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イギリス経済犯罪対策としての技術導入(RUSIの記事)

写真出展:Lorenzo CafaroによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/3844328-3844328/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=1863880

 2021年9月28日に英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)が、イギリスの経済犯罪対策に伴う技術導入に関する記事を発表した。内容は、金融行動監視機構がデータに基づいて経済犯罪に対処する上での展望及び課題について概観するものである。本件については何度か記事にしてきたが、今回は技術の導入に関する提言となっており日本にも参考とできる点が多々あることから、本記事の概要についてご紹介させていただく。

↓リンク先(Risk-based and Data-led: Can the UK’s Financial Conduct Authority Meet its Ambition?)
https://rusi.org/explore-our-research/publications/commentary/risk-based-and-data-led-can-uks-financial-conduct-authority-meet-its-ambition

1.RUSIの記事について
 ・2019年から2022年の経済犯罪計画の一環として、2017年マネーロンダリング規制及び金融犯罪規制及び監視体制の改正のための検証を開始した。急速な技術革新に伴い、金融犯罪がより巧妙になってきており、これに対応した監視体制を構築しなければならない状況である。計画の行動目標34では、金融行動監視機構(FCA)がインテリジェンスとデータを活用して、企業に対する監視を強化することを求めており、捜査当局が作成する疑惑のある金融活動報告を閲覧可能とするよう提言している。
 ・金融行動監視機構CEOのニキル・ラティは、データに基づいた監視体制強化に乗り出しており、「取り扱うデータが2倍になった」と述べ、情報・インテリジェンス担当官を新設し、2万以上の組織の監視体制を強化している。更に仮想資産サービスプロバイダーも監視対象としており、2022年3月には毎年度の犯罪報告書の件数を2500件から4500件に増加させることとしている。
・2022年3月から、金融行動監視機構は政治に関連する人物、危険性の高い顧客、国内で疑惑のある事件の情報及び捜査令状も入手可能となる。ただこのことに伴いデータ量が急速に増大することから、質と統一性の担保が問題となる。データは個々の金融機関によって異なる形態になっており、情報の不一致などがあった場合の特定が課題となる。このため、技術の導入が重要となる。
 ・金融監視のイノベーティブな技術には、人工知能、機械学習などによる情報収集及び分析などを含む。民間部門が監視要件を充足するためにRegTech(技術と規制を組み合わせた造語。新しいITを活用した金融ITソリューション)を採用しており、このことを受けて金融行動監視機構は、SupTech(規制当局によって利用される、規制業務を支援するイノベーティブな技術)を採用して技術的に追随しようとしているが、時期は不透明である。このため大蔵省と連携し、世界の優良事例を取り込みつつ、技術の導入を促進していくことが重要である。
 ・技術の導入については、シンガポールの事例が参考になるだろう。技術の導入前に、他の監視機構や金融インテリジェンス部局と連携を図り、金融機関の協力を得て解決策を見出し、既存の手続きを大幅に改革した。
 ・技術の導入に伴う規制の在り方の変化を認識しておく必要がある。金融活動作業部会(FATF)は、データの共有、共同での分析、データ保護について課題があるとしており、具体的には個人情報、情報ガバナンス、説明責任などの問題があるとしている。その他意思決定の透明性を担保し、組織の信頼性を確保するため、技術がもたらす結果や顧客への影響などを明らかにしておく必要がある。
 ・経済犯罪への対処には、政府機関だけでなく、政治のリーダーシップが重要である。特に組織改革や資源配分が重要であり、イギリスの支出検証や経済犯罪に対する制裁金、2022年の経済犯罪計画改正などを通じて、金融行動監視機構が十分な役割を果たせるよう取り組むべきである。

2.本記事についての感想
 イギリスもようやと技術の導入に乗り出した。どちらかと言うと、ヒュミントが優れているが、技術についてはそれほどでもないという印象だったが、本格的に乗り出す動きを見せてきた。イギリス人も技術に対してどこか冷めたと言うか、アレルギーのような反応を示す人が多いが、意識が変化してきたのだろう。既存のインテリジェス機関との連携などについてどのような変化があるのかが楽しみである。
日本はヒュミントもシギントもどちらも駄目であるが、民間部門はかなりの実力を持っていると考えている。イギリスに及ぶべくもないが、まずは民間部門を取り込むところから始めるべきだろう。ただ、中国や韓国などとずぶずぶな所ではだめで、真の意味で世界的に展開している企業でなければならない。また金融機関に限らず、商社なども対象とするべきだろう。現在の日本のインテリジェンス能力は低いが、陸軍中野学校の伝統なども考えると、伝統的に低いと言うわけではなく、うまく組織化されていない、人材がうまく活用されていないだけである。ドコモ口座などの金融事件をきっかけとして、国民が目覚める下地も整っていることから、今後の日本政府の政策に期待したい。

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