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不幸のすべて・第八話「感情が不幸を造る」

 道具を自在に使うための様々な奥義があります。刀や武具を使う武術にも、かんなのみを使う大工にも言葉が思いとして伝わり、その思いが不可能な物事を可能にしてきました。多くの技を人々は〈神業〉と呼び、〈魂が宿る〉と考えました。

 魂は形のない物にまで宿ります。そうやって、心を伝え人々に感動を与え続けてゆくのです。音楽や舞踏と呼ばれる種類の物事も同じです。これらすべてが日本語と呼ぶ特殊な言語によって構成され表現されています。だから日本の物は形より思いを大切にするのです。

 ただし日本語と呼ぶ言語は、口から出る音のみではありません。古来には、肉体を動かして作る形や、息の吐き方、目の動き、その他様々な要素を含み〈言の葉〉と呼んでいました。今では〈言葉〉は口から出る声と文字に残る物だけを意味しています。本来の意味とは異なったものです。

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