かーやんの「歌謡曲って何だ?」第18回「歌謡曲の継承者・桑田佳祐」
先日NHKで桑田佳祐のソロライブの模様が放映された(そしてBSでは その拡大版がオンエアー)。
古今の日本の歌謡曲をミニマムなJAZZアレンジで聴かせるという趣向のライブパフォーマンスなのだが、見る人によっては「へぇ、桑田佳祐って歌が上手くて器用だから何でも歌えちゃうのね」という興味で終わってしまう可能性があるが、僕が着目したのは そこではない。
ポイントは「何故に桑田佳祐は あえて歌謡曲を歌うのか」という点だ。
あえて名前は出さないが、数年前に いわゆる「歌ウマ」な男性ボーカリストが女声曲をカヴァーするという企画ものがブームになったが、桑田佳祐のこの試みは その系譜上にあるものではない。
彼のミュージシャンとしての才能は ここで言うまでもないが、注目すべきは そうしたテクニカルな面ではなく、これらの昭和歌謡が確実に彼の血肉になっているという点だ。
つまり これは特別な事ではなく、1956年生まれの桑田佳祐が普通に聴き、吸収してきたものを体現しているに過ぎない。
時を戻そう(笑)。彼がサザンオールスターズとして お茶の間にインパクトを残し、鮮烈な印象を与えた『ザ・ベストテン』初出演時に放ったのは「目立ちたがりの芸人でーす」という言葉だった。
ランニング姿に短パンというスタイルで、しかも歌ったのが『勝手にシンドバッド』という沢田研二とピンク・レディーをフュージョンさせた まさに人を食ったようなタイトルのサンバ調の曲をお祭り騒ぎで歌い上げたものだから、デビュー当初は 正直色モノというかコミックバンドの枠として捉えられていた。
だがそれも『いとしのエリー』の大ヒットによって払拭される訳なのだが、サザンの1stアルバム『熱い胸さわぎ』をあらためて聴き直すと決して彼らはコミックバンドではなかった事が証明されている。
このアルバムの魅力を語り出すと膨大な文字数になってしまうので 今回は割愛するが、要約すると初期の桑田佳祐のボーカルには 粗野な魅力というか、どことなくジョー・コッカー味を感じられる。つまり そこに彼らのルーツがあるのかと思っていたのだが、それはすぐに覆される。そのきっかけになったのが
この1982年に嘉門雄三名義で発表されたライブアルバムだ。そこではビリー・ジョエルやボブ・デュラン、ジョン・レノン等のカヴァー曲が披露され、桑田佳祐というボーカリストの多様性をまざまざと見せつけられた。
そう思うと『ザ・ベストテン』で華々しいデビューを飾った彼らは歌謡曲の延長線上にいたバンドであって、時代の変遷を経ても そのスタンスは変わっておらず、いまだに日本の音楽シーンにおけるトップランナーであり続けている。
そして それを体現するが如く歌謡曲をステージでカヴァーし披露する桑田佳祐は まさしく歌謡曲の伝道師であり、正当な継承者なのだ。
そして僕もこうして拙い文章で細々と歌謡曲の魅力を伝えられればと この連載を始めた訳なのですが、桑田パイセンがこうして頑張っているうちは自分も うかうかしていられないなと思う次第なのでした。日々是勉強。
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