ダメになる会話「スルー」
ミサコ「ねえねえ、車買うんだって?」
マサル「仕事で必要になってね。今は何色にするかで迷ってるところ。」
ミサコ「じゃあ無難にショッキングピンクかシャンパンゴールドにしたら?」
マサル「君は『無難』の意味を辞書で調べた方がいいな。」
ミサコ「辞書だって。今は『ぐぐれ』っていうんだよ。おっくれてるう~。」
マサル「『おっくれてるう~』もたいがい古くないか?」
ミサコ「それよりどんな車にするの?装甲車?坑道掘削車?」
マサル「どこに行くつもりだ。普通の乗用車だよ。」
ミサコ「えー、なんかガッカリでござる。」
マサル「勝手に変な期待をするからだ。」
ミサコ「どうせ買うなら映画にでてくるようなヤツにしようよー。」
マサル「映画にでてくるような高級車なんか無理だよ。」
ミサコ「ロボットにトランスフォームするヤツだよ!」
マサル「それ映画の中だけだから。売ってないから。」
ミサコ「彼らははるか遠いセイバートロン星からやってきた超ロボット生命体で、正義を愛するサイバトロン軍と悪をよしとする…」
マサル「そんな説明はいいから。変なこと詳しいな。」
ミサコ「21世紀になって久しいというのに車ひとつ変形できやしない!」
マサル「俺に言われてもなあ。」
ミサコ「でもさ、今って大抵の事をCGで先にみちゃってるから、現実でみても驚けなさそうだよね。」
マサル「そうか?」
ミサコ「その辺の車が急に変形してるの見ても、『ああ、また車がロボットになってら。』でスルーしちゃいそう。」
マサル「なるほど、なんとなくわかるな。」
ミサコ「だから昨日はばったり宇宙人に会ったんだけど、『また宇宙人か』て思ってスルーしちゃったよ。」
マサル「宇宙人ネタの映画はかなり乱発したからなあ。」
ミサコ「やりつくした感じだよねえ。いまさら新しいアイデアってのも難しいだろうし。」
マサル「『E・T』あたりが一番夢があった気がするなあ。」
ミサコ「そうだねー。」
マサル「あれ…何か大事なことをスルーしてしまった気がする。」
ミサコ「車のこと?」
マサル「そう…かな?」