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播磨陰陽師の独り言・第二百五十八話「モーニングセット」
事件屋をしていた頃、朝と言えば喫茶店でモーニングセットを食べていました。色々な喫茶店へ行きました。中でもオジキのお気に入りは、パンとコーヒーと、なぜか味噌汁のセット。ここで味噌汁を飲むのは仕事の前の儀式のようなものでした。
パンやコーヒーの味は普通でした。しかし、味噌汁は美味かったなぁ。奥まったところにある小さな喫茶店でしたが、毎日、常連客ばかり。しかも繁盛していました。
モーニングと言えば、パンが食べ放題の喫茶店もありました。
カフェほどおしゃれではなく、パン屋さんの店先で食べるような簡単なものでもなく、必ず喫茶店に通っていました。場所が時々変わるのは、仕事の現場に近い場所を選んでいたからです。
時には現場が遠くって、行ったことのない喫茶店でモーニングを食べたこともありました。コーヒーは、そんなに飲まなかった方なので、この時ばかりは、かなり飲んでいました。それまではコーヒーと言えば缶かインスタント。はじめてコーヒーを飲んだのは中学生くらいの頃だったかな。苦いだけの味でした。それから何度かインスタントコーヒーを飲みました。しかし、本格的なコーヒーを飲みはじめたのは大人になってからでした。大阪で事件屋の仕事を手伝うようになってからのことです。
現場は朝早いことが多く、どこもはじめて行く場所でした。喫茶店でモーニングを食べたのに、また、別な喫茶店へ行くこともありました。新しく行った喫茶店は、事件屋関連の人々が集まる場所でした。怪しげな書類を取り引きしたり、紙袋に入った大量の現金を、さりげなくやりとりしていました。
休みになった建築現場へ行くことも多かったです。雨が降ると休みの場合があり、その時を目指して集まるのです。そして、生コンを打つ前の型の中に、色々な物を捨てていました。たぶん、現場の人たちもグルだとは思いましたが……。
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