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かるがも団地 第8回本公演『静流、白むまで行け』上演台本

割引あり

はじめに

かるがも団地 マグカルシアター参加作品
第8回本公演『静流、白むまで行け』

公演チラシ(B5 二つ折り仕様で開くとこんな感じ)

2023年はかるがも団地結成5周年記念企画として、6月と11月に2回本公演を実施しました。幾度も神奈川の街をモチーフに劇をつくってきたのですが、念願の神奈川進出を果たしました。

"取り返しのつかない失敗"によって、掴みかけた夢への道を断ってしまった男女の再生を縦糸に、普通の日々を戦う市井の大人たちのヒューマンコメディ。お話の舞台は冬の海街・小田原です。

ニュータウンをやんちゃに駆け回る子供たちを描いた6月の前回公演から一転して、しっとりしたお話を画策していたのですが、いざキャストさんが全員揃ってみたらまぁパワフルな方々ばっかり。これはもう力強くいくしかないと開き直って冒頭から舞台上駆け回るシーンばっかり展開しました。

折り合いをつけたり、やり過ごしたり、上手く世を渡っていけるようになる中でも、それでも絶えずに燃え続ける心の炎。かかってこいや人生という気持ちでパソコンに向き合い、気持ちはあっても技術は追いつかず、沢山の方に迷惑をかけてしまいながら、なんとか形にできました。あまりにもふがいなさすぎて結果2回べそをかきましたが。

キャストは、2022年のオーディションにて出逢った素敵な方々と、いつも力をお力添えいただいているかるがも経験者の奇天烈俳優の皆さまを、沢山お呼びしました。ほんとうに、勿体ないくらい素敵な皆さまに、手を引っ張っていただき、お尻を叩いていただき、背中を押していただきました。
もちろんスタッフさんにも最後の最後まで助けていただきました。
急に100人規模のキャパに拡大してあたふたする私たちが、楽日まで無事に生き延びられたのはみなさんの技術力と優しさ誠実さのおかげです。

5ステージのみで休日である日曜日に上演できないというスケジューリングであったにもかかわらず、過去最大の来場者数を記録し、本当に幸せな時間でございました。

沢山のご観劇本当にありがとうございました。
毎度のことながら、よろしければどこかで感想を聞かせてもらえると嬉しいです。ご感想なんてなんぼあってもいいのですから。

藤田恭輔

かるがも団地 マグカルシアター参加作品
第8回本公演 『静流、白むまで行け』上演台本

作:藤田恭輔(かるがも団地)
脚本補佐、記録写真:古戸森陽乃(かるがも団地)

■当日パンフレット 演出のことば■

本日はご来場いただき誠にありがとうございます。
旗揚げ5周年記念企画第二弾です。
劇団を5年も続けられるなんて正直思っていなかったし、
こんなに沢山の人達が手を貸し、知恵を貸し、
足を運んでくださる日が来るとも思っていませんでした。

この5年をかけて、やっと、
つくり続ける覚悟のようなものが備わってきた気がしています。
それは紛れもなく、ここまで関わってくれた、
気持を向けてくれた皆さんのおかげです。大感謝です。

腕白な子供達を描いた前回公演から打って変わって
今回は大人達のお話です。
今日までの27年間の道のりで、溢してしまったものや
失ってしまったもののことをふと思うことがあります。
信頼だとか、人や時間とか、その他諸々。
自分の愚かさに思い至ってはつい溜息が出てしまいます。
そんなことをぐるぐると考えていたらこんな劇になりました。

この公演の代表としての思いを述べる場であるとは分かっていつつも、
舞台裏で、大量の衣装小道具に揉まれて阿鼻叫喚の最中にいる
キャストのみんなを思うと長々話している場合ではありません。
早く楽屋に補助に行きたい(僕はまだ全員分合わせると何役になるのか、
おそろしくて数えられずにいます)。

どうぞ、かまえずゆったりご覧くださいませ。
都心を離れて神奈川は小田原、肌寒い季節に、
それでも燃え続けるささやかな火の話です。


【登場人物】


早見 静流(はやみ しずる・24→25) …… 土本燈子
香椎 洋貴(かしい ひろき・28)/ほか …… 後関貴大

浦野 真澄(うらの ますみ・29)/ほか …… 武田紗保
浦野 朋茂(うらの ともしげ・32)/ほか …… 河村凌(猿博打)
浦野 安寿(うらの あんじゅ・3)/静流の母(60)/ほか …… 遠さなえ

酒匂 亜紀(さこう あき・28) /ほか …… こばやしかのん
三輪 潤人(みわ じゅんと・27) /ほか …… 橋本涼

松木 凪(まつき なぎ・22) /園児・まつり/ほか …… 梶川七海
井口 悠浬(いぐち ゆうり・25)/ほか …… 小澤南穂子(いいへんじ/山口綾子のいる砦)
濱崎 迅(はまさき じん・30)/食べっこデーモン/ほか  …… 平林和樹
津村 眞人(つむら まさひと・30)/悠浬の夫・たけし/ほか …… 北林佑基(世田谷センスマンズ)

ほか …… 宮野風紗音(かるがも団地)

※記録写真は年内をめどに記事内に更新予定です。
2023/12/15 藤田 


【おはなし】

○前説

   劇団員の宮野と早見静流(24)、ぞろぞろと出てくる。

宮野 こんばんは(or こんばんみ or こんにちは)

前説宮野 ご来場ありがとうございます。(諸々の諸注意など……)携帯電話や音が鳴る電子機器は、電源よりお切りください。部屋の外と中のシーンが入り乱れているのですが、靴の脱ぎ履きが間に合わないので足元だけアメリカだと思ってください。ここからの進行はこちらのお姉さんにバトンタッチします

静流 はい、やっちゃります
宮野 それでは私は、着替えます

静流 こんばんは(こんにちは)。本日はご来場いただきありがとうございます。肩の力を抜いてゆったりと楽しんでいってください。あ、申し遅れました。早見静流といいます。なんでこんな名前なのかは忘れちゃったんですけども

   母、ぬるっと出てくる。ヤニを吸っている。

母 「深い川は静かに流れる」って諺があるでしょ。心に余裕があって、やたらに騒がない、スマートな子になってほしかったわけ

静流 あ、だそうです。あれ母です
母 どうね小田原は。電車ちゃんと乗れていますか(など)
静流 心配されています。18で八戸の実家を出て、もう25になろうというのに。早く子離れしていただきたい。毎月りんごとお米と干物が届きます
母 青森ブランド、どすこい
静流 もうはやくひっこんで。そんなスマートに育ってほしかった母の期待を華麗に裏切って、私は随分と喧しく育ちました

母 ほんと、ぴーちくぱーちく言うとりましたわ。静流は夢中になるとついそれ以外みえなくなる子でした

   母、ホイッスルを鳴らす。
   瞬間、14年前へ。

1.


○回想・青森県八戸市 市民グラウンド~静流の実家

   14年前。クラブチーム同士の交流戦。
   サッカーをプレーする子供たち。
   小学5年生の静流、仲間たちについていくのがやっとである。

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