ChatGPT以降のAI戦略(THE HILL記事)
写真出展:Pete LinforthによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/thedigitalartist-202249/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=7771700
2023年5月24日にTHE HILLは、中国の東南アジア技術支援の現状に関する記事を発表した。内容は、CSETのAI関係者の意識調査報告書の結果をふまえ、今後のあるべきAI戦略を提言するものである。ChatGPTの登場でAIを巡る議論が活性化している感があるが、その裏で本来あるべき戦略が見えにくくなっている。このような混迷した現状から距離を置いてAI戦略を考える参考として、本記事の概要を紹介させていただく。
↓リンク先(To promote AI effectively, policymakers must look beyond ChatGPT)
https://thehill.com/opinion/technology/4017237-to-promote-ai-effectively-policymakers-must-look-beyond-chatgpt/
1.本記事の内容について
・ChatGPTは、公開後わずか2か月にして1億人が利用するようになったが、このようなAIツールの影響がアメリカ議会にまで及ぶほどとなった。事実、バイデン政権と上院は新しいAI技術による潜在的な危険性について懸念を示している。また大学ではChatGPTの利用についてガイドラインが示されるようになり、中国企業は同様のAIツールの開発に取り組むなど、政治以外にも影響の広がりを見せている。
・現在の政策は、コンピューターの性能向上の方に向かっている。事実、一部のモデルは高性能コンピューターが必要であり、AI業界の潮流のように見えるが、このハードへの依存が、産業と学会間の格差を生み出し、学界が引き離されてしまう可能性を指摘する識者もいる。中国へのAI用半導体輸出規制や計算資源の拡充を訴える報告書の発表などもあり、この流れは止まりそうにない。
・しかし、CSETのAI関係者の意識調査報告書によると、この方向性は必ずしも効果的とは言えない。400名ほどのAI研究者の回答によると、研究計画変更の原因は十分なデータや人材の不足によるものが多く、コンピューター資源の不足を上回っていた。もし資金が潤沢にある場合、研究者の採用を優先するという回答が多かった。学界は、計算資源によって研究成果が大きく損なわれることは認識していないようである。
・ChatGPTのような大規模言語モデルは計算資源が重要であり、確かに目覚ましい成果を上げているが、AIの研究対象は多様である。例えばAIのセキュリティ研究は、必ずしも巨大な計算力を必要としないが、大規模言語モデルに劣らず重要な分野である。もし政府や議会が計算資源ばかりに注力すれば、他のAI研究開発が停滞する可能性もある。
・AI業界の最も大きな問題は、人材不足である。中期的には教育改革や職業訓練で解決されるだろうが、短期的には高度技能人材の移民などにより対処することになるだろう。しかしこういった政策には賛否両論が伴いやすく、成果が上がるまで時間を要することから、政治家は躊躇する傾向にある。AI関係者はChatGPTのような話題に振り回されず、AIの推進にとって本質的に重要な政策提言をしていく必要がある。
2.本記事読後の感想
今回の記事は、CSETの報告書の一部を解説したものである。本記事の内容をより深く理解していただくため、報告書に掲載されているデータを見たいただくこととしよう。
まず、AI事業にとって重要とされる要素に関するアンケート結果を見てみよう。(図1・2・表1)
専門的な能力が90%近くを占めており、高性能のコンピューターよりも多くなっていることがわかる。また予算についても人材への活用が群を抜いており、今後10年間においても研究員の増員が重要な要素となると見られている。次に、AI事業者が研究計画を変更した要因について見てみよう。(図3)
高性能コンピューターの利用が計画の中止や変更に大きく寄与しているとは言えず、人材やデータの不足の方がはるかに大きいことがわかる。最後にAI関係者が政府に求めている支援について見てみよう。(図4)
政府ができることは、やはり資金援助と言う事だろう。一方で過剰な干渉は望んでいないようであり、研究開発の自由を尊重しつつ、適切に予算を投じることが必要である。
以上の結果を鑑みると、日本においても人材育成が重要だということがわかるだろう。日本人は技術の問題をすぐにハードの問題に置き換えたがるが、実際には教育が最も大きな問題である。学校教育に頼るだけでなく、職場の人材育成の仕組みや職業訓練など社会全体での底上げが必要だろう。誰も置いてきぼりにしないといった言葉は美しいが、科学技術のリテラシーがない人間をあまりに甘やかしすぎであり、このままでは日本人自体が世界から取り残されてしまうだろう。日本に必要なのは現実的な政策なのであり、感情論ではないのである。
英文を読んでわからないという方は、メールにて解説情報をご提供させていただきます。なにぶん素人の理解ですので、一部ご期待に沿えないかもしれませんので、その場合はご容赦願います。当方から提供した情報については、以下の条件を守ったうえで、ご利用いただきますようよろしくお願いいたします。
(1) 営利目的で利用しないこと。
(2) 個人の学習などの目的の範囲で利用し、集団での学習などで配布しないこと。
(3) 一部であっても不特定多数の者が閲覧可能な場所で掲載・公開する場合には、出典を明示すること。(リンク先及び提供者のサイト名)
(4) 著作元から著作権侵害という指摘があった場合、削除すること。
(5) 当方から提供した情報を用いて行う一切の行為(情報を編集・加工等した情報を利用することを含む。)について何ら責任を負わない。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?