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若い私たちは、とにかく焼肉を食っとけば幸せだった【焼肉】

上京、新卒時代。私たちはとにかくお金がなかった。

私の周囲のメンバーには大企業に行った者も大勢いたが、新卒の頃なんて外資やフルコミッションでもなければ、どんぐりの背比べだ。

そんな私たちのささやかな贅沢は、焼肉。やはり焼肉である。大学生の延長みたいな話だ。むさ苦しい話に見えるかもしれないが、ここに男女の垣根はない。

20代前半、営業職中心の焼肉というのは凄まじい勢いがあった。もうあれは、食事というか、闘争である。

はじめての上京、一人暮らし、社会生活、営業、人間関係、わくわくはしながらも、身体も心もいっぱいいっぱいなのだ。

私たちは、よく土曜の夜に集まった。東京に散らばって住んでいたが、私の家の近所に、安くて美味しい焼肉屋さんが発見されて以来、だいたいみんな私の家の最寄り駅に集合した。

入店、着席、大ジョッキと、タン、キムチ、カルビ、ハラミ、コプチャン、ロース、そして、大ライス。これが鉄板の初手オーダーだった。

私は、ものすごく大食いなわけではない。そしてお酒も強くない。しかし、この時ばかりは私は限界を超える。

「大ライス、2つ!」

これには周囲も私にひいていた。行きつけのお店の大ライスは、ほぼ丼飯だった。2つ合わせると、まるでサッカーボールのようだった。

空腹、平日の疲れ、すべてを解放する食の宴がはじまる。まるでラピュタのドーラ空賊団の食事さながらである。(気になる方は映画を是非ご覧いただきたい)

第二派、トモサンカク、ミスジ、ロース(おかわり)、ガーリックロース

ミスジとトモサンカクがすごく高かった気がする。このあたりでやっと私たちは正気を取り戻してくる。すでにビールは1人2リットルくらいは飲んでるのではないだろうか。

最後は、石焼ビビンパで締め。

食べ終わった後、私は座敷に仰向けになり、気絶寸前になる。もう、二度と食物を見たくない。でも、幸せだった。今日が人生で最後のご飯でいいとおもえるほどだった。

大手チェーンではない、不思議なお店だった。個人経営。当時、明らかに安すぎる値段だったと思う。聞くと、上等なランクもそうでないランクも、社長が目利きでいいと思った肉を仕入れて、混ぜて出していたらしい。

随分年月は過ぎ、私ももう、あの頃のような馬鹿な飲み方、食べ方はしない。できない。もっと上等なお店にも時々は行けるようになった。

でも一番美味しい焼肉屋と言われれば、あの頃の、あの店だ。お金はなくても、仲間と愚痴や未来を語り合いながら、獣のように肉を食べたあの店が、やっぱり一番なのだ。


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