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播磨陰陽師の独り言・第三百六十四話「虫たちの声を聞く」

 最近、わが家のお風呂場にコオロギが入りこんだようで、壁に反響して大きな鳴き声が聞こえます。元々、お風呂場は庭に面していて、窓を開けると虫が入って来ます。いつもは網戸を閉めていますが、いつの間にか入っていたようです。
 庭にいる虫は主にコオロギとキリギリス。スズムシも鳴いて欲しいですが、残念ながら聞こえません。どこかで買って、庭に放そうかなとも思っています。毎年秋になると、虫の鳴き声を楽しみにしています。環境音として楽しんでいるのです。
 環境には、それに相応しい音が必要だと思います。無音の環境は味気なく感じます。春には春の、夏には夏の自然の音があります。音楽をかけるのも良いですが、擬似的な自然音の方が赴きがあって良いと思います。
 わが家の庭は、ここ数年、鳴く虫の種類が少なくなっています。虫が少なくなると、やって来る鳥たちも少なくなります。この現象は、何もわが家に限ったことではありません。年々、小さな生き物の種類が減っているようです。これらは環境が悪化したせいです。毎年のように世界の環境が悪化しています。
 中国では旱魃でかなり広範囲の水不足が起きています。
 一方、パキスタンでは国土の三分の一が水没したそうです。ちなみにパキスタンは、わが国の二倍の面積です。
 ヨーロッパでも、旱魃で川が干上がって、川底から恐竜の足跡が発見されたそうです。
 このようなことは、かつてなかったことです。それに従って、鳴き声をあげる生き物たちの種類が変わりました。それだけではなく、たとえば北海道の沿岸でれる魚の種類が変化して、漁師たちは魚図鑑を見ながら漁をしているそうです。見たこともない魚が、たくさん漁れています。
 夏は暑くなりすぎて、この先、冬はどうなるのでしょうか? 案外、暖かくなるかも知れません。環境的に地球全体のバランスが崩れているのは事実です。しかし、平安時代は今よりも、もう少し暑かったようです。その意味では、単に元に戻っているだけなのかも知れません。
 庭の虫の声に耳を傾けると、世の中のことが分かります。小さな変化を見逃さなければ、細かなことが分かります。大きな出来事は、小さな出来事を拡大したものに過ぎません。小さな出来事を〈そう〉と呼びます。古くは〈兆し〉と言いましたが、これは〈気がさす〉と意味でした。ありとあらゆる物事に相があります。それさえ見落とさなければ、厄の根を見つけ、避けることも出来るのです。

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