『あるnoterの生き様。』台本のようなもの。

タイトル『あるnoterの生き様。』


【黒地に白文字でテロップ】

――このnoteを見ている、あなた。
あなたが売るものは、なんですか?
あなたは、何を売りたいですか?

【テロップのみフェードアウト。黒背景中央に日付】

4月12日

【日付と黒背景フェードアウトし、ディスプレイ越しに主人公が登場。マウス片手にnoteの画面(裏返しで画面に表示)をスクロールさせている】

【ナレーション】
ふと思い立って、noteというSNSに登録した。
有料でいろいろなものを配信できるという。
さて、何を売ろうか。

【場面フェードアウト。再び黒背景に白文字で日付】

4月15日

【日付と黒背景フェードアウト。ディスプレイ越しに主人公が腕組みをしている】

【ナレーション】
いざなんでも売れる、と言われても、今の私に売れるものなど無いことに気づく。文章が書けるわけでもなく、絵が上手いわけでもなく、カメラの技術なんて欠片も持ち合わせていないのだから、そりゃ売れるものもないだろう。

【ここで主人公が部屋の背後を振り返る】

【ナレーション】
でも、何か売って金に変えないと、住むところすら怪しくなってきてる。食べ物だって来週には尽きるだろう。
なにか考えないと。

【場面フェードアウト。再び黒背景に白文字で日付】

4月17日

【日付と黒背景フェードアウト。ディスプレイ越しに主人公が楽しそうにキーボードでテキストを入力している】

【ナレーション】
いいことを思いついた。
『夢』を売れば良いんだ。

【場面フェードアウト。再び黒背景に白文字で日付】

4月18日

【日付と黒背景フェードアウト。ディスプレイ越しに主人公が自分のテキストノートを満足そうに眺めている】
【画面切り替え。テキストノートの本文をゆっくりとスクロール】

【ナレーション:客寄せ的な元気よさで】
私の左腕の元気を売ります!
 私の左腕(20代男性、健康そのもの)の”元気”を売ります!
 値段は500円とリーズナブル!
 一名様限定で、買ってくださった方は左腕が元気になります!
 買ってください!

【場面フェードアウト。再び黒背景に白文字で日付】

4月19日

【日付と黒背景フェードアウト。ディスプレイ越しに主人公が横になっている(この時点ではカメラからは見えない)】

【ナレーション】
朝、メールの通知音に起こされた。いつものように枕の左脇に置いていたスマホを右手で取り、そのままメールを確認する。
『購入されました』というnoteからのメールだった。

【主人公が慌てて起き上がり、片手(右手)でスマホをいじる(この時点ではカメラに写っている)】

【ナレーション】
慌てて起き上がり、そのままその相手のnoteをチェックする。
どうやら『左腕が先天的に動かないという子供を持つ父親』らしい人が、何故か購入ボタンを押したらしい。
そんなマジな人が、どうして私のあの明らかにジョークとわかるテキストを購入したのかさっぱりわからず、私はスマホを枕元に放り投げ――

【主人公がふと自分の左腕に目を向ける。※左腕は起き上がる前からだらりと垂れ下げておく】

【ナレーション】
――ようとして、そこでようやく気がついた。
左腕にチカラが入らなくなっていた。動かそうとしてもピクリとも動かない。触っても感覚がぜんぜん、まったくなくなっていた。

【主人公は驚きつつ、パソコンへと目を向ける】

【ナレーション】
そう。
まるで、『元気を失った』かのように。

【場面フェードアウト。再び黒背景に白文字で日付】

4月20日

【日付と黒背景フェードアウト。ディスプレイ越しに主人公がガックリと肩を落としている】

【ナレーション】
病院にも行ってみた。とりあえず何が原因かさっぱりわからなかったので、総合病院に行ってみた。
病院でいろいろタライ回しにされた挙句に、医者は「健康そのものですな。精神的なものが原因じゃないでしょうかね」という、要するに『原因は分かりません』と言っているようなセリフを平気で吐き出して来やがった。

【主人公が病院の薬の袋のようなものを手に取り見つめたあと、ふと右手でスマホを取り上げて画面を見る】

【ナレーション】
せっかくナケナシの生活費を浪費してまで行ったのに、左腕は相変わらず動かないままの私がパソコンの前でため息をついていると、例の父親が『左腕note』にコメントを書いたとnoteからお知らせが届く。何気なくそのコメント文を読んで、私は思わず変な声を上げそうになった。

【画面切り替え。スマホに表示されたnoteのコメント欄アップ】

『ありがとうございます!子供の左腕が『元気』になりました!動くようになったんです!』

【場面切り替え。主人公がスマホを3度見する】

【ナレーション】
「……は?」
三回読み返して、noteに行ってコメント欄も見たが、書かれている文章はまったく同じだった。

【ここで可能ならばスマホの画面に切り替え。左手を振る子供とその父親の写真が貼られたトークノートを2秒表示し、そこから子供の左手の部分のアップへとフェードイン】

【ナレーション】
わけも分からずその父親のnoteに行ってみた私が目にしたのは、嬉しそうな父親が子供を抱いている写真。
――元気に左手を上げて笑っている、子供の写真だった。

【場面フェードアウト。再び黒背景に白文字で日付】

4月22日

【日付と黒背景フェードアウト。ディスプレイ越しに主人公がディスプレイと自分の動かない左腕を交互に見つめている】

【ナレーション】
――本当に、売れたんだ。
私は動かない左手と、思わず保存した子供の写真と、そしてnoteの『ダッシュボード』の『売上管理』に表示された500円という数字を交互に見ながら、改めてその事実を確認し、そして――

【主人公が何かを思いつき、マウスをクリックする】

【ナレーション】
――また別の手を思いついた。

【場面フェードアウト。再び黒背景に白文字で日付】

4月22日

【日付と黒背景フェードアウト。誰かの手とスマートフォン。画面にはnoteが写っている。テキストのアップ。】

【ナレーション】
タイトル:わたしの左目の『元気』を売ります!
 前回に続いて、今度は私の左目の『元気』を売ります!
 目は大切なので、10万円で。
 買った人にちゃんと元気が届くのは、左腕で実証済みです。
 今回も、一名様限定!

【場面フェードアウト。再び黒背景に白文字で日付】

4月23日

【日付と黒背景フェードアウト。主人公がディスプレイの前で驚いている。左腕はだらんと垂れ下がり、左目が閉じたままになっている。ディスプレイには上記のnoteのコメント欄らしきものが写っていた】

【ナレーション】
……売れた。
今度もガチで左目が見えないってnoteに書いてた母親だった。
「ありがとうございます!息子の左目が……左目が!」
そんな母親の喜びのコメントを、私の左目は見ることができなくなっていた
そう。
左目も動かなくなったのだ。

【場面フェードアウト。再び黒背景に白文字で日付】

5月1日

【日付と黒背景フェードアウト。左目を閉じた主人公が左腕をかばうようにして考え込むようにしてディスプレイをぼんやりと見つめている】

【ナレーション】
動かない左手と見えない左目をかばうようにして、私はATMで残高を確認した。
間違いない。10万とんで500円から手数料が引かれた分がきちんと入金されていた。
とりあえず、これで今月はなんとかなる。
問題は来月か。
今度は何を売ろうかな?

【場面フェードアウト。再び黒背景に白文字で日付】

6月30日

【日付と黒背景フェードアウト。左目を閉じた主人公が左腕をかばうようにしてパソコンの前で財布の中を覗き込んでいる】

【ナレーション】
とりあえず在ってもなくても大丈夫そうな、左の肺と肝臓の元気を売り飛ばした。併せて100万円。
べつに手術するとか殺されるワケじゃない。機能しなくなるだけで誰かに感謝されて、しかも100万円もらえるなら、安いものじゃないか。

【主人公、ここで顔を上げてうっすらと笑みをうかべる】

【ナレーション】
とりあえず、これでしばらくは生活に困らない。
どうせひきこもりのニートなんだ。
もう、それだけで十分だ。

【場面フェードアウト。再び黒背景に白文字で日付】

8月15日

【日付と黒背景フェードアウト。左目を閉じた主人公が左腕をかばうようにしてマウス片手にパソコンを覗き込んでいる】

【ナレーション】
とうとう100万円が底をつき始めたころ、私は改めて左腕と左目と左の肺と肝臓を購入した人たちのnoteを読みに行った。
どの人も元気になった子どもや両親のことを喜んでいて。そして僕にすごく感謝をしていた。

【主人公、マウスを握りしめたまま天井を見上げる】

【ナレーション】
こんな僕に。就職も出来ず、バイトもクビになって、ひたすらnoteばかり見てる、こんな僕に。

【場面フェードアウト。再び黒背景に白文字で日付】

10月2日

【日付と黒背景フェードアウト。主人公がテーブルに突っ伏しつつマウス片手にパソコンを覗き込んでいる】

【ナレーション】
あれから僕は、まだ元気な身体の『元気』を切り売りしていった。『クリエイターへのお問い合せ』からメールを貰った人たちのリクエストに応じて、足の指から両耳から、嗅覚や味覚といった感覚まで切り売りしていった。
それも、最初のような高額な値段は付けずに。
翔ぶように売れた。僕のnoteには、たくさんの感謝のコメントが寄せられるようになった。それはもちろん、僕の身体の色んな所が動かなくなっていったということなのだけれど、僕はいっこうに構わなかった。

【主人公が突っ伏しディスプレイを見つめたまま、壮絶な笑み(お任せ)をうかべる】

【ナレーション】
五体満足で生きている僕と、こうやって身体が動かなくなった僕。どっちが世界のためになってるか、なんて、このコメントを見れば一目瞭然じゃないか
今の僕は、誰かの役に立てている。そのためになら、僕の身体なんて無くったっていい。
右手と右目と、考える脳だけあればいい。

【場面フェードアウト。再び黒背景に白文字で日付】

11月30日

【日付と黒背景フェードアウト。ディスプレイ越しに主人公の姿はない】
【さらに場面切り替え。主人公がベッドに横になっている。顔の下半分から上半身(布団に隠れている)だけの映像。布団からはみ出した右手にスマホが握られている】

【ナレーション】
とうとう、僕の中で『元気』なのは、右手と右目と脳だけになった。
そして、この3つとも、すでに購入希望者が揃っていて、僕はもうテキストを書き上げている。

【スマホのアップ。すでに電源は落ちている】

【ナレーション】
もう少ししたら書き上げたテキストノートが3つとも100円で公開され、おそらくすぐに購入が完了されるだろう。それでもう僕の身体のすべてが動かなくなるわけだ。

【再び顔の下半分に切り替え。※ここは娘さんに撮影してもらえると助かります】

【ナレーション】
でも、それでも、僕は満足している。
だって、僕の身体の中に無駄に溜まっていた『元気』が、その元気を欲しいと願っていた誰かの役に立ったのだから。

【可能であればここにフラッシュバック的な演出でこれまでの『購入者』の笑顔の写真が差し込まれるとなおよい】

【ナレーション】
だから、後悔していない。公開はするけどね――なんてね。
【ナレーション】
それじゃ、バイバイ。

【ここで主人公がうっすらと笑みをうかべ、そのまま暗転】

【2秒間の暗転ののち、エンディング曲とともにテロップが入る。そのままエンドロールに】

(12月2日の新聞より) 1日の午後1時頃、○○区○○町にあるアパートの一室から男性の死体のようなものが発見された事件について、本日搬送された中央病院の田中医師の会見が行われた。 会見によると、その男性は『神経を除く』全ての身体機能がストップしているという奇異な状態で発見されたらしく、現在の医療技術では的確な治療法は存在しないとの――



初めて台本なんて書いてみたので、正直自信はないんですけど、服部さん、林さん、イケますか?ご確認よろしくお願いいたします。

※ちなみに上記のト書きの演出表現については、必要な映像さえゲットできれば、あとは基本的にはこちらでやりますが、ラストの映像については一人では厳しいと思われるので、できれば協力してもらえる人をお願いできればと思います。KoKoさんとか可能かしら?

※演技についての細かな部分は原則丸投げさせてもらいます(笑)いちおうト書きにはそれっぽいこと書きましたけど、あくまで目安ってことで。

動画もしゃべりも未熟な私ですが、何か琴線に触れるものがありましたら、ぜひサポートお願いします。