェイは2019年からエンティティリストに入っており、台湾などから半導体や設備を購入することができないようになっているが、5月に中国政府は半導体生産に3度目となる480億ドルもの資金を投じ、生産強化を進めている。また2022年に開始された輸出規制により中国は最先端半導体を調達できなくなっているものの、他の手段で何とか入手しようとしている。
 ・中国がエヌビディアから購入可能なプロセッサーは、H20という旧バージョンのものである。一方、OpenAI、アマゾン、グーグルは、ブラックウェルやGB200といった最先端プロセッサーを入手することができる。現在一定の性能以下のプロセッサーについては中国向け輸出が可能であるものの、エヌビディアが中国向けの規格として生産を進めているB20については、今後禁輸対象となる可能性がある。
 ・専門家の見解では、ファーウェイのアセンド910Cは、エヌビディアのB20よりも性能が上であるとされている。もしファーウェイがプロセッサーの技術革新を続ければ、エヌビディアは中国市場を失う可能性がある。アメリカが輸出規制を強めなかった場合、ファーウェイは140万組の910Cプロセッサーを生産することが可能になると見込まれている。
 ・中国市場においては、エヌビディアのH20は100万組以上が販売されており、契約金額は120億ドル相当に上るとされている。これはファーウェイの910Bの2倍の規模であり、アメリカがまだ優位に立っている。ただ中国側も手をこまねいているわけではなく、先に述べた910Cの生産や更なる輸出規制に向けて、現在調達可能な最新部品等の在庫を確保しておくよう動いている。
 ・6月の半導体産業の会議において、ファーウェイは中国の大規模言語モデルのほぼ半数がファーウェイのプロセッサーを使用しており、学習モデルにおけるパフォーマンスについて、910BはエヌビディアのA100を凌駕していると述べている。ただ、輸出規制で生産能力は大きく制約を受けており、設計も古いモデルの流用が目立っており、AI処理能力も劣っていることから、宣伝しているほど改善されているとは言えない。 

2.本記事読後の感想
  中国が出してくる情報は大概信用に値しないものだが、それでも事実の一端を示していることは確かである。重要なことは、中国関係の情報が出てきた場合には情報源を確認し、額面通りに受け取ってよいか否かを適切に判断することである。もし中国側から出てきた情報であれば低めに見ておけばまず間違いがなく、西側諸国側から出た場合には割増して見ておいた方がいいだろう。
  今回のファーウェイの半導体に関する情報については、プロパガンダ的な要素が高く、最先端のものを生産できるようになったわけではないと見ておくべきであり、せいぜい少しばかりの進展を声高に宣伝して国威を発揚しているだけだろう。ただ日本人はこういった情報を真に受けて、右往左往してしまう傾向にあり、これは政治家や官僚なども同様だろう。
  多面的に情報を評価するには、テレビ・新聞・週刊誌という劣悪な情報源から離れることが最も重要である。仕事のレベルで考えれば当然だが、これらの情報源をベースに仕事をする人はまずいないはずである。少なくとも業界紙や専門誌の情報を参考に読するだろうし、各分野に精通した人々に取材するなどは当然の所作だろう。政治や行政についてはなぜか素人的な見解ばかりが散見されるが、こういった次元の低い情報から脱却できなければいつまでたっても情報戦で負け続ける。有益な情報源を自ら見出し続ける努力が、今の日本人に最も求められているのである。

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