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我が社、中興の祖(予定)ルンバ 湯島にて
信州軽井沢ふつうの生活 東京編
2020年夏、東京恵比寿から軽井沢に移住してきた、僕とパートナー、アイコ先生と2匹の猫。僕たちの軽井沢ライフは決してスタイリッシュなものではありませんが、四季折々の美しい花鳥風月と、それを愛する人々との交流、そして、郷里筑豊や東京でのエピソードを織り交ぜながら書き綴ってまいります。お茶でものみながら、ゆっくりとお楽しみください。
計算速い女
僕が初めてルンバに会ったのは、ヤツがアシスタントとしてやってきた、岐阜のロケ現場だった。以来、かれこれ3年の付き合いになるが、ヤツについては、いまだにわからないような…… わかるような…… やっぱりわからない。ヤツは、いわば、人間の女のフリをした量子コンピューターだ。ちなみに掃除機ではない。
数学が得意で、計算能力が人一倍高いが、けっして「計算高い女」というわけではない。計算が速いから、物事の判断も速い。ただ、やはり計算が速いがゆえに、「なんでそういう判断結果を導き出したのか」僕には、サッパリわかないことが多い。そういうところも量子コンピューターに似ている。
「美形」に対する考え方も変わっていて、好きな顔はどんな顔かというと、「舐めたい顔」なのだそうだ。「蹴りたい背中」というのは、きいたことがあるけど、「舐めたい顔」っていったい、なんだ?
湯島の居酒屋「もん」にて
とある現場仕事のあと、湯島の居酒屋「もん」に行って、二人でビールジョッキを1杯ずつ空けたとき、当時大学生だったヤツに就職はどうするのか尋ねたところ、「どうすっかな〜?」(演算2秒)「そうだ!いいこと考えた!棟梁の会社で働きたい、入れて」ときた。プログラムの1行目からのゼロ除算で、デバッグモードに入っている僕にヤツは続けざまに「あたし役に立つ、一緒に働くのがいい(真か偽か)」と新たにブーリアン演算をぶっ込んできた。
にべもなく断るのもなんなので、なぜやめたほうがいいのか、ビールサーバーとテーブルを2往復しながら(「もん」の常連は生ビールをセルフで注ぐ、そういうシステムだ)懇々グビグビと説明したが、全部否定、「働きたい」の一点張りだ。小一時間ののち、僕は、半ば面倒くさくなってこう言った。
僕:「ふん ルンバ? 贅沢な名だね 今からお前の名前はルンだ」
ルンバ改めルン:「ありがとう! 私うんと働くね 棟梁っていい人ね」
我が社、中興の祖(予定)ルンバ誕生の瞬間である。
そうだ、最後に、まだルンバに言っていない大事なことがひとつあった。
そのセリフは千尋じゃなくてキキだ。
つづく