ママ友と劇団どくんご
うちには男の子が一人いる。その子が小学生のとき、札幌に引っ越してきた。冬、雪が積もって公園で遊べない。こういうときは室内スポーツを習わせればいい、と週に1回テニスに通わせた。行きは一人で行かせて、帰りは遅くなるので私が迎えに行って、しかし車の運転は出来ないので徒歩で帰ってくる。
その帰り道、時々一緒になる親子がいた。うちの子と同じ学年で隣りのクラスの男の子とそのお母さん。偶然、マンションも近かった。同じテニススクールに通っていて、時間が合うと帰りに一緒に帰ってくる。会話の感じから、私よりは少しお若いんだと思われた。札幌に引っ越してきてすぐの冬だったので、地元の子どもたちの過ごし方や学校のことも教えてもらった。
次の年、劇団どくんごが札幌に公演にやってきた。どくんごというのは九州に拠点を置きつつ、全国をテント劇場持参で回る旅の劇団。私の妹が彼らのことを大好きで、芝居を見に行けと何十年も言われ続けていた。この年、やっと見に行くことにした。妹にとっては大事な甥っ子であるうちの子にもぜひ見せてやってほしい、と言うので子どもも連れて行った。公演は、本当に素晴らしいものだった。
芝居の後の帰り道、地下鉄のホームに行く。電車を待っていると、子どもがホームにいる人に声をかけられた。テニススクールの帰りに一緒になるあのお母さんだった。向こうもなんでいるの?って驚いている。もしかしてどくんご見た?そうそう、今見たよ、あらお宅も?となった。
そういう人だったのか。知らなかった。道でしゃべるときには当たり障りのない会話、いやそれも大事なんだけど、その辺りの会話で止めていたから。俄然彼女に興味が湧いてしまう。その日は夜遅いので、また今度詳しく話をしよう、ということになった。
後日、私の家でちょっとあなたいつからどくんご見にいってんの、とお互い突っ込んだ話をした。途中「ひろとくんって知ってる?」と聞かれ、そういう子、うちの子のクラスにいたかなあ、と考えていたらライブハウスでよく会うの人のことだった。
世間が狭くて驚く。こわいような嬉しいような。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?