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播磨陰陽師の独り言・第四十七話「美味しいご飯」

 大阪市の北に、柴島くにじまと呼ばれるエリアがあります。この柴島はかつては島でした。なぜ〈国島〉と書かずに〈柴島〉と言う字を書くかと言うと、柴が採れたからです。
 昔話の中に、

――お婆さんは川へ洗濯に、お爺さんは山へ柴刈りに……。

 とありますが、この〈柴刈り〉はクヌギの木を刈りに行ったのです。
 大阪の柴島は、柴としてクヌギの木を刈る島なので〈柴島くぬしま〉と呼んでいたものが、やがて〈柴島くにじま〉と変化して行ったた訳です。
 しかし、このクヌギ、いったい何に使うのでしょうね?
 毎日、使う必要があったため昔話にも描かれているのです。クヌギの薪は竈門かまどでご飯を炊く時に使います。他のまきでも炊けますが、クヌギで炊くと美味しくなるそうです。
 以前、〈おかいさん〉のことを書きました。
 覚えてますか?
 おかいさんは、和歌山県が、まだ紀州藩だった頃に生まれた〈茶粥〉の呼び名です。
 多くの資料には、

――紀州藩では年貢の取り立てが厳しく、農民達が、少ない米で食いつなぐため、茶粥にして食べた悲しい歴史を持つ食べ物。

 と言うようなことが書いてあります。
 この歴史は悲しいかも知れませんが、だからと言って、毎朝、茶粥を食べるたびに悲しんでもいられません。不味い食べ物は、食べ続けのことが出来ないのです。朝ごはんとしての〈茶粥〉を美味しくする工夫、その前に、晩ごはんもお米を食べるのです。
 昔は、一日二食と言う説もありますが、晩ごはんは食べていた訳です。晩ごはんをもっとも美味しく炊くには、お米の粒の大きさを揃え、欠けたお米を取り除く必要があります。そこで取り除かれたお米は、欠けた物や粒の小さな物ばかりです。粒の小さなお米は、あえて砕き、すべてのお米の断面積を大きくすると茶粥に適したお米になるのです。茶粥の茶の味が染みて早く出来上がる。つまり、燃料を少なくするためには、お米の断面積を大きくする必要があるのです。そうやって、晩ごはんも、朝ごはんも、美味しく料理したのではと思う次第でありました。

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