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再生可能エネルギーのライフサイクル(1)(ヘリテージ財団の報告書)

写真出展:PexelsによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/pexels-2286921/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=1846033

 ヘリテージ財団は2021年9月20日に、再生可能エネルギーの生産から廃棄物処分にまで至る問題に関する報告書を発表した。内容は、風力発電、太陽光発電及びバッテリーの廃棄物処分の環境への負荷について論じるものである。再生可能エネルギーがクリーンと呼ばれる理由は、温室効果ガスの排出がないということを根拠としているが、実際には生産から廃棄物に至るまで環境負荷が大きいことから、ライフサイクル全体で見た場合、かえって化石燃料よりもクリーンではない可能性がある。本報告書はこのことが明確に認識できる内容になっていることから、その概要を紹介させていただく。ただ長文になることから、4回に分けて紹介することとする。

↓リンク先(The Need to Examine the Life Cycles of All Energy Sources: A Closer Look at Renewable-Energy Disposal)
http://report.heritage.org/bg3653

1.本報告書の内容について
・議会及びバイデン政権、多くの州は、再生可能エネルギーを優先して化石燃料を制限ないしは削減するよう動いているが、再生可能エネルギー、特に風力、太陽光及びバッテリーのライフサイクルにおけるマイナス面、つまり生産過程及び廃棄物処分などについて認識していない。今回は、この3つのエネルギーのライフサイクルについて論じることとする。

① 太陽光エネルギー
 ・アメリカにおける太陽光エネルギーの活用は、1984年の5ギガワットアワー(GWh)から2020年には13万3000GWhにまで増加した。この増加傾向に伴い、国際再生可能エネルギー機構は、アメリカでは毎年600メートルトンの新たな廃棄物が排出され続けることになるだろうと予測している。2020年だけでも約2万6000トンの太陽電池パネルが耐用年数を迎え、この数値は毎年増加するものと予測されている。ただしこの予測は、アメリカにおけるバイデン政権の太陽光発電推進の加速を考慮に入れていないものである。
 このことに伴い、廃棄物の処分が大きな問題になると考えられている。太陽光パネル及び光起電(PV)モジュールは、ヒ素、カドミウム、銅、鉛、セレン、シリコン、銀などの複数の毒物を含んでいることから、1976年の資源保護及び復旧法に基づく、有害な廃棄物、輸送及び廃棄部物処分規制・要件の制定されることになった。更に、有害物質を含む製品のリサイクルに関する特別な規制も制定された。
  多くの州では、市街産廃用地への太陽電池パネルの埋め立て処分を許可している。カリフォルニアは、太陽電池パネル廃棄物を「一般廃棄物」として指定する規制の方向に動いており、その取り扱いや保存において緩和された規制要件しか課さず、あまり有効に機能していないリサイクルを奨励しようとしている。ワシントン州は、2017年7月1日以降に販売された全ての使用済みパネルについて、生産者が回収及びリサイクルシステムに資金を投じるよう求める、最も強硬な措置を講じている。州や自治体ごとに太陽電池パネル処分に関する要件が大きく異なっており、多くの州では太陽電池パネルの処分を全く規制していない。
 太陽電池パネルのリサイクルそれ自体は可能であるが、現在の所そのコストは法外である。1枚の太陽光パネルをリサイクルするコストは、約20ドルから30ドルであり、太陽電池パネルの埋め立て処分のコストは1ドルから2ドルである。しかもリサイクルされる物質の量は、毎年排出される廃棄物の一部でしかなく、根本的に廃棄物の量を減少させることはできない。
 EUの取り組の一つに、太陽電池パネルの生産者に、ライフサイクルの最終段階における処分の責任を持たせるというものがある。廃棄物、電気・電子設備(WEEE)管理局の下で、太陽電池パネルの生産者は、太陽電池パネルの耐用年数経過後の管理、収集、取り扱い、監視する法的責任を負う。ただアメリカは輸入太陽電池パネルが多くなっていることから、その取り扱いが複雑になってしまう。
 大半の輸入先が中国企業であるが、企業の生存率や存続率が低く、長期的な経費負担に耐えられない可能性が高い。もし輸入先の企業が倒産してしまえば、廃棄物の処理費用はアメリカ国民が負担することになるだろう。
現在のアメリカにおける廃棄処理システムは、今日の太陽光パネルの大量流入を取り扱う設備を有していない。単にパネルが埋め立て処分場に運搬されるだけであれば、鉛及びカドミウムが地下水に漏洩する可能性がある。同様に、パネルが際限なく保管されれば、劣化や不適切な保管方法に伴って有害物質が流出する可能性もある。
 もしアメリカが、廃棄物の問題を解決することなく太陽光技術をより活用するよう推進し続ければ、太陽電池パネルによる深刻な環境汚染に苦慮することになるだろう。

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