中国人民解放軍のAI投資(National Defenseの記事)
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2022年1月6日にNational Defenseは、中国人民解放軍のAI投資に関する記事を発表した。内容は、中国人民解放軍のAI投資がアメリカ国防総省の投資額に匹敵する水準となっていることを受け、軍事政策の方向性を概観するものである。AIに関しては技術側に注目が集まりがちだが、予算額の観点から論じたものは珍しく、今後の展開を考えるうえで参考になることから、その概要について紹介させていただく。
↓リンク先(China Matching Pentagon Spending on AI)
https://www.nationaldefensemagazine.org/articles/2022/1/6/china-matching-pentagon-spending-on-ai
1.本記事の内容について
・中国人民解放軍は積極的にAIに投資しており、AIによる情報分析、予測、情報戦争、自動運転機器による標的の識別に注力している。また人民解放軍と提携している研究所は、AIによる標的識別及び兵器制御の研究を行っており、これは破壊的な自動兵器に活用される可能性がある。
・公開されている人民解放軍の契約データによると、16億ドル以上をAIに投資している。しかし新興技術に対する広範な投資も含まれる可能性があり、実際の投資額は多いと見込まれている。またAI研究は機密扱いとされている可能性が高く、このことも投資額を不明確にしている。このことを鑑みると、人民解放軍のAI投資は、アメリカに匹敵すると見込まれている。
・2020年度の国防総省によるAI投資は、8億ドルから13億ドルの間であり、更に無人・自動制御システムには17億ドルから35億ドルが投資されている。2022年度予算要求においては、600以上のAI関係事業に8億7400万ドルを計上している。
・AIがインド-太平洋地域の軍事バランスにどのように影響を当たるのかは不透明である。国防総省は「反自動制御」能力に注力し、アメリカ・同盟国は先端半導体の中国への販売を禁止しており、このことで当面は中国人民解放軍の人工知能システムの発展をある程度は防止することができると見られている。
2.本記事読後の感想
今回は、AI投資を巡る状況を概観するものである。AI研究の内容に関する個別具体の話は出てこないが、中国がかなりAIに注力していることがわかる。一部識者は、人民解放軍は利権集団であり、予算が目的通りに使用されていない、中国が先行しているのは自動顔認証技術だけであるといった侮った見方をしているが、油断するべきではない。
人民解放軍の契約や技術表彰などを確認すると、中国が注力しているのは海底戦力の底上げであり、海底センサー網、ジャミングなどの通信妨害システムなどが典型例である。SFのようなAI同士の戦争といった遠い未来の技術よりも、こういった手堅い確実な技術の方が短期的には大きな脅威となる。
いずれにせよ、現状を正しく認識することが重要であり、相手の出方に応じて柔軟に対応していかなければならない。日本の政治は、新聞・テレビ・週刊誌などの情報を基に仕事をしているように思われるが、優れた情報がメディアに出てくることは極めてまれであり、ミスリードされてしまう可能が高い。今の日本には、公開情報を丁寧に整理し、わかりやすく提示するようなシンクタンクの機能と国民がメディアを取捨選択する能力を育成することが必要である。
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