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菅政権の評価(IISSの記事)

写真出展:David MarkによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/12019-12019/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=395047

 英国国際戦略研究所(IISS)は2021年9月3日に、菅総理の退任に伴う政権を評価に関する記事を発表した。海外の評価の一端を紹介する意味で取り上げさせていただく。

↓リンク先(Suga’s premiership: a short-lived but packed administration)
https://www.iiss.org/blogs/analysis/2021/09/suga-yoshihide-short-lived-premiership

1.本記事の内容について
  ・菅政権はCOVID-19パンデミックにより政治的な資源を大きく奪われることになったが、重要な外交政策、国内政策などのレガシーを残すことになった。安倍政権から引き継がれたものもあるが、菅政権独自と言っていいものもあった。
  ・まず外交政策では、最初にベトナムとインドネシアを歴訪し、アセアン重視の姿勢を見せたことが特徴的である。アジア地域の連携強化は、安倍政権のクアッドの路線を継承するものであり、バイデン政権によっても支持されている。3月のクアッドサミットはその成果であり、サプライチェーンの確保、ワクチン配分、気候変動への取組宣言などの活動の拡大が見られた。
  ・その他、台湾有事についての対応も成果と言える。中国の台湾征服に関する宣言を受けた、4月の米日首脳会談での台湾海峡の平和安全維持についての声明は、1969年以来「台湾」に触れた初となっており、軍事費の増額も台湾有事への更なる取り組みを反映したものとなっている。
  ・国内政治においては、デジタル庁の創設が最も象徴的なものである。日本はデジタル化で後塵を拝しており、経済安全保障の観点から危機にさらされている。まずはハードのデジタル化を推進しつつ、制度的なデジタル化の推進も期待されており、これも大きな功績となるだろう。
 ・中小企業の生産性向上への注力も功績である。中小企業は雇用の70%、企業数の90%を占めているが、付加価値は大企業と比較して著しく低く、労働人口減少や財政的な限度などから、生産性向上は今後も課題になる。

2.本記事についての感想
  今回は参考まで、海外の評価についての例として本記事を取り扱うこととした。日本の感情的・扇動的な報道とは全く異なり、政策を評価している。報道は日本人のレベルの低さを証明するものであり、冷静な言論の大切さがわかるというものだ。
個別具体の評価については、外交安全保障についての評価は非常に妥当であるが、中小企業改革の部分はやや疑問符が付くといった所だ。コロナ対策についてはほとんど注目しておらず、相対的な感染者数や死亡者数の少なさから、おおむね成功していると見ているようだ。
全体を通じて、安倍政権からの引き続いての外交安全保障政策は高く評価されており、今後も続いていくことが望まれる一方、短命政権が継続することの懸念も見られる。属人的な要素についてはあまり懸念していないようであり、冷静な評価だと言えるだろう。
CSISも似たような記事を発表していたが、おおむね外交安全保障分野で高評価しつつ、今後も同様の方針を受け継ぐ人物が総裁になるか否かを問題だと指摘している。ただ、自民党の外交安全保障は大きく変化することはなく、属人的な要素で大きく変化することはないと見ているようだ。
  私個人としては、自民党をほとんど評価していない。中国との外交やアフガニスタンの撤退を見ても、判断ミスや不十分な所が多く、国内の経済政策はほとんど評価できない。飲食店ばかりが注目されているが、関連産業には十分な支援もなく、エンターテインメント業界に至ってはほぼ壊滅的である。何とか現状維持をしているというところであり、前向きな政策は見られない。コロナ後の社会についても展望がなく、今後の展開を見据えた準備ができていないようにも見える。
  日本人は直近の状況に左右され過ぎる傾向があり、単純な目の前の問題だけで政権や政党を評価するべきではない。最も重要なことは、今後の社会をどのように描くかということであり、今の問題が解決されればバラ色の展開になるということはあり得ない。今回の総選挙では、将来を見据えた政治家個人を選択して欲しいと思う。

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