【必見!】誰でも簡単にできる香盤表の書き方ガイド
今月末、小さな短編映画の撮影が待っています。
元々、前回のワークショップの
参加者さんから持ち込まれた企画です。
撮影日が近づき、
その参加者=企画者さんから、
いろんな質問がやってきます。
・・・などたくさん。
こういった質問に一気に答えるのが、
<香盤表>
こうばんひょう
です。
今回は、この香盤表の書き方について
お伝えしたいと思います。
* * * *
香盤表というのは、
撮影日、シーンごとの
ロケ地や時間帯、出演者、小道具や衣装、
などなどを一つの表にまとめたもの。
「このシーンには誰と誰が出る」
「このシーンとこのシーンにこの小道具が必要」
「このシーンの後、役者は衣装をこれに着替える」
みたいなことが、チェックできる表になります。
表なので、エクセルで作ると効率的。
さてこの香盤表、
「テンプレートが欲しい!」
と思うでしょう。
思いますよね?
「香盤表 テンプレート」
で検索すると、すぐにあれこれ見つかります。
あー、よかった。
これで解決、めでたしめでたし・・・
・・・・にはならんよ、ってお話をします。
* * * *
試しに見つけたテンプレート(エクセルファイル)をダウンロードしてみます。
項目を見てみると、次のようになっています。
<あるテンプレートの項目>
TIME:何秒間撮るか
カット内容
カット数
参加人数
出演者A
出演者B
出演者C
スタッフ
小道具
参考カット:ネットで見つけた画像を貼付
これを見て、ささっと表を埋めていける人はいるでしょうか。
埋められるなら、もうすでに
かなり細かく撮影計画を立てている人。
そう、香盤表のための事前準備が綿密に求められるのです。
ただね、このテンプレート、
「ビジネス用の動画撮影の香盤表」というオチです。
ビジネス系のインタビュー動画なら、
カット数、なども結構シンプルなんですね。
例えば、
シーン1は「企業の建物外観」。
撮るカットは、次の3カット。
・建物外観
・会社ロゴ
・入り口・受付
シーン2は「事務所の入り口」。
撮るカットは、次の3カット。
・受付の全景
・企業ロゴのアップ
・受付台の上の花
・・・こんなふうに、
撮りたいものをざっとまとめていける。
ところが、ですね。
映画の撮影は、こうはいかないんです。
* * * *
ビジネス動画の撮影と、映画の撮影は何が違うのか。
ビジネス動画は、先ほどの通り、
「撮りたいものを並べていく」という準備になります。
編集の時に、別に並べ替えてもいいんですね。
一方で、映画はそうはいきません。
カットの繋ぎが、感情を生み出すわけなので、
「何を、どう、どの順番に撮るか」が
とても大事になります。
例えば、
主人公Aの歩く足元(後ろから追従)
Aの足元(同じ画角で横からフォロー)
Aの後ろ姿(足元から頭までティルトアップ)
Aの後ろ頭(ヘッドホンをして揺れている)
・・・なんて感じで、
映画のオープニングで、
「主人公Aがどんな人間なのか」が
少しずつつまびらかにされるような撮り方を考えたりする。
撮りたいカットには、
それぞれどんな画角でどう並べるか、まで意味があるわけです。
となると、さきほどの
ビジネス動画の香盤表の項目のように、
「シーンごとのカット数」に
「5」とか書き込むことに全く意味がない。
大事なのは、数じゃなくてその中身だから。
というわけで、またネット上で検索して、
今度は「映画の香盤表テンプレート」
をダウンロードしてみました。
あるテンプレートを開いてみると、
次のような項目になっていました。
<あるテンプレートの項目>
シーンナンバー
場面
L/LS:屋外か屋内か
D/N:デイシーン(日中)か、ナイターシーン(夜間)か
ロケ地
登場人物
備考欄:小道具や車両、エキストラなど
ほーらね、映画版の方には、
「カット数」なんて項目はありません。
このテンプレートは、映画用として
なかなかシンプルにまとまってる、と思いました。
* * * *
さて、人様のテンプレートにあれこれ言った後は、
じゃあ、「そういうお前はどうしてるのか?」について書きましょう。
僕は、
香盤表は、ただ書くだけでなく、
書いた後に、撮影計画を練るためのもの、と位置付けています。
そのため、考える工程も含めて解説します。
【0】香盤表の準備
まず、今回の作品は、
1日で撮影を終えたいので、
きっちり絵コンテを描きました。
そして、描いた絵コンテ、ひとマスごとに
番号をふっていきました。
その数、60。
【1】絵コンテを頭から香盤表にまとめていく
僕は今回、次の項目を選びました。
シーンNo:シナリオと合わせる
カットNo:絵コンテと合わせる
場所(ロケ地)
時間帯:日中ならいつでもいいか、夜か
出演者A
出演者B
出演者C
小道具
その他メモ
過去には、ここに
・内容
という項目を入れたことも。
どんな内容のシーンかを書き込む項目。
ただこれ、書くのがめんどいので、省くか、
「散歩」「自転車」とか一言だけ書いたりします。
今回は省きました。
絵コンテの60カットを全て、一覧表にまとめたのがこちら。
これを見て、「めんどくせー」と思った方。
もちろん、やる・やらないは自由です。
こんな内容を当日、テキパキと頭で考えて
スムーズに皆に指示・ディレクションができるなら、どうぞ。
でもね、しっかり撮影準備ができてる方は、
この表、サラッと埋められます。
僕も、15分くらいだったかな。
この中で、「出演者」の欄についてもう少し補足したい。
「出演者」の項目は、マスの中に、
登場人物や役者の名前を次々書き込むのはオススメしません。
映画の場合は、出演者をずらっと横に並べて書くことがおすすめ。
ひとマスに一人ずつ。
登場人物が大勢いると、
一人くらい、どうしても予定が合わない、とか当日都合が悪い、という人が現れるんです。
スタッフなら替えがきくが、役者はそうはいかない。
そんなとき、香盤表を見て、代わりの人を探せます。
「この日とこの日、この時間帯に来てもらえる?」
など、おどろくほど具体的に人探しができるんですね。
【2】撮影のことを考えて並べ直す
さて、香盤表は、書いて終わりではありません。
次は、この香盤表を、撮影スケジュールにまとめ直します。
撮影しやすい順番に並べていくんです。
この撮影しやすい順番、というのは
作品や監督の考えによって変わります。
出演者の気持ちに寄り添いたいので、
ストーリーの順番通りに撮りたい(順撮り)なら、
【1】のままでいいでしょう。
ただ、ほとんどの場合、
「同じロケ地は一気に撮ってしまいたい」
ということが多いのではないでしょうか。
または、
A:服装順 →特殊メイクや着替えが大変なので、その順番に合わせて撮る
B:役者の都合順 →どうしても忙しいメイン役者がいて、その人の都合に合わせて撮る
なんてこともあるでしょう。
僕がいつも意識するのは、2つです。
大変なシーンから撮る
ロケ地ごとにまとめて撮る
大変なシーンというのは、撮影に時間がかかりそうなシーン。
登場人物が多いとか、カメラワークが大変とか。
今回は、自転車に乗った主人公が移動するシーンが多く、
それを午前中に持って行きました。
これらをもとに、香盤表を並べ直したのがこちらです。
そして、簡単なシーン(登場人物が一人だけ。部屋の中。夜)を後半に持って行きました。
夜がなぜ簡単かというと、窓のシャッターを閉めてしまえば、時間が経っても影響はないから。
最悪、時間が延びても、それほど影響がないからです。
【3】時間割を書き込んでいく
ここまで来たら、後もう一息。
この撮影順の表に無理やり時間割を書き込んでいきます。
無理矢理でも書き込まないといけないんです!
なぜなら、みんなから
「何時に行けばいいですか?」
「いつころ終わりそうですか?」と質問攻めに会うから。
季節によっては、ある程度
「終わらないといけない時間」も決まってきます。
例えば、暗くなるから17:00には撮影終了でないといけない、とか。
無理矢理でも「何時終了!」と決めることで、
「ここは何時までにやろう」
「ここは時間をかけてはいけない」
などと、行動指針が決まってくるのです。
そして、それをみんなで共有しておく。
これこそが大事なことです。
* * * *
この香盤表、
書く人の性格がにじみ出ます。
僕はきっちり書きたい派です。
だって、撮影当日、
役者とカメラマンと<演出だけ>に集中したいので。
「次何を撮るか」
「いつ、移動するか」
「このあと、何が必要か」
みたいな、ごちゃごちゃしたことに思考を持っていかれたくないんです。
また、香盤表を書いてみることで、
「撮影があまりにも大変だ」
「こんな撮影、現実的じゃない」
などと、我に返ることもできるんです。
むかーしむかし、アクション映画を撮ろうとして、
絵コンテと香盤表を書いて考えてみると、
「1カット9秒で撮らないといけないじゃないか!」
ということに気づいた、という経験もあります。笑
初心者だけが参加できる、
カルフの映画制作体験ワークショップの撮影でも、
時間を気にしながら自由に撮影していただきます。
時間制限と自由さ。
理想と現実のはざまで自分たちの演出を行なってください。
次回第28回、まだ募集中です!
第28回映画制作体験ワークショップ
(東京開催)
10月5日(土)/6日(日)