オーストラリアの対中経済政策(RUSIの記事)
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英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)が2021年8月17日に、オーストラリアの中国への経済制裁への対抗策に関する記事を発表した。内容としては、オーストラリアは経済的に損害を受けているものの、各種取り組みにより耐え忍んでいることを示すものとなっている。日本の言論空間では見られない視点での議論となっており、今後の展開を考えるうえでの参考になると考えられることから、本記事の概要についてご紹介させていただく。
↓リンク先(Australia’s Answer to China’s Coercive Challenge)
https://rusi.org/explore-our-research/publications/commentary/australias-answer-chinas-coercive-challenge
1.RUSIの記事について
・オーストラリアは南シナ海やウイグルの人権侵害、コロナウィルスの起源調査などについて対中姿勢を強めてきたが、このことに伴い、2020年5月から中国の経済的脅迫に苦しめられてきた。関税、技術的規制、その他さまざまな制限などにより、牛肉、大麦、綿、石炭などの輸出が激減した。その他、教育産業などのサービス方面でも制裁を受けることとなった。
・しかし、2020年の経済指標を見ると、オーストラリアは何とか耐え忍んでいるようである。2019年の対中輸出は1490億豪ドルだったが、2020年は1460億豪ドルであり、たった2%しか下落していない。最も、鉄鉱石の高騰で下落幅が見えにくくなっているものの、標的になった産業は、石炭、牛肉、ワイン、綿、銅鉱石などの年間10憶豪ドル相当以上のものが多かったのである。特に打撃を受けたのは、ワインとロブスターであり、代替の輸出先を見出すことができていない。短期的に問題がなかったとしても、長期的な影響が大きくなる可能性はあり、今後5年間のワイン産業の損害は、24億ドルになるという試算もある。それでも、2021年初頭における損害総額は、70億から100億豪ドル程度である。
・しかしオーストラリアは安易に妥協せず、各種経済政策によりこの苦境を乗り越える努力をしている。まず輸出先の開拓に乗り出しており、ワインの輸出は徐々に回復しつつある。その他、石炭、銅鉱石、精鉱も安定しており、石炭は直近3ケ月の輸出は、中国の輸出制限後と比較しておよそ43%上昇した。経済的な協定にも積極的であり、イギリスとのFTA締結、インドやEUとの自由貿易協定も交渉中である。国内においては、中国の制裁により被害を受けた産業やビジネスに財政的な支援も行っている。
・中国は経済を武器として用いているが、その損害は中国が主張するほど大きなものではない。オーストラリアのような事例が増加すれば、中国の経済制裁は有効な武器ではないことが広く知れ渡ることになり、結果として制裁を用いることができなくなるのである。
2.本記事についての感想
オーストラリアがうらやましくなる記事である。日本の政治家は何と弱腰なことかと思わざるを得ない。いや、日本人が情けないというべきだろうか。確かに経済の依存度や多様性が異なっており、損害もそれなりに大きいだろうが、輸入を制限して困るのは中国なのであり、日本ではない。レアアースの事件でもそうだったが、現在サプライチェーンを多様化してしまえば中国の脅威は大きく激減するのであり、短期的な利益だけで中国に忖度することそれ自体が将来の利益を損なうことになる。
ただ、政府が国民を守るような政策をなかなか採用してくれないことも確かである。せめて、今回の記事にあるオーストラリアのような政策ぐらいは採用してもらいたいものである。
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