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TikTokを操るのは誰か(South China Morning Post記事)

 写真出展:Gerd AltmannによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/geralt-9301/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=1087845

 2022年10月10日にSouth China Morning Postは、TikTokの現状に関する記事を発表した。内容は、TikTokが中国政府の強い影響下にあると同時に、各国政府の影響もうけており、その複雑性について概観するものである。TikTokはオラクルなどとの連携である程度危険が緩和されたイメージがあったが、現在TikTokが置かれている状況を紹介した記事があまりないことから、参考として本記事の概要を紹介させていただく。

↓リンク先(Who controls TikTok? ByteDance unable to allay fears in the West over Chinese state influence and data access)
https://www.scmp.com/tech/big-tech/article/3195161/who-controls-tiktok-bytedance-unable-allay-fears-west-over-chinese

1.本記事の内容について
 ・TikTokは中国国外で大成功した初のSNS企業(図1)であるが、中国政府から強い影響を受けており、個人情報やその他機密情報の管理について、西側諸国を中心に懸念が示されている。


2年前にトランプ政権は、TikTokをアメリカの投資家へ売却するよう働きかけたが、様々な要因が重なり成功しなかった。バイデン政権は、異なるアプローチで安全保障上の脅威に対処しようとしている。
 ・他国においても、TikTokに対して厳しい政策が取られるようになっている。インドはTikTokの国内での利用を禁止し、イギリスのトラス首相はTikTokのような中国企業を規制するべきと述べ、イタリアのデータセンター当局は、ユーザーの許可なく宣伝に個人情報を利用したとして、EUの規則に違反したと語った。
 ・TikTokに対する不信感は、中国の国家安全保障法やデータセキュリティ法などにより、政府の指示により情報を提供しなければならないという法体制になっていることが要因となっている。バイトダンスは中国政府に個人情報を渡したことはなく、アメリカ人ユーザーのデータは中国以外の国のサーバーに保存されており、中国の法律は適用されていないとしているが、一部報道では中国側からデータへアクセスしているとの話も出てきている。
 ・またバイトダンスのTikTokへの影響力についても、不明確な所がある。バイトダンスの5名の取締役については、以下のとおりである。(図2)


 バイトダンス会長のリャン・ルーボは、前会長のチャン・イーミンから会長職を受け継いだに過ぎないと見られており、実質的な支配者はチャンだと見られている。その他の4名は主要な投資会社からのメンバーであり、公式にバイトダンスやTikTokについて語ったことはない。
 ・先月のアメリカ上院公聴会において、TikTokのパパスは、自社の経営について中国政府の影響を受けていないと答弁した。またTikTokは、アメリカ人のデータをオラクルが所有するサーバーに保存し、バイトダンスからのデータアクセスには、厳格な手続きを設けると公約し、バックアップもシンガポールもしくはアメリカのサーバーに保存することとなった。しかしオラクルとウォルマートによるアメリカ事業買収が中国の重要技術輸出規制違反でとん挫し、中国国内においても特定のアプリを禁止されるなどした事例もあることから、中国政府の圧力に耐えうるか否かは不透明である。
 ・中国政府が、公式にデータを提出するようバイトダンスに求めたことはない。しかしドウイン(中国版TikTok)は、アルゴリズムコードを政府に渡した初の企業となったこともあり、政府が企業に圧力をかけることができるのである。また100万人以上の中国人の個人情報を保有する企業は、本土以外で事業を展開する際に政府の許可が必要である。またTikTokは、各国政府の動向にも神経をとがらせなければならない。連邦通信委員会のカーはTikTokが洗練された監視ツールであるとして、アップルやグーグルにTikTokをストアから排除するよう求めている。
 ・バイトダンスは、世界規模で成功した初となる中国IT企業(図3)であり、前例のない試練を受けている。


もしアメリカのユーザーデータの取り扱いが成功すれば、これが良い前例となり更に世界的に拡大していくことができるだろう。しかし各国の差異にも敏感でなければならず、グローバルかつローカルでなければならない。中国政府の対応は今のところ規制的な範囲にとどまっており、間接的であるが、今後はどうなるか不透明である。

2.本記事読後の感想
  今回の記事は結論が見えにくかったと思う。要するに、中国政府の影響はありつつも、各国の市場や政府にも影響を受けており、総合的に見て不透明であるということである。
TikTokについては大いに懸念が示されているが、その実像については不透明であり、中国政府の強い影響下にあることは確かであるが、技術企業に対する規制に反発する動きも見られていること、顧客が多様化していることなどから、その影響力の度合いは複雑多岐にわたると見るべきだろう。
  それでも、最後には中国政府に負けると見るべきであり、信用してはならない。ただ完全に関係を断てばいいかと言うとそうではない。日本人はよく危険なアプリは使うべきではないという反応をするが、それは個人単位のことであり政府機関はある程度ハニートラップとして使用した方がいいのではないかと考えている。
  TikTokなどを通じて中国に不都合な情報が流され続ければ、そのルートの情報は利用しなくなり、むしろ使用を停止させる方向に向かうのではないか。相手の武器を利用して逆に攻撃するといった、もう少し攻めの発想があればいいのだが、こういう議論がなされない事実は、日本人の受け身体質をよく示しているように思う。今後、攻撃的サイバーも含めて、情報安全保障も考えていただきたいものである。

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