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憂鬱な放課後の幸福な食卓~学童保育の事件簿~5 決断のチョコレートマフィン 

 おやつは、「八つ時」という言葉から来ている。
 元々は八つ時(今の十四時)に食べる間食の事であったが、この間食のことを、「おやつ」と呼ぶようになっていったのだ。
 昔は、食事は朝と夕だけだったのだけど、そこは、ほとんどの国民が農民の時代。
 朝も早よから働いて、二回の食事だけで体が持つかあっ!ってことで、休憩中に軽い食事を取るようになり、それが江戸時代ぐらいから「おやつ」として定着して行ったのだ。
 江戸時代ぐらいになると、柏餅とか金平糖とか、そう言った本当に「楽しみ」としての「おやつ」が当たり前のように出て来るし、そもそも、地域に伝わる郷土料理は、その地方独自で作り出された「おやつ」がたくさんある。
 「おやつ」とは、人類の歴史の中でもけっこう重要な部分にあるのではないか、と明里は思うのだ。
 だけど、「放課後児童支援員」と同じように、「おやつ」は、世間ではかなり「軽視」されている。
 誰もが子ども時代に経験した「大切なこと」を、どうして大人になったら「大したことない」と思うのか。
 宇宙開発なぞしなくても人類は生きていけるが、おやつがないのは、人間にとっては、特に子どもにとっては、重大事項だ。
 子どもに必要な物は、「学ぶために適切な環境」じゃあない。
 おやつと遊びと仲間達が、子どもにとっては必須アイテムなのだ。
 そして、今日も今日とて、明里達は必須事項の「おやつ」と「遊び」を提供するために、知恵を絞っている。
「あら。美味しいじゃあない」 
 昨日に引き続き、お昼ご飯時。安部さんは、美里が作った干し柿のパウンドケーキを食べながら言った。 
「ヨーグルトなら、子どもにも食べさせられるしね。それに昨日の物より爽やかな感じね」
「干し柿を柔らかくするために使ったヨーグルトを、そのまま入れたそうです」
「へぇ、合理的ねー」  
 感心したように、安部さんが頷く。
「妹さんも、料理されるのね」
「妹は主婦ですからね。今じゃ私よりも上手んじゃないかな」
「あら。働いていらっしゃらないのね。真中ちゃんの妹なら、バリバリ働いていそうなのに」
「結婚するまでは、飛行機の客室乗務員です」
「ええええっ!?」
 明里の言葉に。びっくりという表情で、安部さんは明里を見た。
 そう。
 美里は、明里達姉妹の中では、一番何でもできた。
 だから東京の大学に行って、そのまま航空会社の採用試験を受けて、客室乗務員になったのだ。
「じゃあ、結婚のために、退職されたの」
「そうです」
『私は、子どもには、私のような気持ちをさせたくないの』
 と、不意に。
 美里が結婚する前に言っていた言葉を、明里は思い出した。
 起用ではないけれどやりたいことは何でもやっていた明里や、あまり「努力」することを好まなかった末の妹と比べて美里は本当に何でもできた。
 上手くやれないことも、きちんと努力してできるようになろう、としていた。
 そんな美里は、父も母も自慢に思っていた。
 あからさまに口にはしなかったけれど、「美里ちゃんは凄いね」と周りに言われると、「友達のお母さんが褒めていたよ」と、嬉しそうに本人に報告していた。でも。
『里花(りか)は、七十点でも褒められるのに。どうして私は百点でも、お父さんもお母さんも何も言わんとね!』
「真中ちゃん?」
 怪訝そうに安部さんに声をかけられて、明里は、はっとなった。
「どうしたの?」
「あ、いえ。で、どうでしょうか。子ども達に出しても良いですか?」
「うん……これなら出しても大丈夫だけど、そもそも、子ども達これ食べると思う?」
 根本的な問いかけを、安部さんはしてきた。
「ヨーグルトと干し柿でしょ。結構、クセはあるわね」
「敏感な子も多いですからね、うちは」
 最近の子の傾向なのか。子ども達は、おやつには既製品っぽいものを好む。
 明里達には十分「美味しい」と思うものも、「美味しくない」と言って食べない可能性は十分あった。
「手作りプリンよりも、プッチンプリンの方が『美味しい』と思う子達だからね。もちろん、そんな子ばかりじゃないけど、子どもって流されやすいでしょ」
「他の子が『食べない』って言うと、真似して『食べない』って言いそうですよね……」
 集団心理、と言うのか。
 一人の子が「食べない」と言うと、他の子達も真似をして「食べない」と言うのだ。
「まあ、せっかく自腹切ってやるんだったら、子ども達が喜ぶのをしたいですね」
 明里も、安部さんの言葉に考え込む。
『どうせ姉ちゃん達の持ち出しだったら、チョコチップでも使えば良かとに』
 美里の言葉が、脳裏をよぎった。
「お疲れ様! 真中ちゃんいる?」
と、その時だった。
 ドアをがらがらがらと開けて、谷さんが入って来た。
「あれ? 谷さん、早いですね」
 いつもであれば、二時過ぎに来る谷さんが、今日はまだ十二時過ぎであるにも関わらず、出勤して来た。
「どうしたの、谷さん」
 その早目の出勤に、安部さんも、目をぱちくりとさせてしまっている。
「安部ちゃん、おやつの提供して良い?」
 けれど。谷さんは、そんな明里達にはお構いなしに、靴を脱ぐと、安部さんに言った。
「まあ、それは本当にありがたいことだけど……いったいどうしたの?」
「ホットケーキの賞味期限が、今日まで!」
 安部さんの問いかけに、この世の終わりのような声で、谷さんは言った。
「でも、賞味期限って、『美味しく食べられる保証期間』であって、まだ食べられますよ」
 と、明里が言っても、
「『何があっても責任は持ちません』と言われる方が、嫌!」
 そう言って、谷さんは納得しなかった。
「え、じゃあ、小麦粉粘土にします?」
 小麦粉粘土は、小麦粉で粘土を作る。
 百均にも売ってはいるが、消費期限の切れた物で作ると材料費もかからず、手軽なのだ。
「まだ食べられるのを、無駄にするのも嫌!」
 だが、これまた速攻でこう言われ、明里は返す言葉がない。
「どうする? 真中ちゃん」
 そんな谷さんに、苦笑しながら安部さんが明里に尋ねてくる。
「まあ、材料次第ですけど。ホットケーキミックス以外に、何かありますか?」
「そう言われると思って、家にある物で使えそうな物も持って来たわ」
 よくよく見ると、谷さんはいつも持っているバックの他に、エコバックと何故か炊飯器まで手に持っている。
「どうしたんですか、その炊飯器……」
「前に真中ちゃん、よく炊飯器でケーキ作っていたじゃない」
 そう。
 まだ、明里が勤め始めたぱかりの頃は、おやつ代も現金で支給されていて、その中から手軽に買える材料で、よく手作りのお菓子を出していた。
 明里はオーブンレンジも持ってはいるけれど、やっぱり持ち運びのしやすい炊飯器でケーキを作っていた。
「安部さんが来た頃から、おやつ用に支給されるお金が少なくなって、手作りのおやつも、長期休みにしか作れなくなりましたもんね」
 それも、簡単なゼリーや手軽に作れるピザトースト、などだった。
「そのために、少しでもおやつ代を節約したりしたけどねー」
 現状を知っている谷さんも同意しながら、荷物を下ろした。
 谷さんが持っていたエコバックの中には、卵と牛乳、そして四枚のチョコレートが入っていた。
「チョコレートケーキができない? 子ども達は好きだったでしょ」
 エコバックの中身を確認している明里に、谷さんがそう言ってくる。
「うーん。ココアが足りないんですよね。チョコチップマフィンの方が良いかな」
「マフィン? オーブンもないのにどうやって作るのよ」
「別に炊飯器でもできますよ。マフィンの形をしていなくても、問題はないんですから」
「だったら、ケーキじゃないの?」
 明里の言葉に、安部さんがそう突っ込む。
 確かに、「マフィン」と言いながらも、カップに入っていなければ、「ケーキ」の方がしっくり来るのかもしれない。
「別に何でも良いですよ。じゃあ、私早速作業に入ります」
 しかし、明里はそれどころではない。
 カウントダウンは、もう始まっているのだ。
 マフィンだろうが、ケーキだろうが、子ども達が帰って来るまでに、完成させなければならないのだ。
「もう⁉」
 谷さんが驚いたように突っ込んでくるが、
「炊飯器ケーキは、最低四十五分は炊かないといけないんですよ。これから、四個のケーキ焼くんですよ⁉ 時間が足りません!」
 低学年の場合は、四時には迎えに来る保護者もいるのだ。
 果たして間に合うのか!? と、明里は逸る気持ちを抑えながらも、エコバックを持って、二階へと走り上がった。
             ★
 結論から言えば。
 チョコチップマフィンは、四時前には全て炊き上がることはできた。
「疲れた……」
 さすがに、子ども達が少なくなってきた時間帯になると、それまでの疲労感がどっと出てくる。
 明里は子ども達がDVDを見ている横で、テーブルに上半身を投げ出していた。
「真中ちゃん、まだお迎えの人達が来るんだから、ピシャっとしてよ」
 その瞬間、谷さんがそう声をかけてきた。
 いつも二時から六時までが勤務時間の谷さんは、まだ帰っていなかったのだ。明里は、慌てて体を起こす。
「すいません」
「すごい形相で二階に駆け上がって行ったけど、結局間に合ったんでしょ?」
 谷さんは不思議そうに言うが、そんな単純なものではなかった。
 明里が作ったチョコレートマフィンのレシピ事態は、そんなに難しいものではない。
 ホットケーキミックス一袋に、卵を二個割入れて、牛乳を二分の一カップ、砂糖を二十グラム、油を三十グラム加えてよく混ぜる。
 それを、油を塗った炊飯器の窯に入れて、割った板チョコ一枚分を散らす。
 行程としては、これだけである。
 明里の手にかかれば、十五分で可能だ。
 そう。
 「おやつまだ」軍団の存在さえ、なければ。
「間に合わせなければ、高学年の子ども達に私は殺されています」
「真中ちゃんねーケチんだよ。おかわりダメって言うの」
 そんな明里達の会話が聞こえたのか、壮馬がそんなことを言ってきた。
「あんた達は食べたのに、『おかわり!』ってうるさかったんじゃない」
「でも食べたかった!」
「別のあげたじゃない」
「あれよりも、チョコのケーキがいい!」
「何あげたのよ」
 二人の会話に、谷さんがそう聞いてくる。
「今日おやつとして支給された物ですよ」
「あの山盛りに残った、ご飯みたいなヤツ!?」
「はい、そうです」
 本日支給されたおやつは、ご飯に卵を混ぜて、オーブンで焼いた物だった。
「どうだったの?」
「チョコケーキの方が良かった!」
 谷さんの問いに、壮馬は元気よく答える。
「壮馬君は、素直だね」
「醤油がかけてあったら、上手いんじゃ?」
 明里が嘆息しながら言った言葉を聞いて、皆が見ているDVDを横目で見つつ、宿題をしいた歩武が言う。
「何、そんなに味がなかった? 歩武君」
「うん。真中ちゃんは、塩かけてくれたけど」
「どうしましょうか、あのおやつの残り……」 
「味が薄かったってことは、高齢の人達のために作ったおやつってことかもね」
「それにしちゃ、味なさすぎ」
「だから、チョコレートケーキ頂戴って言ったのに、真中ちゃんは駄目って言ったんだよ」
「壮馬君達は先に食べていたでしょ!」
 そう。
 明里が一番疲弊したのは、チョコチップマフィンを作る作業ではない。
 一応、子ども達が帰ってくる前に、二個までは完成させることはできた。
 しかし、三個目の生地はあらかじめ作っていて、冷蔵庫に入れて置いたものの、四個目は、さすがに作り置きはできなかったので、低学年の子達におやつを食べさせながらの準備となったのだ。
 その間にあった攻防戦のことは、正直思い出したくもない。
「壮馬君ね、電子レンジにしまったケーキを食べようとして、冷蔵庫に上ったんだよ」
 谷さんの傍でお絵かきをしていた由紀が、元気よく言ってくる。
「ボウルの中に入った材料をなめようとしたり、真中ちゃんが割ったチョコレートを取ろうとしたりする人達がいたよ」
「おい、それはどういうことだ?」
 しかし、最後におやつを食べる立場だった歩武が、聞き捨てならない、と鉛筆をノートの上に置いた。
 彼にとっても、「おやつ」は学童に来る時の一番の楽しみなのだ。
 その動きを見たとたん、DVDを見ていた低学年男子達が、びくりとなる。
「私を誰だと思っているの?」
 だがすかさず、明里が歩武にそう言った。
「私が、そんな所業を許すとでも?」
 舐めるんじゃねえおら、というオーラを出しながら言う明里を見て、歩武は、「あ、何でもないです」と、慌てて鉛筆を持ち直して宿題を再開する。
 ほーと、低学年男子達の緊張が抜けるのを、明里は見逃さなかった。
 男子の中では最年長の歩武を、低学年の子達は「怖い」と思っているのだ。
 その歩武が唯一恐れるのが、明里であると、彼らは思っているらしい。
「次は、ご飯物が続くかもね」
「醤油を持って来ていいか、安部さんに聞いてみましょうか?」
 そんなことを谷さんと話していた明里は、ふと視線を感じた。
 視線のする方を見ると、皆から少し離れた場所で、これまた宿題をしていた望海が、明里達の方をじっと見ている。
「どうしたの? 望海さん」
 怪訝に思い声をかけたが、
「何でもない」
 ぶっきらぼうに望海はそう言って、視線をノートに落とした。
 望海のことは、少しでも気になったことがあれば、声をかけるように、と職員全体で共有している。
 谷さんは、「考えすぎじゃない?」と言っていたけれど、明里が栞奈ちゃんのことや江原さんのことを話すと、難しい表情になってはいたが、納得はしてくれた。
『ただ、セクハラってその人次第だからね。その人達だって、ジャニーズの人達が相手だったら、それは「好意」として、満更でもないでしょう?』
 とは、言っていたけれど。
 できるだけ、望海は歩武と一緒に行動させるように、意識もしている。
 そのせいか、最近では理事長に関して、何か言って来ることはなくなっていた。
「そろそろ母の日のプレゼント考える時期だけど、考えている?」
 大丈夫そうだなと、明里が望海を見ながら思っていると、谷さんにそう言われて、いっきに現実へと引き戻された。
「そうでした……」
 明里は、テーブルの上の本に目を落とした。
「何か良いアイディアありませんか、谷さん」
「どんな物が良いのよ」
「材料費がかからなくて、子ども達が簡単にできて、でもかわいくできるものです」
「何、その無茶苦茶な条件は」
「そうでないと、準備できないんですよ」
「起案書は出した?」
「一応、フェルトのお守りで出していますけど、音沙汰なしです」
 そう言って、明里はため息を吐いた。
「色画用紙なら、出せるわよ」
 すると、カウンタ―席で仕事をしている安部さんが声をかけてきた。
「本当ですか?」
「個人でリトミック教室をやっていた頃に気張って買った物があってね。提供しようか?」
「助かります!」
 明里は安部さんの方を向いて、そう叫んだ。
「何をするつもり?」
「ホップカードが作れます!」
 明里は谷さんの問いかけに、満面の笑顔で答えた。
 ポップカードとは、飛び出すカードのことだ。
「難しいんじゃない?」
「仕組み自体はそこまで難しくないです。まあ、仕組みの元だけ作ってあげて、できる子はそこに飛び出す部分の物を作っても良いし、難しい子はメッセージだけ書けば良いし」
「ああ、なるほど。確かに、『材料費がかからなくて、子ども達が簡単にできて、でもかわいくできるもの』だわ」
 感心したように、谷さんは言った。
「でも、真中ちゃん。それって、父の日には使えんよ」
「その時はその時で考えます!」
「だからどうして、刹那主義に走るわけ⁉」
 と、そんな会話をしていた時だった。
「すいません、迎えに来ました」
 出入口の方から、声が聞こえた。
「有本(ありもと)さん、お帰りなさい」
 振り返ると、望海の母親が迎えに来ていた。
「望海さん、お迎えだよ」
 明里が声をかけると、
「わかっている」
 と、望海はそう言って、ノートと教科書を持って立ち上がった。
 明里はそれを見送ってから、どんな絵柄がホップカードに良いか考えようと思い、カウンターの棚に置いてある本を取るために、立ち上がった。
「あ、真中先生」
 と、その時だった。望海の母が、明里を呼び止める。
「はい、何でしょう?」
 そう、明里が聞き返した時だった。
 望海がランドセルを背負いながら入り口の所に来た。
「余計なこと言わないでよ!余計なこと言うなら、私ここ辞めるから!」
「あんた、昨日言っていたことと逆のこと言っているわよ」
 望海の母親は、あきれたように言った。
「えーと、何か……」
「いいえ。失礼しました。卒業まで、よろしくお願いします」
 要望があったのではないか、と思い明里は問いかけるが、望海の母親はそう言って、笑顔で明里に頭を下げた。
「ほら、もう帰ろう!」
 そんな母親に威勢よく望海は言い、母をせっついて出て行った。
「何だったんでしょうか……」
「うーん」
 カウンタ―席に座って、パソコンで事務仕事をしていた安部さんと、顔を見合わせる。
「もしかしたら、おやつについて何か文句があったのかも。あの子、おやつに何時も文句言っていたじゃない」
 けれど、帰る時刻になった谷さんが、明里達の方に近づいて来ながらそう言った。
「まあ……そうですけど」
「聞いていたのかもよ、私達の会話」
 明里は、谷さんの言葉にはっとなった。
 確かに、今度のおやつはどうしようか、そんなことを話していた。
 あの時、望海は聞き耳を立てていたのかもしれない。
「うかつだったな……」
 明里は、ため息を吐いた。
「どうしてよ? 私達の事情を理解してくれたってことなのに」
 谷さんは、不思議そうに尋ねる。
「でも、子どもに不自由させているのは、事実ですから」
 ゆで卵、干し柿、そしてご飯。
 用意されるおやつは、全て子どもの嗜好や希望を無視したものだ。
 時々、今日のように明里達がアレンジすることで対応できることもあるが、それにも限界がある。
 そして、行事ごとに企画書を出しても、無視されてしまう事実。
 一番その弊害を受けているのは、「子ども」なのだ。
『保護者の人達が払っているお金って、ちゃんと使われておると?』
 美里が言っていた言葉が、脳裏を過った。
 このままじゃ、駄目だ。
 明里は、そう思った。
 確かに、今のままでもやってはいける。
 何とかやり繰りして、時々は明里達が自腹を切ったり、家にある物を提供したりして。
 でもそれは、その場しのぎだ。
「経営者が、お金を出してくれない」
 理由は、それだけだ。
 けれど、そこで終わってしまったら、明里もあの平八郎理事長や料理長と同じことをしていることになる。
 何が、できるのか。
 子ども達にとって、この「不本意な状況」を、少しでも変えるために。
 そして、「不味い物」を食べさせられないように。
 この、瞬間。
 「戦闘開始」のゴングは、確かに鳴り響いたのだ。

1話目はこちら
憂鬱な放課後の幸福な食卓~学童保育の事件簿~1  その戦いはうどんから始まった|kaku (note.com)

2話目はこちら
憂鬱な放課後の幸福な食卓~学童保育の事件簿~2 有り合わせのオープンサンド(卵乗せ)|kaku (note.com)

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4話目はこちら
憂鬱な放課後の幸福な食卓~学童保育の事件簿~4 憂鬱なメロンコンポート&アイスクリーム添えトースト|kaku (note.com)

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7話目はこちら
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8話目はこちら
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9話目はこちら
憂鬱な放課後の幸福な食卓~学童保育の事件簿~9 大爆発のポップコーン|kaku (note.com)

10話目はこちら
憂鬱な放課後の幸福な食卓~学童保育の事件簿~10 甘いカレーと激辛カレー ①|kaku (note.com)
憂鬱な放課後の幸福な食卓~学童保育の事件簿~10 甘いカレーと激辛カレー ②|kaku (note.com)

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