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ウクライナによるオリガルヒ資産接収の取組(RUSIの記事)

写真出展:John HainによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/johnhain-352999/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=2898999

 2023年9月22日に英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)は、ウクライナによるロシアのオリガルヒの資産接収の取組に関する記事を発表した。内容は、ウクライナが導入した資産接収の法制度による成果を概観するものである。
 FATFで低い評価を受けている日本ではなかなか実現しそうにないが、今後テロ資金凍結などの取組の重要性は増していくと考えられており、このような法制度は参考になる点が多いように思われる。金融政策や安全保障を考える参考として、本記事の概要を紹介させていただく。

↓リンク先(Confiscating Russian Oligarchs’ Assets in Ukraine: The First Successes)
https://rusi.org/explore-our-research/publications/commentary/confiscating-russian-oligarchs-assets-ukraine-first-successes

1.RUSIの記事について
 ・歴史的な経緯があり、ロシアのオリガルヒはウクライナに多数の資産を保有している。ウクライナ在住のオリガルヒ関係者は軍事作戦に際してロシアを支援しており、ウクライナ政府は国内のオリガルヒの資産凍結に尽力してきた。シンクタンクのステートウォッチのリストには53のオリガルヒが掲載されており、中にはフォーブスで2021年の最富裕層200人に選出された者やウクライナから制裁を受けているロシア国民も含まれている。また112の在ウクライナ企業もリストに入っており、1.67億ドルの資産が存在するとされている。
 ・ウクライナは高等反汚職裁判所の執行手続きにより、オリガルヒの資産を接収する取り組みを行っている。2022年5月12日に、ロシアを支援する個人や企業の資産に対して制裁を科す法律を可決し、国家安全保障防衛委員会により資産凍結が可能となった。より具体的には、司法省が高等反汚職裁判所に訴えることで資産がロシアを支援する者ないしは組織に属することを証明したうえで凍結し、その後裁判所の決定により接収する流れとなる。
 ・この試みは一定の成果を収めている。司法省は28件の訴訟を提起し、そのほとんどが勝訴もしくは一部勝訴となっている。接収された資産は国家資産基金に移管され、国家再建予算として活用されている。ロシア有数の資産家であるウラジーミル=イェフトゥシェンコフは、最初にウクライナの資産を失った一人であり、17の不動産や会社の権利を没収された。もう1つの例は、アルミニウムの大物オレグ・デリパスカであり、1億ドルの資産を没収されている。その他、アルカディ・ローテンベルク一家の接収された資産は、3億ドルに上ると見られている。
 ・2023年1月以降の実績では、チタンを軍事産業に支援していたシェルコフやサッカーチームなどのオーナーとして知られるガイナーの資産なども接収し、ロシアの軍事支援に打撃を与えている。この法律によりロシアとの関連がある民間企業の資産だけでなく、国営企業の資産についても接収が可能となり、一定の成果を上げているものの、復興のための予算には到底届かない。ただこのような取り組みは、戦争により利得を得ようとする勢力への牽制となるだろう。

2.本記事についての感想
 日本はFATFの評価でかなり低い水準となっており、マネーロンダリング対策は急務なのであるが、こういった世界の動きについていけていないように思われる。かつてドコモ口座が問題になったが、ああいった便利ではあるがセキュリティに大きな懸念のあるサービスを平気で利用してしまうという点において、日本人の意識が格段に低いことがわかるだろう。今回のような記事をきっかけに、少しでも日本人の危機意識を高めることができたらいいのだが、周囲はのんきな人が多く、あまり期待できない。
 また日本では加害者の方が保護される傾向にあるが、こういった財産を没収するといった制度は、刑法においても採用を検討してはどうかと思っている。無論、富裕層が犯罪を逃れるような建付けになってはならないのは言うまでもないが。
 ただ、こういった政策は今の政府や危機意識のない日本人には到底無理だろう。頭の悪い左翼に言論空間が占有され、わけのわからない犯罪者擁護の論理がまかり通る世の中では、正論が通らない。言論空間を正すことが、日本にとって最も必要である。
 
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