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台湾のスターリンク計画

写真出展:David MarkによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/12019-12019/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=92351

 2023年1月20日に英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)は、台湾国家宇宙センターによる衛星インターネット網構築計画に関する記事を発表した。内容は、ウクライナ戦争におけるスターリンクの役割を概観し、衛星インターネット網が安全保障上の重要インフラであることを提示するものである。
台湾はウクライナの次に紛争地域となることが想定されており、安全保障対応が注目されている所である。今後の安全保障に対する注意喚起として、本記事の概要を紹介させていただく。

↓リンク先(Starlink 2.0? Taiwan’s Plan for a Sovereign Satellite Communications System)
https://rusi.org/explore-our-research/publications/commentary/starlink-20-taiwans-plan-sovereign-satellite-communications-system

1.RUSIの記事について
 ・台湾国家宇宙センターは、低軌道衛星を利用したインターネット網構築に関する計画を発表した。これはウクライナ戦争におけるスターリンクの有用性を鑑み、台湾有事に備えたるものと見られている。
 ・スターリンクはここ1年間繰り返しニュースで取り上げられているが、その仕組みは極めて単純である。スターリンクの終端装置を利用することで、上空を通過する低軌道衛星からのデータリンクを利用することができるようになるのである。スターリンクを担うことができる低軌道衛星は3,000以上存在しており、接続は極めて安定している。
 ・ウクライナにはすでに25,000もの終端装置が存在しており、軍民双方が大いに利用している。民間レベルでは戦況の報道や連絡に利用され、軍事においては柔軟な通信網の構築に利用され、無人ドローン運用で大いに成果を上げている。民間インフラの破壊や、ロシアによる通信妨害などの状況下において、スターリンクは大きな役割を果たしているのである。
 ・では、台湾有事においては、どのように利用されることになるだろうか。台湾は通信を主に海底ケーブルに頼っており、中国から容易に標的にされてしまうだろう。スターリンクが示した強靭性や安定性は、中国による通信妨害作戦などに対しても有効となるだろう。また中国が得意とする情報工作への対抗にも、情報発信を可能とする独自のネットワークは有効であろう。
 ・衛星によるネットワークは、その性質上、低遅延かつ強固である。複数の衛星に通信機能を分散することが可能であり、ソフトでウィルスやハッキング対策が可能である。終端装置は、ライター程度の小電力で稼働させることが可能であり、あらゆる場所で通信が可能になる。たとえ物理的に衛星を破壊したとしても、短期間のうちに低軌道衛星を打ち上げることは可能であり、効果は長続きしない。軌道上の衛星全てにデブリなどで攻撃を仕掛ければ、攻撃側も衛星を利用できなくなることから、物理攻撃が成功する可能性は低いのである。
 ・こういった安全保障環境下において、スターリンクのような衛星インターネット網の構築は、国家事業として非常に重要となる。ウクライナはスターリンクの恩恵を受けているものの、ベンチャー事業の継続に不透明感のあるイーロン・マスクの気まぐれに翻弄される恐れもあるわけであり、国家が主権を握らなければ、安全保障上の脅威に対処できなくなる可能性もある。
 
2.本記事についての感想
 スターリンクの有用性は今回のウクライナ戦争で証明されることとなり、安全保障上の重要インフラに位置づけられるようになったと言っても過言ではないだろう。次の紛争地として最有力である台湾は、このことを強く認識しているということなのだろう。
民間企業任せだと、いつ何時サービスを停止されるか分からないという危険性があることから、ある程度公的なプロジェクトとして衛星インターネット通信網確保は重要である。ただ一国だけでこういった事業を担うのは、先進国であってもかなり困難であり、多国間の枠組みでの取り組みが有効になるだろう。民主主義陣営の強みは、価値観を共有する国家同士で連携できる所にある。
 こういった動きに対し、日本政府は秘密裏に何らかの支援をするべきなのだが、国内政局すらうまくまとめられない岸田政権には、こういった強かな対応は到底期待できないだろう。まずは民間レベルでもいいので、何かできないだろうか。

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