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カフェ・ド・クリエ

私は病院で働いている。

ほとんどの同僚はランチタイムを狭い休憩室で過ごしているが、私はなるべく一人でいたい派だ。なるべくというより、絶対かもしれない。
これは性格上しょうがない。

外に食べるところもないので、必然的に院内のカフェ・ド・クリエに行くのが日課となっている。

ここのアールグレイが好きだ。
程よいカフェインが脳を刺激して、少しだけ気持ちがスッとする。

職員だと5%割、チャージできるカードを使うとさらに5%割だと聞き、働き出して早々にカードを作った。

その2日後、いつものようにレジでカードを差し出したが、なにやら店員がレジでもたついている。どうやらカードが読み取れないらしい。

(いやいやいや・・・使ったのたった2回なんですけど・・・)

店員がカード裏の番号を手入力して、その日は支払いができたが、明くる日。

別の店員が同じ動作をしている。

首をかしげながら「お客様ー、このカード、磁器がダメになっているみたいでぇ、次回残高がなくなったら、店員にこのことを伝えてもらってー、新しいカードにしてもらってくださぁい」

いまいち納得できないがこのカードが不良品なのだろう。
次の日に店員に伝え、気分も変えるために別のデザインのカードを作った。

数日後。

「お客様、、、このカードは磁気が弱くなっているようで、、、もしよろしければスマホで使用できるアプリがございまして、、、カードのチャージ分移行できますので、、、よろしければ、、、」
と店長らしい男性が冊子を渡してきた。

無言で冊子は受け取ったが、これにはカチンときてしまった。

店側の都合で2度も面倒な手間をさせられるくらいなら、もう来るのをやめるべきではないか、、、、、いやいや、、、ここしかゆっくりできるとこないし、、、

静かなランチタイムを人質に取られてしまった。

・・・大体余計なアプリをスマホに入れたくないのだ。
必須アプリならともかく、氏名だの電話番号だのメールアドレスだの、安売りしたくない。

同僚の賛同を得て、私はアプリは入れない方針で何食わぬ顔で支払い時にカードを差し出すことにした。

店員はカードが読み取れないことに首を傾げながらも、皆裏のカード番号を入力し、支払いは済んでいた。

数日後、支払いを済ませ席で待っていると、中年の女性店員がこちらに近づいてくる。
「お客様~。先ほどはレジでお待たせして申し訳ございませんでした。よろしければ・・・

何かくれるのかと思って一瞬彼女の手元を見てしまった。

・・・アプリがございまして、こちら案内なんですけど、お金も移せますし、こちら入れていただければお待たせもしないので、ご検討ください」

一礼して去っていった。また冊子だ。

わざわざ席まで来て告げに来るなんて、よほど迷惑な客だと店員の間で噂だったのだろうか。。

これには少し参った。警告のように聞こえてしまったのだ。

今回のことは同僚には話す気になれなかった。

次第にごちゃごちゃ考えている時間がばかばかしくなり、結局その日の夜にアプリを入れた。

意外と簡単だったうえに、余計なカードを持ち歩かなくて済む。
うむ、良かったではないか。
大体毎日通っているなら「必須アプリ」だったのでは??
つまんないこと考えないでさっさとやれば良かった、アホだな私は。

次の日からお会計がノンストレスになった。
店員さんも楽そうだ。

アプリを起動させる手間はあるけれど、、、

まぁ、、いいか。。。

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