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非代替制トークンは新たなマネーロンダリングの手段となるのか?(RUSIの記事)

写真出展:A M Hasan NasimによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/amhnasim-21735707/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=6288805

 2021年12月2日に英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)は、暗号通貨などで活用されている非代替制トークン(証明書のようなもの)のマネーロンダリングの手段としての危険性について論じる記事を発表した。内容は、非代替制トークンの性質、犯罪に利用される可能性、その対策について概観するものである。日本ではあまり話題にならないが、非代替制トークンはブロックチェーンを活用したデジタル社会上の証明書の役割を果たすことが期待されており、デジタル化の要諦であり、その潜在性について把握しておくことが、今後のデジタル社会や経済の構築に必要である。その参考として、本記事の概要についてご紹介させていただく。

↓リンク先(NFTs: A New Frontier for Money Laundering?)
https://rusi.org/explore-our-research/publications/commentary/nfts-new-frontier-money-laundering

1.RUSIの記事について
 ・2021年は、非代替制トークン(NFT)の人気が増大した。NFTは所有権などの唯一性を証明するデジタル証明であり、デジタルの美術品、音楽やゲームソフトなどに利用されている。2021年3月には、NFTの美術品が690億ドルで落札されるなど、デジタル経済におけるその潜在性が期待されている。
 ・NFTは、デジタル形式のコンテンツであれば、改ざんされることなくその所有権を証明することができ、過去の取引履歴をも参照することが可能である。また、著作権を証明することも可能であり、転売後も著作権料を稼ぐことが可能である。この性質により、NFTはデジタルアーティストに人気があるが、同時にマネーロンダリングなどの犯罪を誘引することにもなっている。
 ・NFTは暗号通貨で取引されることが多いが、ハッカーなどは様々な技術を用いて、ブロックチェーンの記録をかいくぐろうとする。2021年3月、ハッカーは偽造したバンクシーのデジタル絵画を限定版であるとして違法に販売した。その際、バンクシーのオフィシャルサイトをハッキングし、NFTへのリンクをかけることで、さも真正であるかのように見せかけたのである。またNFTそれ自体の盗難の可能性もあり、ハッキングで自分のアカウントにNFTの所有権を移し、それを販売するということもあり得る。その他、NFTを作成する際に見えないような情報を埋め込み、犯罪集団間での情報共有にも活用される危険性すらある。
 ・暗号通貨は、マネーロンダリングのリスクを軽減するために、交換の際に規制を受けることになり、NFTのオンラインオークションサイトも同様である。大きなサイトは暗号通貨交換所と関連があることが多いが、NFTのためには特別な基盤が必要であり、本人確認手続き(KYC)や常時監視などのシステムを導入しなくてはならない。また、2段階認証やハッカー対策などのセキュリティ措置を取らなければならず、更に既存の市場の規制についても学んでおく必要がある。
 ・一つの解決策は、盗難されたもしくは不正に購入されたNFTの登録制度を充実しておくことである。これは、オークションハウスで不正に美術品が販売されないようにするための、登録制度と同様のものである。大規模なNFTはすでにクリエーターの真正性を証明するトークンを開発する部門を設置している。
 ・KYCの優良事例を共有することで、市場の成長を阻害することなく強固なサイバーセキュリティ措置を取ることができる。また顧客も偽造NFTを恐れることなく、また盗難されるリスクなく買い物を楽しむことができるだろう。

2.本記事についての感想
 デジタル経済では本人認証が最重要事項であり、ブロックチェーンを活用した非代替制トークンが証明書の役割を果たすことが期待されている。ブロックチェーンは記録を正確にとどめておくという点で非常に強力な技術であるが、無敵というわけではない。事実、暗号通貨のNEMが仮想通貨取引所から盗難されるという事件も発生しており、記録を書き換えることが可能である。量子コンピューターが登場すれば、現在のブロックチェーンの優位性は大きく崩れるのであり、更なるセキュリティ対策が不可欠である。 
 デジタル庁にこういったグランドデザインを描いてもらいたいものだが、現在の組織体制は行政の効率化が主であり、未来を創出するというレベルには達していない。今後数十年に渡って色あせないデジタル社会の仕組みを創出することができる人材が、果たして日本から出てくるのだろうか。こんなことばかり考えていると暗くなってしまうが、日本人の可能性を信じて気長に待つことにしよう。 

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