見出し画像

【CL2021愛知エクストラ完走】ミミッキュLO

 みなさん、こんにちは。私は普段Kionというハンドルネームで活動しているポケモンカードユーザーです。この度は、CL2021愛知エクストラ(2021年3月28日:Aichi Sky Expo)にて、人生において初めてCLの予選を完走することができた為、反省も兼ねて記事にしておこうと思い立ち、筆を執った次第です。参考までに、筆者個人のこれまでの大会実績を紹介すると、

CL2019千葉スタンダード
予選8試合 4-3 ドロップ
初戦と最終戦は種切れ負け

CL2020愛知エクストラ
予選8試合 4-3 ドロップ
初戦と最終戦は夜の行進に負け

CL2021愛知エクストラ今回
予選7試合 4-3 完走83位
初戦と最終戦は時間切れ両負け

といった具合です。上記の結果を見れば一目瞭然で、負け越すことはないものの、イマイチ勝ちきれないプレイヤーであることを察していただけるかと思います。他にシティリーグなど小中規模の大会実績としては、一番成績の良いものであっても、オポネントに恵まれず予選抜けまで今一歩足りない程度であり、現在に至るまで公式大会における予選抜けの経験はありません。

 見ての見ての通り、上記の全ての大会おいて初戦で負けており、全ての大会において最終戦は初戦と同じ負け方で負けているので、次回以降に大型大会に出るときは、参加する前にお祓いに行こうかと思います。

 さて、前置きはこの辺りにして、以下にデッキ選択における思考、最終的なデッキリスト決定に至るまでの経緯、各デッキに対する立ち回り、当日の実際のマッチアップについて記載します。

1.環境考察

1.1.海外環境から予想するCL愛知エクストラ 

 今回のCL愛知エクストラのデッキ選択にあたって、まずは環境考察から始めようと思ったのですが、日本では2020年2月末以降、エクストラの公式大会そのものが開催されておらず、環境を調べようにも個人主催の小さなリモート大会を除いて国内には情報が殆ど無い状態でした。筆者はエクストラの造詣が浅いので、なにも参考にするものが無い状態から、1年分の情報をアップデートして、それを信用可能なレベルに修正するなんて芸当は勿論不可能です。従って、国内ではなく海外の環境に目を向ける必要が出てきたわけですが、幸いなことに海外ではLimitless Online Series(以下LOSとする。)という開催頻度が多く、参加人数の規模もかなり大きな大会があったので、そちらの結果を参考にすることにしました。

 各デッキの使用率をざっくりと見たところ、単純な殴り合いの環境から、LOの増加に伴い、LOに対して強いデッキと、LOの対抗馬に対して強いデッキの3竦みのような環境に移っているなと感じたので、今回はLOと他のデッキタイプの使用率を対比する形で環境を考察することにしました。以下に示すFig.1~Fig.4は、直近で開催されたLOSの過去5回分(2021年2月5日~2021年3月19日)における全デッキの使用率から、LOSで結果を残している主要なデッキタイプと、少なくとも環境に一定数いるだろうと考えたデッキの使用率を抽出してグラフ化したものです。

1.1.1.特殊エネ主体のデッキとLOの関係

cl愛知用1

Fig.1 LOS過去5回分のデッキの使用率の推移1 

CL愛知用1-2

Fig.2 LOと他デッキタイプの使用率の相関1*¹

 Fig.1は、デッキに採用されているエネルギーが、特殊エネルギーを主体としている、もしくはキーカードとしているデッキと、特性「とおせんぼ」の「カビゴン(BW7)」などを軸にしたLOデッキのLOS過去5回分の使用率の推移を表しています。回を追う毎のLOの増加に伴い、特殊エネルギーを主体としているデッキは、「ガブギラ」を除くと軒並み使用率が減少していることがなんとなく見て取れます。そこでFig.2では、よりわかりやすく比較する為に、試しにLOの使用率と他のデッキ使用率で相関を取ってみました*¹。その結果、「次元の谷パーフェクション」もLOの増加に合わせて使用率を伸ばしているらしいことがわかりました。

1.1.2.特殊エネ主体のデッキはなぜLOに弱い?

 では、なぜ一部を除いて特殊エネルギー主体のデッキは軒並み減少してるのかといった話になるわけですが、これは特殊エネルギーが、同じカード名のものをデッキに4枚しか採用できないという仕様上、LOによく入っているグッズの「改造ハンマー」や、サポートの「ザオボー」といった特殊エネルギーを割るカードを4回プレイされるだけで、デッキのエネルギーが枯渇する可能性がある事が原因として考えられます。もちろん「スペシャルチャージ」など、トラッシュのリソース回収手段はありますが、基本エネルギーに比べると強力な分、対策札も強力なものが多く、LO側からすると特殊エネルギーを主体としたデッキは比較的有利なマッチアップであると言えます。

 しかし、上記の理由ならば特殊エネルギーも入っているとはいえ、基本エネルギーの採用枚数が多い「三神ザシアン」と「三神ゲコゾロ」の使用率が減っている一方で、特殊エネルギーがデッキの中核を担っている「ガブギラ」と「次元の谷パーフェクション」が増加しているのはおかしいではないか?という疑問が生じます。

 これに関して前者は「アルセウス&ディアルガ&パルキアGX」を動かした場合、「ザオボー」などで「ダブルドラゴンエネルギー」を4枚全て剥がされて動けなくなった「アルセウス&ディアルガ&パルキアGX」が盤面に残り続けてしまい、他の基本エネルギーがついたアタッカーは無視されて、最終的に「アルセウス&ディアルガ&パルキアGX」をバトル場にロックされた状態でLOされてしまうといったケースが起こるからだと考えています。これは後述するFig.3の「ターボダーク」の使用率の推移からもわかりますが、「三神ゲコゾロ」から「アルセウス&ディアルガ&パルキアGX」と「ダブルドラゴンエネルギー」が抜けた純粋な悪タイプのデッキである「ターボダーク」の使用率は、LOの増加に特に影響されていないので、「アルセウス&ディアルガ&パルキアGX」と「ダブルドラゴンエネルギー」を採用することで、結果的にLOに不利を取るという認識が少なからず広まっていると筆者は考えました。

 一方で後者は、グッズロックできるカードの有無が原因として考えられます。後者のデッキには「オンバーンGX」や「クワガノンV」といった、グッズロックができるカードが入っていることが多く、LOデッキは妨害札やデッキを回すためのリソースとしてグッズを多投していることが多いので、一度、手札がグッズで詰まってしまうと、その状態から抜け出せずに負けるといったことがよく起こります。

 LOSで使用率の多い「カビゴン軸のLO」は、「ルザミーネ」でトラッシュの「ルザミーネ」とサポートを1枚を手札に加える、「ルザミーネループ」のギミックが採用されていることが殆どで、理論上は相手のグッズロックを掻い潜りながら「ザオボー」や「フレア団の下っ端」を無限に宣言できるので、一見グッズロックが関係ないように思えます。しかし、基本的にサポートは1ターンに1枚しか使えない都合、ハンドにエネ割サポートが複数枚無い限り、グッズロックされている状況で「バトルサーチャー」も使えないことから、実際にエネルギーを割れるのは2ターンに1回のペースです。

 従って、グッズロック側のエネルギー供給が途切れない限り、エネを剥がせないターンの返しに「N」や「マリィ」で手札を流されて、そのまま止まってしまうことが可能性として十分にありえるのです。つまり、どっちが先にリソース切れするかといった話になるのですが、グッズロックという対抗手段があることで他のデッキに比べるとLOに有利なのは間違いないので、LOが環境に蔓延するようであれば、今後も「ガブギラ」や「次元の谷パーフェクション」の使用率は伸びていきそうなことが予想できます。

 1.1.3.基本エネ主体のデッキとLOの関係

cl愛知用2

Fig.3  LOS過去5回分のデッキの使用率の推移2

cl愛知用2-2

Fig.4 LOと他デッキタイプの使用率の相関2*¹*²

 Fig.3は、デッキに採用されているエネルギーが、基本エネルギーが主体としていることが多いデッキと、LOデッキのLOS過去5回分の使用率の推移を表しています。LOの増加に伴い、基本エネルギーを主体としているデッキが全体的に増加してることがなんとなく見て取れます。こちらもFig.2と同様、わかりやすくする為に、LOの使用率と各デッキの使用率で相関を取ってみた*¹*²ところ、Fig.4のようになりました。ほとんどのデッキタイプが、LO増加に伴い増加している一方で、「ターボダーク」と「モクナシラフジュナ」は使用率が微増しているものの、ほぼ横這いであることがわかります。この2つのデッキに関しては、LOの増減が使用率に殆ど影響を与えていないことから、殴り合い環境とLO環境の両方に強いデッキタイプであることが推察できます。


1.1.4.「モクナシラフレシア」からみる環境推移

 Fig.3とFig.4では、「モクナシラフレシア」というデッキタイプを、「ジュナイパー(S3)」が入っているタイプと、「ゴリランダー(S1W)」が入ってるタイプの2種類に分けていますが、それぞれのデッキの特徴として「ジュナイパー」型は、特性「にがにがかふん」の「ラフレシア(SM3H)」などの採用からみるに相手のポケモンに、自分のポケモンが倒されない盤面を作って相手を詰ませることを重視している構築であり、「ゴリランダー」型は特性「ボルテージビート」を使った山札からの潤沢なエネルギー供給による継戦能力を重視している構築であり、両方とも「モクナシラフレシア」という共通部分はあるものの、目指している方向性がまるで違うのです。

 この2つデッキの使用率推移を比較すると、「ジュナイパー」型は使用率がほぼ横這いであることに対して、「ゴリランダー」型はLO増加に合わせて大きく使用率を伸ばしてることから、殴り合いにおいて相手を詰ませることよりも、LOにエネ割られても継戦できることが環境で評価され始めたと推測できます。

1.1.5.基本エネ主体のデッキはLOになぜ強い?

 ではここで、なぜ基本エネルギー主体のデッキはLO環境において強いのかについて考えてみましょう。これは特殊エネルギーと比較したときの、単純な採用枚数の違いに加えて、前述の「ゴリランダー」のように基本エネルギーは、毎ターンの手張りに追加して、特性やグッズ、サポートを使うことで、手札、トラッシュ、山札、あらゆる場所からエネルギーの供給が可能なことから、リソースの回収手段が豊富な為、コントロールデッキのエネ割に対する耐性が、特殊エネルギー主体のデッキに比べて高いことが原因として考えられます。

 しかし、上記の理由であれば手張りしかエネルギー供給の手段がない、「モクナシラフジュナ」と「ドラパダスト」が減っていないのはおかしいのではないかという疑問が生じます。

 これに関して前者は、「ガブギラ」や「次元の谷パーフェクション」と同様にグッズロックの手段があるのが原因として考えられます。後者に関しては、「ドラパルトVMAX」の上技「ひきさく」はエネルギー1枚でも使用でき、下技「ダイファントム」はエネルギーが2枚で使用できるといった具合に、技に必要なエネルギーコストの少なさが理由の一つとして考えられます。また、「ダイファントム」でベンチにダメカンをばら撒くことで、サイドの複数取りを狙いつつ、LO側の盤面を容易に破壊できることも理由として考えられます。仮に毎ターン順当に「ドラパルトV」にエネルギーの手張りができた場合、先行2ターン目には「ドラパルトVMAX」の「ダイファントム」が使用可能であり、LO側が後攻1ターン目にエネルギーを割れない限り、「フレア団の下っ端」などの妨害サポートでは、1枚ずつしかエネルギーを剥がせない都合、「ドラパルト」側は盤面にエネルギーが少なくとも1個残り続けるので、LO側はかなり負担を強いられます。上記のように、Fig3とFig.4で増加しているデッキに関しては、どのデッキもLOに対してなんらかの解答を有していることから、LOが環境に蔓延するようであれば、自然と使用率が伸びそうなことが予想できます。         

1.2.カードプールの違いによる影響

 ここまでLOSの結果から環境を考察してきましたが、前述した内容を纏めると、以下に示すFig.5のような3竦みの環境になりそうだと筆者は考えました。

CL愛知用3

Fig.5 LOSの結果から予想するCL愛知環境

 しかし、海外と日本では微妙にカードプールが違うので、上記のデッキ群に加えて、「一撃マスター」と「連撃マスター」と「双璧のファイター」の3つのパックのカードプールによる影響を考慮する必要があります。そこでまずは、上記のパックのカードリストからエクストラレギュレーションに影響を与えそうなカードを考えてみることにしました。

連撃ウーラオスVMAX
 情報が出た時点で、エクストラレギュレーションにおいて強いと各所で噂されていましたが、実際のところLOSの環境では色相性的に有利な「ピカゼク」や「ターボダーク」が環境トップにいること、多くのデッキに採用されている「デデンネGX」や「クロバットV」といった展開要員に対して「広角レンズ」を付けることで、上手くいけば1ターンにサイドを4枚取ることができることから、相手に安易な展開を許さない点などを考慮すると間違いなくトップメタに上がってきそうなカードであると言えます。

 一方で「連撃エネルギー」の採用により、特殊エネルギー中心のデッキになるので、一見LOに対して不利に見えますが、「キョダイレンゲキ」の仕様上、盤面にエネルギーが残らないので、「ザオボー」が刺さりにくいことから、「キリンリキ(SM8)」の使用を強制され易いこと、「やまびこホーン」で「キョダイレンゲキ」の的をいつでも呼び出せることから、LO側も常に「キョダイレンゲキ」によるサイド複数取りを警戒する必要があるなど、お互いのプレイングやデッキの回り方次第で難しいマッチアップになりそうなことが予想されます。

ガラルファイヤーV
 特性「じゃえんのつばさ」で1ターンに1回だけですが、トラッシュから確実にエネルギー供給できるという点が「ターボダーク」にとって追い風になりそうです。特に「ダークライEX(BW4)」や「マニューラGX」は「無人発電所」で蓋をされると動けなくなってしまいますが、このポケモンは「無人発電所」で止まる事が無い点も評価できます。

ドータクン(S5l)
 特性「ぬけがけしんか」の「ドーミラー(SM8a)」と合わせることで、後手1から立てることが可能なエネトランス役。「レインボーエネルギー」など全てのタイプとして働くエネルギーも動かせるので、使い道を考えれば色々と悪いことができそうなポケモンです。

 筆者が、カードリストを眺めてて強そうだなと感じたのは、上記の3つのカードでしたが、中でも最も環境に影響を与えそうなカードは、「連撃ウーラオスVMAX」だと思いました。ざっくり考えただけでも既存の環境にいるデッキの殆どに対して、明確な強みを持っている点は非情に脅威であると言えます。このポケモンの存在によって、Fig.5のような3すくみの環境が破壊されてしまったので、CL愛知の環境は既存の環境から抜け出せない層と、新規の環境に適応した層が混在している予測不可能な環境になりそうだと結論付けました。

CL愛知用3ー2

Fig.6 「連撃ウーラオス」が環境に与えそうな影響

2.デッキ選択について

 環境考察の結果、CL愛知は混沌とした環境になるのが見えてきたので、そういった環境で相手と純粋にサイドを取りあうデッキを持って行くのはナンセンスだと考えました。従って、超越*³ギミックを使用して相手になにもさせないデッキか、LOのように最初からサイドの取り合いを拒否するデッキを握る方向で候補を絞ることにしました。

2.1.超越デッキとLOデッキの所感

2.1.1.超越デッキについて

 昨年の禁止改定により、「ミロカロス(XY2)」と「シェイミEX(XY6)」が禁止になってしまって以降、CL2020シリーズにおいて流行した「オーロット&ヨノワールGX」の「ナイトウォッチャー」を用いたハンデスによる超越デッキは、殆ど数を見なくなりました。一部では、「マルマインGX」と特性「へんしん」の「メタモン(BW6)」を組み合わせることで細く生き残っているようですが、やはり全盛期に比べると成功率が圧倒的に下がっているので、CLに持って行けるデッキかと言うと疑問を抱かざるを得ませんでした。

 従って、新しいギミックを考えるしかないわけですが、普段調整に付き合ってくれている友人から「ラフレシア(XY7)」でグッズロックしながら、「ヤミラミ(SM2L)」の「そくばく」でサポートロックをし続ければ、超越できないかという案をいただきました。当時は、「ヤミラミ(SM2L)」の存在が頭になかったので目から鱗が落ちる思いでしたが、調べてみたところ、このデッキタイプついては2020シリーズのエクストラのシティリーグでも既に結果を残していることから、そこからブラッシュアップしていくことで強いデッキが組めそうなことがわかりました。

2.1.2.LOデッキについて

 こちらも昨年の禁止改定により、「時のパズル」と「ヤミラミ(BW4)」が禁止になって以降、お手軽なリソース回復ができなくなった影響か、CL2020シリーズで猛威を振るった「ヤミラミ+ミミッキュLO」のようなタイプのLOはすっかり見なくなりました。そこへ、代わりに環境に台頭してきたのが、「カビゴン(BW7)」で攻撃に参加できないポケモンを捕獲するか、「カエンジシ(XY2)」などの壁ポケモンで相手を詰ませてからルザミーネループで相手の山を削り切って勝つタイプのLOでした。お手軽な無限リソースによる相手の盤面破壊が難しくなってしまったので、相手の盤面を無視できる状況を作る方向に、LOの流行がシフトしたことがわかります。

 しかし、このデッキの特徴として、壁となるポケモンを立てることで、サイドをあっさり取り切られて負けることこそないものの、1ターンに1枚しかサポートをプレイできない都合、相手の山を掘り切るまでに非常に時間がかかるため、デッキカットなどで人為的なプレイ速度の影響が大きく出やすいオフラインの対人でやる場合には、時間切れによる両負けが多発しそうなことが予想でき、これをそのままCLに持って行くのは難しいというのが筆者の見解でした。

2.2.結局どっちを握るのか?

 ここまで超越とLOのそれぞれの所感について書いてきましたが、せっかくリストの原案も貰ったことだし、超越を持って行こうかなという考えていましたが、どこかからこんな声が聞こえてきました。

???「あのカードを使わないのは、もったいないよなぁ…」

CL愛知用4

Fig.7 トロピカルビーチ

 それまで超越を握る気満々でしたが、LOの考察を進めることにしました。

3.カードリスト決定までの経緯

3.1.まずは過去のレシピから勉強

3.1.1.「ミミッキュ(SM11b)」は、なぜ消えた?

 前述したLOの所感を得て、筆者が最初に思ったのは、「ミミッキュは特に弱体化してなくないか?」というものでした。そこで、一旦「ヤミラミ+ミミッキュLO」における「ミミッキュ(SM11b)」の強みについて、改めて調べてみることにしました。

※omasa氏による記事。掲載許可ありがとうございます。

 上記の記事は、CL2020シリーズ末期のエクストラレギュレーションにおける、「ヤミラミミ+ミッキュLO」の非常に完成度が高いレシピついて紹介すると伴に、「ヤミラミ+ミミッキュLO」における「ミミッキュ(SM11b)」の強みと、その運用方法について詳しく解説している。この記事よると、「ミミッキュ(SM11b)」の強みというのは、以下の3つが主なものでした。

CL愛知用5

 前述したように「時のパズル」と「ヤミラミ(BW4)」の禁止は、既存の「ヤミラミミミッキュLO」におけるリソース回復手段に対しては大きな影響を与えましたが、「ミミッキュ(SM11b)」の強みには全く影響がないことがわかります。従って、LOの速度的な問題を解決することを重視するのであれば、「ミミッキュ(SM11b)」を軸にしたLOを組むべきだろうというのが筆者の結論でした。

3.1.2.「ミミッキュLO」の弱点について

 「ミミッキュLO」を握ろうという事で考察をスタートしましたが、考察当初のリストはFig.8のようになっていました。大枠としてCL2020シリーズに流行った「ヤミラミミミッキュLO」を基に禁止カードを除いたような形になりました。大きな変更点としては「ソーナンス(XY4)」を採用したことです。

画像9

 Fig.8 試作リスト1

 CL2020シリーズにおいて「ヤミラミミミッキュLO」が環境を席捲し始めると、その対抗馬として、「ターボダーク」や「モクナシラフゴリラ」といったデッキが環境で結果を残し始めました。前述したLOSの環境においても上記2つのデッキは、一定数存在しており、結果も残していることからLOを握る上では意識しておく必要がありました。

 まず、上記2つのデッキの特徴として「ダークライEX(BW4)」、「ゴリランダー(S1W)」、「ラフレシア(XY7)」などの強力な特性によって、LO側の妨害に耐性を有しているので、これらに勝てるようにLOを組むには、特性ロックをすることが有効な対策として考えられます。エクストラの環境における特性ロックの手段は、「ダストダス(XY9)」や「サイレントラボ」など複数ありますが、上記のカード全てに対してロックできるかつ、たねポケモンなので盤面に用意しやすい点を評価した結果、「ソーナンス(XY4)」に辿り着きました。しかし、既存のレシピにそのままピン刺しした状態だと「ブルーの探索」とアンチシナジーを持っていることから、デッキに使えない札を4枚も抱えることになるので、そこを緩和するために「回収ネット」を採用して、「ブルーの探索」を使いたいタイミングで、「回収ネット」で盤面から「ソーナンス(XY4)」を退かしてハンドを整えた後に、再度盤面に置くことを想定していました。

3.1.3.試作リスト1を実際に回してみた結果

 実際にFig.8のリストを回してみたところ、「ソーナンス(XY4)」でスタートできないと、特性ロックをする意味が薄いこと、仮にスタートできた場合も、一旦は相手の動きが止まるものの、「ブルーの探索」でデッキを回していくコンセプトが崩壊しているので、そこに加えて「N」や「マリィ」でハンドに干渉されると盤面が上手く整わず、その間に手張りだけで相手のポケモンが育ってしまい、バトル場の「ソーナンス(XY4)」が倒されると、そのまま押し切られてしまうことがわかりました。また、ポケモンや基本エネルギーなどのリソース回復手段として、「ホルビー(XY5)」を採用していましたが、「時のパズル」と違って一旦山札に戻ってしまう都合上、速攻性に欠けていたので、ポケモンと基本エネルギーを直接ハンド加えられるカードの採用を検討する必要があることがわかりました。

cl愛知用6

3.2.迷走期に入る

3.2.1.強いカードは4枚から

 まず課題1については、「ソーナンス(XY4)」を4枚採用することでスタートする確率を最大限確保したうえで、手札を整える札を「ダイゴの決断」に寄せることで解決できないかと考えました。「ブルーの探索」を減らすことで「ミミッキュ(SM11b)」の強みを一つ捨てることになりますが、そもそも「ターボダーク」や「モクナシラフゴリラ」には、「ミミッキュ(SM11b)」だけでは安定して勝てなかったので、この2つに勝てるようになるならと割り切ってみることにしました。今回は、そこに加えて「Ωバリア」の「レジロック(104/XY-P )」を採用することで「グズマ」によるロックの解除を防止することにしました。

3.2.2 新弾のカードによる強化

 次に課題2ついて当初は、トラッシュから手札にリソースを補充する方法として、「レスキュータンカ」の採用を考えていました。しかし、実際に運用してみたところ「レスキュータンカ」でトラッシュから手札に回収できるポケモンは1枚だけである点、エネルギーは別の回収札を用意する必要がある点など、リソースの回収枚数が少ない上に、速攻性を得るためには「エネルギー回収」など他のカードも要求してくることから、安定した運用を考えるとかなり要求値が高いことがわかりました。

 そこで一旦、手札に直接リソースを回収して速攻性を上げる方針は諦めて「タケシのガッツ」を採用する事で、ポケモンと基本エネルギーのリソースを潤沢に確保する方針で考えていたのですが、「双璧のファイター」にて新規収録された「クララ」が求めていた条件を全て満たしていたことから、課題が一気に解決しました。トラッシュからポケモンと基本エネルギーを、2枚ずつ手札に直接回収できる点は、まさに求めていた性能そのもので、サポートなので「ルザミーネ」や「バトルサーチャー」で使い回せる点、グッズロックされた状況下であっても、サポートによる利用したリソースの回復ができる点も評価できました。

 上記を踏まえて組んだのが、Fig.9のリストになります。以下、細かい変更点について解説します。

ヤミラミ(SM2)
 Fig.8の試作リスト1における「フーパ(SM10)」の採用理由である「超越オロヨノ」が環境から消えたので、代わりに何か環境メタカードを採用しようと考えていたところ、LOS環境を見てカビゴン軸のLOを持ってきた相手に「ヤミラミ(SM2L)」の「そくばく」でサポートロックをすると試合を楽にできることから採用。

かるいし
 「ザオボー」や「フィールドブロアー」で壊されない「かるいし」が強い事は「ビーチレジロック」の使用経験から分かっていたので、「レジロック(104/XY-P )」の採用に合わせて採用。

ダウジングマシン
 同じACESPECである「いのちのしずく」と採用を迷ったが、「時のパズル」の禁止に伴い「いのちのしずく」の取り回しが、以前よりも落ちたことから代わりのACESPECカードとして採用。

グズマ&ハラ
 「キャプチャーエネルギー」の採用に合わせて、エネルギーにアクセスする手段として「ダイゴの決断」や「センパイコウハイ」よりも緩い条件かつ、スタジアムとポケモンの道具に触れる点から採用。

センパイとコウハイ
 条件こそあるものの、自分の番を終らずに、山札の好きなカードにアクセスできるので採用。

キャプチャーエネルギー
 「ソーナンス(XY4)」を増やしたことで、「ブルーの探索」が満足に使えないので、「ブルーの探索」からの展開札として採用していた「博士の手紙」と「ネストボール」を抜いて採用。

ガラル鉱山
 最終盤面で置けると相手の逃げる為のエネルギーの要求値を上げることができるので、結果的にゲームを楽にできると考え採用。

画像11

Fig.9 試作リスト2

3.2.3.試作リスト2を実際に回してみた結果

 実際に、Fig.5のリストを回してみたところ、「ソーナンス(XY4)」を4枚採用したことで、スタートから特性ロックを仕掛けて「ターボダーク」や「モクナシラフゴリラ」に対して、ゲームスピードをスローにすることができました。しかし、バトル場を常に「ソーナンス(XY4)」で固める必要がある都合上、プレイできるサポートは1ターンに1枚なので、こちらのハンドの噛み合わない隙に、一度でも相手の手張りが間に合ってしまうと、相手の潤沢なエネルギーリソースに対して、こちらの妨害札が間に合わないことがわかりました。

 また、「モクナシラフゴリラ」に関してはデッキリストに「マリィ」が4枚採用されていることが多いので、「ダイゴの決断」の返しに「マリィ」を打たれることが頻発して、こちらの盤面が整わない隙に押し切られてしまうことがわかりました。

 正直な話をすると、上記の内容についてはデッキ構築を組み始めた段階で気づくべきでしたが、当時の私は「ソーナンス(XY4)」で特性ロックする方針で思考が凝り固まっていたので、実際に回してみるまで気づくことができませんでした。そして、「ソーナンス(XY4)」を軸にしたことで、当初の目的であった「ミミッキュ(SM11b)」の強みを活かしてLOの欠点であるゲームスピードを速めるはずが、真逆のデッキを生み出したことでコンセプトが崩壊してしまったので、考察が振り出しに戻ることになりました。

 なお、新規の「クララ」については、想定した通りの性能であり、ポケモンのリソースが途切れることが無くなったので、今後もLOを組むのであれば是非採用したいカードだと思いました。

3.3.現行のレシピから勉強する

3.3.1.時代は「トロピカルビーチ」から「無人発電所」へ

 前項で説明した通り、考察が振り出しに戻ってしまったので、「ターボダーク」と「モクナシラフレシア」、この2つにどうやって対抗するのか練り直す必要があるわけですが、海外環境のLOのリストを見ていたときにふと気づいたことがありました。

 それは、デッキに採用されているスタジアムが「トロピカルビーチ」のデッキよりも「無人発電所」採用のデッキのほうが結果を残してるということでした。もちろん「トロピカルビーチ」の入手難易度が非常高く、希少なカードであることも理由の一つでしょう。しかし、禁止改定により「超越オロヨノ」が消えて以降、環境においてハンデスされる機会も減ったこともあり、LOのような待つタイプのデッキは手札が7枚以上にあぶれてしまうことが増えたので、「トロピカルビーチ」でたくさんドローできる機会が以前ほどありません。

 従って、効果が薄い「トロピカルビーチ」をおくことよりも、相手を確実にロックできる「無人発電所」で蓋をしたほうが強い環境であるとも考えられます。実際、LOデッキが海外環境を席捲し始めたLOS MAJOR#2(2021年3月13日開催)における「トロピカルビーチ」採用者のマッチアップを見て見ると、「ターボダーク」や「次元の谷パーフェクション」、「ガブギラ」など「無人発電所」が刺さる構築に負けている一方で、「無人発電所」採用者のマッチアップを見て見ると、LOミラーと「モクナシラフゴリラ」以外には負けていないことから、まずは「無人発電所」を採用すべきではないかという方針が決まりました。(後にもっと強いスタジアムが出ました…)

3.3.2.「フルメタルウォールGX」追加効果はズル

 試しに「ブルーの探索」型の「ミミッキュLO」に「無人発電所」を採用したところ、特性ロックしながら「ミミッキュ(SM11b)」で妨害サポートをフルに使用できるようになったので、「ターボダーク」になんとか勝てるようになってきました。しかし、相手の潤沢なエネルギーに対して、エネ剝がし札が間に合わない場面が出てきてしまうのは相変わらずであり、こちらのできる最も効果的な妨害が「ミミッキュ(SM11b)」の「なりすます」と合わせて1ターンに「フレア団下っ端」を2回使うことに対して、盤面に3枚以上エネルギーを置かれると妨害が間に合わないといった具合でした。

 また、採用しているポケモンのHPの低さが相まって、「アクジキング(SM11a)」が採用されている場合、追加サイドを簡単にとられてゲームが終わってしまうことから、最低でも「アクジキング(SM11a)」の攻撃を1回耐えることができる壁ポケモンの必要性が浮上してきました。そこで、条件に該当するカードを探すために、海外環境のリストを眺めていたところ、エクストラでは「ルカリオ&メルメタルGX」の「フルメタルウォールGX」が追加効果込みであっても、「ダブル無色エネルギー」1枚で起動できるという事を思い出しました。緊急時にも起動が容易であり、相手のバトル場からエネルギーを一気に消せる即時性、高いHPとGX技の効果による耐久性は、構築における足りない要素を埋めてくれる存在だったので、「ルカリオ&メルメタルGX」と「ダブル無色エネルギー」の2枚は即採用に至りました。

 そして上記を踏まえた結果できたのが以下のリストです。「ルカリオ&メルメタルGX」の採用に合わせて「AZ」が採用されました。

画像12

Fig.10 試作リスト3

3.3.3.試作リスト3を実際に回してみた結果

~「モクナシラフゴリラ」は当たらない事で対策する~

 実際にFig.10のリストを回してみた結果、「ターボダーク」に安定して勝てるようになってきたこともあり、それまで疎かにしていた他のデッキとのマッチアップも練習するようになりました。その結果、「無人発電所」と「ルカリオ&メルメタルGX」の採用は正解だったらしく、「ピカゼク」や「ドラパルト」といったLOが苦手とする部類のデッキに対しても、遺憾なく性能を発揮してくれました。

 また、「ルカリオ&メルメタルGX」に合わせて採用した「AZ」によって、最終的にバトル場だけにポケモンを残すことで、相手がハンドに抱えた「グズマ」を腐らせる動きができるようになったことも収穫の一つでした。

 しかし、「モクナシラフゴリラ」については相変わらず明確な回答が無く、練習した中でも最も勝率が悪いデッキでした。「ゴリランダー(S1W)」を止める手段として、「カウンターエネルギー」と「エンテイ(SM11a)」採用するなど、海外の環境において採用されている方法をいくつか試してみましたが、どれもその場しのぎで根本的な解決にはなっておらず、相手の手札事故、プレイミス、サイド落ちなど運に依存している部分が多く、「モクナシラフゴリラ」側がなんの支障もなく動いてきた場合、勝つことはほぼ不可能というのが筆者の結論でした。

 そして、この結論に達した時点で「特定の環境デッキに勝てないLOを持って行くべきか」、「それとも他のデッキを握るべきか」という岐路に立たされたわけですが、一旦「モクナシラフゴリラ」がどのくらいCL愛知の環境にいるのだろうかという事を考えることにしてみました。環境考察のLOSデッキ使用率を見るとわかりますが、「モクナシラフゴリラ」というデッキタイプは、一定数はいるけど環境使用率トップになるような所謂Tier1のデッキタイプではない事がわかります。今回のCLは予選の対戦回数が7回と普段に比べて少ないことも考慮すると、予選でそもそも当たらない可能性が十分にあります。

 このように考えたときに、Fig.10のリストは「モクナシラフゴリラ」を除く全ての環境デッキに対して明確な不利は取らないという手応えがあったので、「予選7回戦中、1回は踏んでもいいけど、それ以外の対戦で全部勝てばいいのでは?」という考えに至りました。従って、今回のCL愛知ではこのまま「ミミッキュLO」を煮詰めて、「モクナシラフゴリラ」については「当たらないことで対策する」方針に決まりました。

ここから先は

22,406字 / 2画像

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?