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ロシア民謡

母の影響で私は中学生の頃からロシア民謡、とりわけ「トロイカ」が好きだった。当時は鉄のカ一テンと噂され、どことなく暗いイメージの強かった記憶があり、それが私には神秘的な魅力に思えた。
その頃からロシア語を学びたいと漠然と思っていた。

原曲のトロイカは、日本で知られているような明るいテンポの良い曲調とは全く異なり、ある青年の叶わない恋を描いた悲恋を歌ったものだった。

ロシア語の抑揚というのか、言葉そのものからも悲哀を感じていたのだろう。勿論、軽快で弾むような民謡も多くあり、奇跡的に受かった大学に入ってから知った曲や歌手も多くある。

その中でとても好きになった曲は「黒い瞳の」だ。
片思いをする若き娘の心情を表したもので、詩も曲も大好きになった。
ロシア民謡を原語で歌いたい、その一心だけで大学へ行ったのだから酔狂と言えばそうなのだろう。

ロシアという国に惹かれ、その国の民謡を調べるにつれてますます虜になった。文学面では疎かったが在学中に読んだ「アンナ・カレーニナ」は当時の背景を知るに足るように感じた。

卒業してかなり経った頃に折に触れてチェ一 ホフの戯曲上演を観るようになった。
旧ソ連、ロシアに興味を持ったのも民謡のお陰なのだから、何が人生を左右するか分からない。
通訳や翻訳、まして日常会話も怪しいほどの語学力しかないが、学んで良かったと思う。

残念ながら国内で販売されているロシア民謡のCDは限られている。岸本力さんのロシア民謡集が唯一私が知る中でも稀有なものだ。それでも「黒い瞳の」が原曲で収録されたCDは未だ知らない。
「郵便馬車の馭者だった頃」も悲恋ものなのだが、こちらも名曲だ。これは母の形見であるソノシ一トが残っている。確かレコードも手に入れた。

今はまた戦争を仕掛けた国として悪印象が強いのだけれど、ロシア人全員が悪なわけではない。ひと握りの権力者がいつの世も国民を洗脳し、人生を左右する。
この過ちが一刻も早く終わることを願って止まない。

また民謡をおおらかに歌い、心から笑い、交流しあえる、そんな国に戻って欲しい。ウクライナの民にもロシアの民にも。

私だけではなく、ロシアという国を愛する人達がまた堂々と言える日が来ることを祈って。
何より戦争の犠牲になった両国や隣国の人々へ哀悼の意を込めて、このブログを締めくくりたい。

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