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再生可能エネルギーのライフサイクル(3)(ヘリテージ財団の報告書)

本記事は、再生可能エネルギーのライフサイクル(2)(ヘリテージ財団の報告書)の続編である。前回までの記事は、以下のリンクを参照。

写真出展:PexelsによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/pexels-2286921/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=1846033

③ バッテリー
  バッテリーは、再生可能エネルギーを断続的な発電から安定した発電へと変貌させるのに重要な役割を果たす。電力網に併設される大規模な蓄電池施設は、様々な技術を活用しているが、90%以上はリチウムイオン化合物に基づいている。
  2010年において、アメリカは59メガワットアワー(MWh)の容量を持つ、7つの大容量バッテリーシステムを保有している。アメリカのエネルギー情報局(EIA)によると、2018年までに、アメリカは869MWh分の125のシステムを保有しているとしている。大規模施設の内、53施設が再生可能エネルギーと併設されており、2023年までに倍増するものと見られている。更に、民間及びエネルギー部門が多くを所有している小規模容量バッテリー設備は234MWh分あり、その3分の1は住宅に設置されている。
  典型的なバッテリーそのものは、コバルト、リチウム、ニッケルを含んでおり、これら鉱物は全てアメリカ以外の国から輸入している。リチウムの産出が多い国は、ボリビア、地理、中国である。更にバッテリーは、モーター用磁石を用いており、多くが中国で産出されているネオジウムなどのレアアース鉱物を含んでいる。
  EVバッテリーは、当初の充電容量から見て、70%から80%程度に低減した時期に寿命を迎えるとされている。これは、廃棄される際に当初の燃料能力の80%までとされている使用済み核燃料棒と同様の取り扱いになっている。アメリカで販売されている全ての電気自動車は、10万マイルの走行もしくは8年間の耐用年数を保証している。最近の研究によると、EVのバッテリーは平均で毎年2.3%ずつ容量が失われるとされている。ただ、バッテリーの寿命は個々の状況に依存するのであり、頻繁に充電されるないしは、定常的に低レベルまで電力が落ちる場合は早期に劣化し、熱にさらされる場合も同様である。
  寿命を迎えたEVバッテリーは転用、再生、リサイクルもしくは処分されることになるが、処分以外の方法はいずれも容易ではない。EVバッテリーのリサイクルは、複数の作業から成り立っている。最も一般的なリサイクル方法は、バッテリーを裁断し、高温冶金技術(焼却)で金属を分離するものであるが、この処理では最も多くのリチウムが無駄になる。第二の方法は、物質を分離するために、各種の酸で洗浄する湿式冶金再生法である。第三のEVバッテリー再生方法は物理的分離であり、機械的な処理により部品に分解する方法である。いずれの方法においても、酸からスラグに至るまでの副産物が発生するのであり、そしてほんの一部の物質しか再生することができず、この処理には大量のエネルギーが必要になる
  バッテリーの物質の約50%まではリサイクル可能であるが、世界的にはたった5%のバッテリーしかリサイクルされていない。バッテリーの電解液は可燃性、爆発性、猛毒性であり、かつ水と化合すると腐食性の高いフッ化水素酸を生成することから、リサイクル処理は非常に複雑なものとなる。
多くのEV生産者は、新しいバッテリーを購入した際に古いバッテリーを引き取っているが、これは義務ではない。同様に使用済みのバッテリーが回収された場合、それをリサイクルするか処分するかについて、連邦法による統一要件はない。
  2021年8月に上院で可決したインフラ及び雇用法は、バッテリー再生のモデル事業、自主的バッテリーラベル事業、バッテリーリサイクルに関する規制の枠組み策定について多額の予算を割いているが、本法案は完全な廃棄物処分問題に言及していない。
  処分できないバッテリーは埋め立て処分されることになるが、これは化学火災を引き起こし、地下水に化学物質が漏洩する恐れがある。連邦政府がEVの導入を加速させると同時に、EVバッテリーをいかにして処分するのかという問いに応えなければ、新たな環境問題を生み出すことになるだろう。

 

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