アメリカの天然ガス輸出ターミナル建設差し止め訴訟(CFACTの記事)
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2024年7月19日にCFACTは、アメリカの天然ガス輸出ターミナル建設差し止め裁判に関する記事を発表した。内容は、バイデン政権によるアメリカの天然ガス輸出ターミナル認可手続きが政治的イデオロギーにより妨害されていることから、これに対抗するべく共和党系の州が集団訴訟を提起したことについて、概観するものである。
最近のアメリカの裁判所は以前とは異なり、バイデン政権に否定的な判決を下すようになっており、地方裁判所レベルでもその傾向が顕著になってきている。今後のエネルギー部門の動きを見通す参考として、本記事の概要を紹介させていただく。
↓リンク先(Federal judge blocks Biden’s ban on new U.S. LNG export terminals)
https://www.cfact.org/2024/07/19/federal-judge-blocks-bidens-ban-on-new-u-s-lng-export-terminals/
1.本記事の内容について
・2024年7月2日、西ルイジアナ地裁のケイン判事はバイデン政権の液化天然ガス輸出ターミナル建造承認差し止め措置について、「非論理的かつイデオロギーによる権力の濫用」として、無効であるという判決を下した。本事案は、共和党系の16州の司法長官が集団で提訴したものであり、ホワイトハウスが違法に手続きを歪めたと主張するものだった。
・提訴の主な論点は、エネルギー省が液化天然ガス輸出ターミナルの気候変動や経済的、安全保障的影響に多大な時間をかけることは、天然ガス法の適切な手続き期間を求める立法趣旨に反するというものである。今回の裁判ではこの主張が認められ、行政手続法に定める周知やパブリックコメント期間を確保できていないと認定した。この判決を受け、エネルギー省がどれほど迅速に承認手続きを進めるかは不透明であるが、一定の結論が出た形となっている。
・ここ4年間で、アメリカの液化天然ガス輸出量は2倍になっている。現在稼働しているターミナルは、テキサス州で2基、ルイジアナ州で2基、ジョージア州、メリーランド州、アラスカ州にそれぞれ1基ずつである。テキサス州とルイジアナ州ではそれぞれ1基ずつが建設中であるが、承認された13か所については建設が開始されておらず、その他6基がエネルギー省の承認待ちとなっている。環境団体は液化天然ガスを気候変動対策の観点から敵視しており、結果としてロシアの天然ガス輸出を助けるという利敵行為を行っているのである。
・イギリスやドイツはロシアから天然ガスを輸入できなくなっており、アメリカからの輸入は魅力的である。特に両国は風力発電と太陽光発電事業に予算を費やした結果として電気料金も高騰しており、天然ガス発電はこの問題を解決する有効な手段である。バイデン政権の天然ガス抑制政策は地政学的にも問題であり、ヨーロッパ諸国を苦しめつつ、風力発電や太陽光発電に必要な資源や製品を中国から輸入することで、敵国を助けている。
・今回の判決は、最高裁が連邦法解釈の根拠としているシェブロン基準に関して歴史的な見解を示したのと軌を一にしている。本基準は連邦機関が法律により授権された範囲を逸脱しているか否かについての判断を求めているが、オバマ政権は判断の曖昧さを利用して各種左翼的な政策をごり押ししてきた。官僚主義を克服し、法の支配を復活させる良い判決となっていると言えるだろう。
2.本記事読後の感想
ここの所、アメリカの裁判所は化石燃料にとって有利な判決を下す傾向を見せている。ただこれはトランプ大統領誕生を予期した政治的な配慮というわけではなく、左翼側の狼藉が目に余るということなのだろう。
官僚は選挙で選ばれた人々ではないことから、政治家よりも大きな権限を持ってはならないのは言うまでもないが、官僚機構が現場の実務に精通した結果として国家が行政に依存し始めると、官僚が過剰な力を持つようになる。こういった力を抑制するには、政治家の覚悟と裁判所の毅然たる対応が不可欠である。
日本人はやたらと行政に様々な物事を押し付けたがるが、実際には天下りなどの利権構造を創出することにつながり、結果として民間のサービスよりも高くつく結果になるということを認識できていない。政治家が信頼できないからといって、試験で選ばれた人々の方が善良であるとみなすのも極端である。日本人の多くが選挙で投票すれば誤った人を選択する可能性は相当に低下する。過度な行政国家化は、これからの不確実な社会を生き抜くためには有害でしかないということを認識し、国民がより政治や行政に参加していくという意思を持つことがこれからの日本に求められるのである。
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