酒日記
私は酒が好きである。
でも、いわゆる酒豪ではない。そんなに量は飲めない。好んで飲むのが度数の高い酒ばかりなので、強いように見られるが、そうでもないと思う。
まあ、弱くはない。しかし酔うためだけに飲む、というのでもない。
酔う感じはちょっとは味わいたいが、それより何より、酒の味・香り・色・あとはボトルやラベルに至るまで酒が好きなのだ。
酒に関して、なんとなく自分の中に決まっているルール。
1・吐かない 2・つぶれない 3・ペットボトルに入った酒は飲まない
1・2については、つまり自分の今日の適量を見極めて、吐いたりつぶれるまで飲まないってことなんだけれど、その理由は「もったいないから」である。一度飲んだ酒を吐くなんて、もったいない。
それと、つぶれてしまっては味も香りもわからないので、もったいないし旨い酒に申し訳ない。
3については、せっかくの愉しみが減っているから。
ボトルとかラベルを眺める愉しみがない、2リットルとかのペットボトルはどうも無粋だ。
しかし、これは単なる個人的嗜好に過ぎないから、ひとが飲んでるのをどうこう言うつもりもないし、もしそれを一緒に飲む機会があって勧められれば気持ちよく飲む。
酒そのものが好きなので、飲む場所も結構どこでもよかったりする。誰かといっしょでも、ひとりでも。
バーが好きだけれど、焼き鳥屋でも立ち飲み居酒屋でもいいし、ファミレスで1杯100円のワインを飲むこともある。家でゆっくり椅子に掛けてでも、台所で立ったまま窓の外を眺めながらでも。
大佛次郎(おさらぎ じろう)の「冬の紳士」という小説がある。
ある小さなバーから始まる物語で、冬の紳士と呼ばれている初老の男性が主人公。戦後昭和のバー文化に関する描写がとても魅力的なのと、この「冬の紳士」の行動、思考、佇まい、何もかもが、今どきのその辺の若い男は全く敵わないほど格好いい。
何度も読んだお気に入りの小説なのだけれど、この紳士が好きだというよりも、私はこのようなひとになりたい、という憧れ。
昔から甘くてかわいいカクテルは苦手だった。「酔っちゃったみたい」なんて言える場面は絶対無かった。そもそも相手より先に酔わないし(笑)
私の中身はやはり、単に酒飲みのおじさんなのかもしれない。
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