女の子らしい娘
3歳の娘が、どんどん女の子らしくなる。
ピンクが好きでワンピースが好きでおもちゃの指輪とネックレスが宝物。お化粧ごっこをして遊び、髪をかわいく結ってとねだり、大きくなったらお姫さまになりたいと言う。
不思議だ。
私は、娘に「女の子はピンクだよ」なんて教えたこともないし、スカートやリボンやフリフリを積極的に与えたおぼえもない。「女の子なんだから」みたいなことも言っていないし、夫も同じだ。保育園も「男の子らしく」とか「女の子らしく」なんて感じじゃない。
なのに、娘はどんどん女の子らしくなっていく。
妊娠したぐらいの頃から、ずっと「性別なんかに関係なく、この子の個性を受け入れてやろう」と考えていた私は、「え?」と思った。「え?そっち?」って。
女の子らしくなくたってかまわない。電車を好きになっても、怪獣を好きになっても、ズボンしかはかなくても、どれだけやんちゃでもいい。誰かが「おかしい」と言ったって、ママはちゃんと受け入れてあげる。そう思ってたのに。
娘は、女の子らしくなった。
それならそれでいいはずだ。だから、私は、ピンクを選ぶ娘に「よく似合う」と言う。スカートをつまんでおじぎをする娘に「可愛い」と言う。ワンピースを着て「おひめさまみたい?」と聞く娘に、「おひめさまみたい。すごく素敵」と返す。
だけど、時々、ロボットの絵が描かれた青いシャツを買ってあげたりする。そして、「お花のほうがいい」と言われて、ちょっとがっかりしながら、謝ったりする。
たぶん、私は、あこがれていたんだと思う。ちょっとだけ、女の子っぽくない女の子に。それから、ほんのちょっとだけ「普通」じゃない娘を受け入れる母親に。
別に悪いことじゃないかもしれないけれど、気をつけなくちゃいけないなとは思う。それは、ただの私の趣味だから。「私が何でも受け入れてあげるって思ってるんだから、受け入れがいのある娘になりなさい」と、私の気持ちを押しつけちゃいけない。それは、とっても、ひどいことだ。私にそういう性質の芽があるのなら、それを忘れちゃいけない。
そして、「性別なんて関係ない」と思いながら、「女の子らしさ」とか「男の子らしさ」とかから、ちっとも自由になれていない自分のことも。
飛行機のおもちゃや、昆虫の図鑑や、ヒーローになれるベルトを「いいな」と思うなら、私が自分で遊べばいいのだ。
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8月10日(金)から、コノビーで、連載小説「娘のトースト」がはじまります。
思春期の娘とその母親の物語です。
テーマのひとつにしているのが、「子どもの個性を受け入れること」です。
私の娘はまだ3歳で、主人公の母親と私では、抱える問題や悩みの種類もちがうとは思いますが、子どもの個性に、期待したり、驚いたり、悩んだりするのはおんなじだろうなと考えながら、書いています。そして、それは、子どもに対する話だけでもないだろうな、とも。
ということで、連載がはじまるというのに、まだまだもがきながら書いている最中なのですが、ぜひたくさんの方に読んでいただけたらと思っています!よろしくお願いします!
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