アメリカ地方政府への禁止された中国技術の浸透(Foreign Policy記事)
写真出展:Gerd AltmannによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/geralt-9301/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=3753411
2022年11月1日にForeign Policyは、前理科の地方政府による中国技術の導入に警鐘を鳴らす記事を発表した。内容は、地方政府部門が連邦政府から禁止された中国製品を調達し続けている現状を伝え、今後のあるべき対策を提言するものである。最近になってバイデン政権は機微技術の規制を強化しており、日本に対しても半導体技術の中国への提供について規制強化を要請するなど、経済安全保障を巡るニュースが多く出回るようになっているが、当のアメリカも同じような問題に苦しんでいるようだ。こういった現状を把握するうえで参考になると考えられることから、本記事の概要を紹介させていただく。
↓リンク先(U.S. State and Local Governments Still Buy Banned Chinese Tech)
https://foreignpolicy.com/2022/11/01/china-technology-huawei-zta-banned-us/
1.本記事の内容について
・ファーウェイをはじめとした中国の通信機器などの技術は、諜報活動に利用される可能性があるとして早期から警告されてきたが、州政府や地方政府は、これら危険性のある技術を導入し続けている。連邦政府以外の政府部門が統一的に海外の技術に対する安全保障に対応しなければ、有事における脆弱性を残すことになる可能性が高い。
・2019年以来、ファーウェイ、ZTE、その他中国3社の技術が安全保障上の脅威として指定され、連邦政府の調達から排除されることとなった。ただ学校、病院、公共交通機関、インフラ部門などはいまだに中国の技術を導入し続けている。この状況は、特定の製品をサプライチェーンから排除することの困難さを示すものである。
・世界の技術産業は広範囲に及んでおり、かつ、複雑であり、政府が製品の生産元を特定することは極めて困難である。また地方政府部門には、予算や技術に精通した職員が不足しており、ランサムウェア対策などを優先してその他の技術への対応が後回しにされるのはやむを得ない。
・ただこのまま中国の技術を導入し続けることは、非常に危険である。例えばファーウェイは、世界各国でデータの不正取得、インターネット検閲、諜報活動などで批判されている。最近ではFBIが、アメリカ軍の核兵器関係企業の通信を傍受していた事件を発表している。またハイクビジョンなどの製品にもバックドアが組み込まれていることが判明し、政府部門に入り込んだ場合、公共サービスの提供が損なわれ、機微情報が盗難され、業務に介入される恐れもある。
・公共調達の記録によると、約1700の地方政府部門(バーモント州除く)が、ブラックリストに登録されている中国の5企業の製品を調達していることが判明した。ただこのデータは不完全であり、実際の数はより多くなると見込まれている。
安全保障上の問題だけでなく、最大の敵対国である中国に技術を依存することになるという問題もある。
・地方政府部門は、軍やインテリジェンスコミュニティほど深刻な安全保障上の問題に直面しているわけではないが、公共サービスの担い手であり、光熱水などの重要インフラの管理者でもあることから、この問題は見逃されていいものではない。パイプラインや水道などのハッキングはその最たる例であり、直接的な攻撃対象とはならなくても踏み台にはされる可能性がある。
・このような中、フロリダ、ジョージア、ルイジアナ、テキサス、バーモント州などの地方議員は、信頼性のない海外技術の調達を防止する取り組みを行っている。しかしこの取り組みは十分ではなく、ほんのわずかな抜け穴があるだけで、こういった対策は水泡に帰す可能性がある。州政府以下の地方政府部門の動きは、全くと言っていいほど存在しない。
・効果的な対策を実施するためには、連邦政府と地方政府の連携が重要となる。このような取り組みを行うには、まず連邦通信委員会(FCC)の役割が重要になるだろう。現在同委員会は、安全保障上の脅威となる全ての製品の調達を禁止する規制の制定に尽力しており、このような規制を基本として、地方政府部門は更なる対策を講じることができるようになるだろう。また議会は対策強化のため商務省に予算と人的資源を提供し、政策担当者がブラックリストを明確化できるように働きかけ、地方政府に周知するべきである。政策担当者に十分な政策的ツールを与えることにより、初めて全米統一的な対応が可能になるのである。
今回の記事は、CSETが発表した中国技術の浸透に関する報告書の一部を紹介したものとなっている。トランプ政権の取組でアメリカは規制が強化されて問題がないように見えるが、実際には日本とそれほど現状は変わらないようだ。(表1及び2参照)
上の表に示されている通り、党派性に関わらず、中国の情報通信技術は全米的に浸透しており、アメリカ全体の問題であることが分かるだろう。むしろトランプ政権の取組は、これまでぼんやりしていた経済安全保障対策を巻き直すといったものであり、更なる規制強化とはやや異なるのである。商務省が80%以上機微技術の中国向け輸出を承認してしまっているという事情もあり、輸出入双方の規制強化は待ったなしである。アメリカの事例を参考に、各国も協調して規制に取り組むべきである。
アメリカの規制が徹底されていないからと言って、日本が優れているというわけではないのは、言を俟たない。日本は経済の自由度が割合高いことから中国企業も入りやすく、隣国と言うこともあり先進国の中では最も深刻な状況にあるのである。サイバーセキュリティは遅れており、情報は流出する一方であり、安価な中国製品の流入対策は全くと言っていいほど進んでいない。
罰則を伴う強い規制が必要であることは言うまでもないが、同時に経済的な損失を補填できるような経済対策も必要である。先進国で最も遅れているといってもいい日本が対策しなければ、日本が抜け穴となって民主主義陣営が大いに不利になる可能性がある。国民の側も経済安全保障に対する意識を向上させ、政権に強い対策を迫るようにならなければならない。
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