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中国の巨大衛星インターネット網計画(RUSIの記事)

写真出展:Sabine KroschelによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/pixaline-1569622/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=4842729

 2023年5月3日に英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)は、中国が推進している巨大衛星インターネット網構築計画に関する記事を発表した。内容は、今年1月に発表された報告書の計画の概要と目的の概観と、スターリンク展望を提示するものである。
 本件は今年1月ぐらいからニュースになり始めていたが、なかなか概要が把握できず記事にできていなかったが、今回RUSIにてわかりやすくまとまったものが出てきたため、ご紹介させていただく。

↓リンク先(Guo Wang: China’s Answer to Starlink?)
https://rusi.org/explore-our-research/publications/commentary/guo-wang-chinas-answer-starlink

1.RUSIの記事について
 ・最近中国共産党が、13000の衛星から構成される宇宙インターネット網計画「国網」に関する報告書を発表した。本事業は2021年に中国国営事業の巨大な基金の支援を受けて設立されたSatNetをより発展させたものと見なされている。ではなぜ本事業が今になって大きく前進することとなったのか。
 ・その要因の一つは、ウクライナ戦争におけるスターリンクの成功だろう。2022年12月のスペースXの発表によると、スターリンクの利用者数は世界で100万人に到達したとされている。スターリンクは軍民両用の側面が注目されており、軍の司令やドローン操作などに広く活用されているが、その本質的な機能は単純であり、インターネットを利用可能とするものである。
 ・最も、スターリンクが完璧なインターネット網を構築しているというわけではない。クリミア、ロシア、中国、アフリカの半分、ではまだサービスが展開されていない。またインドやパキスタンは、事業承認が停止状態となっている。そのような中、台湾の馬祖島において海底ケーブルの切断により通信遮断が発生したことから、台湾と世界を接続している14本の海底ケーブルに代わる通信網として、低軌道衛星を利用したインターネット網構築に関する計画を発表するまでになった。
 ・一見、中国には十分なインターネット網を構築しており、有事における通信の確保に問題はないように見えるが、なぜ衛星インターネット網構築に奔走するのか。それはスターリンクが市場を独占する前に、参入する必要があると指導者層が認識したことに加え、未開の地であるアフリカに手を伸ばそうとしているからだろう。中国政府は一帯一路の一環として、30か国と117の宇宙協力協定を締結しており、すでにアフリカで70%にも及ぶ4G携帯電話通信網と衛星をリンクさせようとしている。また情報工作のインフラとして整備することも、その目的に含まれる。衛星経由でのインターネットで妨害を回避することができれば、情報空間を思いのままに操作することが可能となる。
 ・現在、低軌道上には多くの衛星がすでに展開しており、13000もの衛星を打ち上げるスペースを確保するには早ければ早いほどよいという状況にある。スターリンクが現在の優位性を確保し続けられるか否かは不透明だが、ここ2、3年で先んじて市場を拡大することができれば、国網計画を阻止することができるだろう。

2.本記事についての感想
 中国はいつも後付けで追随するようなアイディアを発表することが多く、独自の製作や事業であってもどこかで見たことがあるようなものか、明らかにうまくいかないと思われるものばかりである。こういった側面を見て小ばかにする人が多いが、一方で粗製乱造の中で当たりを引くという部分もあり、今回の衛星インターネット網構築についても侮ってはならないのである。
 中国の宇宙事業は世界トップクラスであり、他の先進国が連携して立ち向かわなければ、到底対抗できるレベルにはないほどである。ロケットや衛星技術の打ち上げ技術については群を抜いており、兵器への転用も可能な技術を多く保有している。ただ安全面についての配慮が足りないなど、致命的な欠陥も抱えていることから、問題が発生して急に頓挫するということもありえる。
こういった敵失を期待してはならないものの、時間を稼ぎながら各国が連携して中国の計画を事前に阻むように取り組まなければならない。
 

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