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播磨陰陽師の独り言・第十九話「漫画の本」

 はじめて買ってもらった漫画の本は、母親のセレクトで楳図かずおさんの恐怖漫画でした。何でも良いので漫画を読みたくなって、何度も母に言ったのですが、いつも、
「忙しい」
 と言われていました。
 それがある日、
「本屋さんによった」
 とのことで、なぜか梅図漫画を買って来たのです。
 母が言うには、
「表紙の絵が可愛らしかったから、中身を見ずに買って来たよ」
 どこがどう可愛らしかったのでしょう?
 フランケンシュタインばりの人造人間が人を殺しまくる漫画でした。子供心にかなり怖かった思い出があります。最近になってタイトルを調べると『ひびわれ人間』とありました。懐かしいですね。
 結局、母は漫画を読まないので、何でも良かったのだと思います。または、もう二度と漫画を望まないように、わざと怖いものを買ったのかも知れません。それほど怖い漫画でした。
 それがトラウマになったかと言うと、そうではありません。現実世界でもっと怖いものを知っていたので、その後、図書室で楳図漫画ばかりを読んでいました。特に『漂流教室』がお気に入りでした。
 梅図漫画を卒業すると、次は『恐怖新聞』にはまりました。それから『エコエコアザラク』を読んで、最後に手塚漫画を読みはじめたのです。
 普通なら、
――最初に手塚漫画を読むのだろう。
 とは思いました。しかし、現実は違っていたと言う訳です。
 成長するに従って、恐怖漫画の世界に描かれている化け物や幽霊の類が、現実のそれとは違うことを知りました。その頃かなぁ、恐怖漫画と呼ばれるものや、テレビの恐怖物をコメディ感覚で見るようになったのは……。

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