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祈りのカタログ・第十四話「古語しか通じない」

 祈りはどうやって届くのでしょうか?
 祈りの書式を踏まえた後、所定の祈りの手順で祈って、はじめて祈りの内容が指定された所へ届きます。それ以外の方法では届きようもありません。
 では、その祈りはいったい何に、あるいは、どこに届くのでしょう?
 もし〈神〉に祈るなら、その祈りは神に届きます。もし〈仏〉に祈ればその祈りは仏に届きます。しかし実際は神仏に届く前に〈祈りを聞くもの〉の耳に届き、その後、祈りの内容が選別されて最終的にしかるべき場所へと配送されるのです。
 何だかこう書くと、荷物でも届けるような感じがします。しかし〈祈り〉はまるで荷物のような配送システムを持っています。これは、まぁ、そう言う風に仮定するならばと言う意味ですが、このような考え方をすると理解しやすいと思います。

 人が心から祈る時、まず、その祈りの内容は〈無視〉されます。祈りの書式や手順だけで届けるかどうか選別されるのです。
 これを荷物だと仮定すると、コンビニに荷物を持ち込んで、レジの人に、
「どうか、この荷物を届けてください」
 とだけ言っても、
「この書類に記入してください」
 と言われ、すぐには届けてくれません。
 所定の書類に記入し終えると、次は書類の確認をして内容を聞かれ、最後に料金の請求が来ます。
 祈りもこれと同じような形式です。しかし、祈りの場合は、ちょっとだけ内容が異なります。どこが違うのかと申しますと、たとえば、
「どうか、この願いを届けてください」
 と祈ったら、その多くは無視されます。
 そして、まるで、
「祈りの言葉の形式が違いますので、言い変えてください」
 と言わんばかりに、向こうの存在が、人には聞こえない声でブツブツとつぶやきます。
 しかし、所詮しょせんは人には聞こえませんので、
「なぜ、祈りが届かないのだろうか?」
 と、理由も分からないことが多いのです。

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