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noteアドベントカレンダー2016 サンタさんプレゼンツ『鬼が島の聖なる夜』

ども、かーるです。
いやあ、実は先日、 #noteアドベントカレンダー2016 でドタバタしてる私の前に、とあるサンタさんが迷彩服姿で片手にエアガン、もう片方におっきな白い袋を持ってさっそうと現れまして。

「よう、なんか大変そうだな。ほら、プレゼントやるから頑張んな」

ってんで、こんな作品をプレゼントしてくださったんですよ。
ほんとありがとうございます、サンタさん(*´▽`*)


というわけで、本日のnoteアドベントカレンダー2016は、このあとアップされるであろうぶんちゃんののnoteと合わせて、サンタさんからのプレゼントを皆さまにお贈りしたいと思います。ぜひぜひお楽しみくださいませ(⌒∇⌒)

noteアドベントカレンダー2016
サンタさんpresents
『鬼ヶ島の聖なる夜』


これはとあるおとぎの国の物語。

 俺たちの乗っていたボートは大波に飲み込まれて転覆寸前だった。
 大荒れの海。こんな時にだけ、ヤツは現れると言う。

「来た!」

 船長の一声で俺たちの意識は一瞬でそこに集中する。
 海から現れる黒い影、それはまさに暴力のかたまりだった。
 黒い影がボートに襲いかかる。
 オンボロボートはその一撃だけで大きく傾いた。
 このままではボートが転覆し、俺たちは大荒れの海に投げ出されてしまう。
 だが、そんな今こそが最高のチャンスだった。

「放て!」

 船長が叫び声をあげる。同時に俺たちはヤリを黒い影に向けて突き出した。黒い影の表面から血が吹き出し、鈍い悲鳴が響く。

「第二撃!」

 再びあがる船長の声。俺たちはトドメを刺すべく渾身の一撃を黒い影に食らわせる。
 黒い影は抵抗し、俺たちに向かい鋭い歯を突き立てた。
 このままだと食われる! そう恐怖した次の瞬間、船長が渾身の一撃を黒い影に食らわせた。
 バケモノの悲鳴が海を支配する。
 黒い影、人食い大ザメはこうして絶命した。

「これが外国の船乗りと体験した、人食い大ザメとの話だ」
「いやあ、紫の話は凄いなあ。やっぱり外国に行った事のあるやつは、未知の経験をしているんだなあ」

 僕はそう感嘆の声をもらした。

 ここは鬼ヶ島。
 僕ら善良で田舎者な鬼にとって、紫こと紫鬼の外国へ行った話はまさに貴重なものだった。

「他には何か話ないのー?」
「そうだな、あとは牛と一騎討ちした話とか」
「戦う話ばっかりで飽き飽きなのー」

 紫に対して黄が不満を述べる。
 僕は戦う話も好きなんだけどな。でもそれ以外の話も確かに聞いてみたい。

「そうだな、それじゃあクリスマスの話なんてどうだい」
「クリスマスってなに?」
「おっ、早速赤が食いついてきたな」

 紫の言葉に、僕はえへへと照れ笑いを浮かべる。

「クリスマスってのはイエスキリストの生誕を祝う外国の祭りだ。鶏肉を丸ごと焼いて食べたり、贈り物を交換したり、クリスマスツリーって言う、もみの木に飾りつけした物を用意して、賑やかに楽しむんだ」
「鶏肉の丸焼き、美味しそうなのー」
「黄は食い物の事になると目の色が変わるな」

 紫が笑い声をあげる。対して僕は気になっている事があった。

「それで、そのクリスマスってのはいつやるのかなあ」
「ああ、冬だよ。十二月の二十五日、あと一ヶ月くらい先の話だ」
「それじゃあこの鬼ヶ島でも、クリスマスをやってみたいなあ」

 イエスさんの事はよくわからないけれど、クリスマスはとても楽しそうだ。だから僕は純粋にクリスマスを祝ってみたいと思った。

「賛成なのー。鶏肉の丸焼き食べるのー!」
「そうだな、鬼ヶ島でクリスマスを祝うのも悪くないかもしれないな」

 黄と紫も賛成してくれる。そこに洞窟の方から声が聞こえてきた。

「おーい、昼飯の時間じゃぞー!」
「青のじいさん、クリスマスやる事になったから後で手伝ってくれ」
「クリスマス? なんじゃいそれ?」

 青が不思議そうな顔をするので、紫は再びクリスマスの説明を始めた。

「クリスマス、楽しみだなあ」

 鬼ヶ島でお祭りなんて滅多にない。僕はわくわくして仕方なかった。

 それから僕らのクリスマスパーティー開催計画は始まった。
 まず鶏肉の丸焼きを作るべく、鳥を捕まえる。これは普段からやっている事だから、いつも通り鬼ヶ島の森に罠を仕掛け、簡単に捕まえた。
 贈り物の交換は各々で自由に準備する。僕は海岸に転がっている貝を使って、装飾品を作った。みんな喜んで身につけてくれるといいな。そう思いながらみんなの分だけ装飾品を作っていく。
 もみの木に関しては、こちらも森に行き適当な木を切り倒して運んできた。木には貝殻やヒトデ等で装飾をしていく。これで紫が言うところの立派なクリスマスツリーだ。

 準備と共に時間も過ぎていく。
 クリスマスの日はあっという間にやってきた。

「うわあ、キレイに仕上がったなあ」

 普段は殺風景な鬼ヶ島。でも今日はクリスマスだけあって、どこもかしこも飾りつけられ、とてもキレイだ。

「さあ、クリスマスパーティーを始めようか」

 僕らはそれぞれのさかずきにお酒を注ぎ、一斉に乾杯しようとする。

「それでは」

『メリークリスマ……』
「やいやい鬼ども! この桃太郎さまが鬼退治に来てやったぞ!」

 突如現れた乱入者に、僕らは目を丸くする。
 そこにはこの鬼ヶ島にいるはずのない、人間の姿があった。

「あれって人間だよなあ?」
「ああ。若い青年じゃな。赤は人間を見るのは初めてじゃったか」

 青の問いかけに頷く。僕は鬼ヶ島から外に出た事がなくて、本物の人間を見るのは初めてだった。
 人間、桃太郎さんは他に犬、サル、キジを連れていた。みんななんでか、こちらをにらんでくる。

「あの、鬼退治ってなんなんだなあ?」

「鬼退治は鬼退治に決まっておる! 成敗じゃ、覚悟しろ!」

 僕は鬼退治という言葉の意味がよくわからなかった。それは他の鬼も同じようだ。オニタイジ、一体何が目的なんだろう。数秒考えて、ハッとひらめく。

「なんだ、クリスマスパーティーのお客さんだったんだなあ。それならこちらへどうぞなんだなあ」

 桃太郎さんの手を握り、酒宴の席へと連れて行く。さかずきを用意すると、僕は桃太郎さんにお酌をした。

「さあさあ、乾杯するんだなあ」
「ちょっと待て、だから俺は鬼退治に……」

『メリークリスマス!』

 みんなで乾杯をして、一気に酒を飲み干す。冬の寒空の下、酒を飲むと体が一気に温まり、とても気持ちよかった。

「美味しいんだなあ。ほら、桃太郎さんも」

「ふざけるな!」

 お酒を勧めようとすると、急に桃太郎さんが怒り出した。それに僕らは訳がわからずア然とする。

「俺は鬼退治、お前達を殺しに来たんだ!」
「殺しに? なんで僕たちなんだなあ?」
「それは、お前らが悪い鬼だからだ」
「悪い鬼? 僕らが?」

 この場にいる紫や青に視線を向ける。しかし二人とも首を横に振る。

「それはきっと、何かの間違いなんだなあ」
「それじゃあ金銀財宝を村人から奪い取ったのはなんでだ!」
「ああ、その事か」

 桃太郎さんの言葉に紫が反応する。

「なんじゃ、紫何か知っておるのか」
「鬼ヶ島に帰る途中、何度か人間と出くわしてな。それであいさつしたら、みんな急に怯えて金だけ置いて逃げるんだよ
「暴力で奪い取ったの間違いだろう!」
「だから俺はあいさつしかして無いんだって」

 桃太郎さんの言葉に紫は困ったような顔をする。次第に桃太郎さんも何かがおかしいと気づき始めたようだ。

「それじゃ、村の女をさらったと言うのは?」
「ああ、それはワシじゃ。間違いない」
「やっぱりお前は悪い鬼じゃないか!」
「勘違いせんでくれ。人間の村に行くと、どうもワシは若い女子から好かれてな。それで恋人関係になって、鬼ヶ島に連れて来た事もあったんじゃ。まあ、若い頃の話じゃがな」

 確かに、青が若い頃とても端正な顔つきで、鬼どころか人間の女性にすら好かれたという話は聞いた事があった。それが何かの間違いで、鬼が女性をさらったという話になったのであろう。

「そ、それじゃあお前ら、本当に悪い鬼じゃないのか?」
「最初からそう言っているんだなあ」

 僕の言葉に、桃太郎さんが困ったような顔をする。
 そこに犬とサルの二匹が急に鳴き声をあげた。

「なんだお前ら。……なに、キジが鬼に捕まった⁉︎」

 桃太郎さんが僕らを見つめる。僕は紫と青を見て、お互いに首を横に振りあった。だがすぐ、この場に黄がいない事に気づく。

「まさかあのバカ、キジをローストチキンにするつもりか!」

 紫さんが走り出す。それに続いて僕や桃太郎さんは駆け出した。

 ケーン、ケーン。
 そんな悲鳴が近くから聞こえてくる。鬼ヶ島の洞窟に行くと、今まさに黄がキジを調理しようとしている真っ最中だった。

「貴様ら、よくも俺のお供を!」

 桃太郎さんが怒りで顔を赤くする。当然の事だろう。
 僕は黄のところまで行くと、頭をゲンコツで一発殴った。

「痛いのー! 何するのー!」
「お客様を料理しようなんて、ダメなんだなあ。桃太郎さんに謝るんだなあ」
「でも」
「謝るんだなあ!」

 僕が声を荒げると、黄はビクリとして、それから申し訳なさそうに桃太郎さんに向き直った。

「ごめんなさいなのー」

 黄が頭を下げる。続けて青が黄の横に並んだ。

「こいつはまだ幼くて、物の分別がついとらんのじゃ。許してもらえんかのう?」

 青が頭を下げる。続けて僕と紫も頭を下げた。

『桃太郎さん、ごめんなさい』

 僕らが謝罪の言葉を口にすると、桃太郎さんは明らかに動揺しているようだった。

「お前達、本当に悪い鬼じゃないのか」
「人間たちに対して悪さをした事はないんだなあ。そもそも人間と会ったのが、生まれて初めてなんだなあ」

 いよいよ桃太郎さんは言葉を失い、ため息をつく。

「なんか毒気が抜かれた気分だ」
「桃太郎さん、良かったら改めてクリスマスパーティーに参加して欲しいんだなあ。お詫びも兼ねてぜひ、お願いなんだなあ」
「……わかった。そのクリスマスなんちゃらに参加するよ」

 その一言に僕らは歓声をあげる。さあ、改めてクリスマスパーティーを始めよう。

「だからね、うちの村は貧乏で。俺がたまたま人より体格が良かったからって『鬼ヶ島で悪い鬼から財宝を奪ってこい』なんて言われて。たまったもんじゃないですよ」
「お前も苦労してるんだな。ほら、もっと飲めよ」
「すんません」

 あれから酒を飲み始め、すっかり桃太郎さんは酔っ払ってしまった。
 桃太郎さんの愚痴を聞きながら、紫がお酌をする。僕らは桃太郎さんの話にすっかり夢中になっていた。

「鬼ヶ島の鬼は悪者だって聞いていたけど、全然ウソじゃねーか。むしろみんないいやつだし」
「人は自分が知らない者を恐ろしい者だと考えやすいのじゃ。それはもちろん鬼にも言えた事じゃがな」
「そういう言葉も、村人からは一切出てこない! 村人はただ、鬼が怖い。だからお前が退治しろって」
「桃太郎さん、可哀想なのー……」

 なんだか場がしんみりしてしまった。どうしたものか。その時、僕はある事を思い出した。

「そうだ! 贈り物交換をするんだなあ。そしたら桃太郎さんも元気になるんだなあ」
「贈り物交換?」
「クリスマスパーティーの余興だ。みんなで贈り物を交換し合うんだ」

 それから僕らは各々用意した贈り物を取り出した。贈り物をそれぞれ見せ合う。

「僕は貝殻で作った飾り物なんだなあ」
「森で採ったキノコの詰め合わせなのー」
「俺は人間の世界で手に入れた絵本だ」
「ワシからは特製の酒じゃ」

 各々が贈り物を渡していく。

「あっ」

 だけど、途中で僕は気づいてしまった。
 そう、僕らは鬼ヶ島の住人の分は贈り物を用意したけど、桃太郎さんには何も贈り物がない事を。

「どうしよう、俺も渡せるような贈り物がない」

 桃太郎さんがしょんぼりと落ち込んでしまう。一体こういう時どうすればいいのか。
 その時、紫がひらめいたように指を鳴らした。

「桃太郎さん、とっておきの贈り物がまだありました」

 それから僕らは鬼ヶ島の裏手に回った。そこには小さな洞窟があり、その奥にはある物が眠っている。

「これは!」
「さっきも話したでしょう? みんな鬼に会うと金を置いて逃げるって」

 そこに置かれていたのは、金銀財宝の山だった。

「一応預かっていたものだけど、もう返しようがないし。だから桃太郎さんにあげるよ」
「本当にいいのか?」
「村が貧しいんじゃろう。村のために役立てるんじゃな」
「これが僕らからの贈り物なんだなあ」

 なんていう素晴らしいひらめきだろう。僕は紫に感謝したかった。
 そして同時に僕もある事をひらめく。

「それで、僕らからは桃太郎さんにあるものを贈って欲しいんだなあ」
「贈って欲しいもの?」
「村の人に『鬼は怖くないよ』って伝えて欲しいんだなあ。それが僕らにとっての贈り物なんだなあ」

 僕の言葉に、桃太郎さんが目に涙を浮かべる。それを腕でゴシゴシこすると、桃太郎さんは真剣な表情で僕に問いかけてきた。

「お前、名前は?」
「赤なんだなあ」
「それはあだ名なのー」

 黄の一言を聞き、僕はそうだったと舌を出す。

「僕の名前は三太なんだなあ」
「三太か、覚えたからな」

 そう言って、桃太郎さんは満面の笑みを浮かべた。

 それから僕らは夜通し酒を飲み、クリスマスパーティーを楽しんだ。
 世が明け、いつしか寝ていた僕らが目覚めると、そこには桃太郎さんは居なかった。

「クリスマスパーティー、楽しんでもらえたかなあ?」
「きっと楽しんでくれたさ」
「そうなのー」
「これがキッカケで、鬼と人間の仲が良くなるといいのう」

 僕らは桃太郎さんに希望を託し、クリスマスパーティーの片づけを始めた。

「見ろ、この山のような金銀財宝! これはクリスマスパーティーで贈り物交換してもらったものだ。クリスマスパーティーってなんだって? みんなで酒を飲んで祝うんだよ。何を祝うのかはわからないけどな。鬼ヶ島にはな、優しいやつらがたくさん居るんだ。例えば、赤い格好をした『サンタ』とかな

おわり

はい、というわけで、お楽しみいただけましたでしょうか?
ほんとありがとうございました、サバゲ―好きなサンタさん!


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かーる
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