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播磨陰陽師の独り言・第百三十五話「ちょっと怪談めいた話」

 わらべ歌に、
「お月さん、いくつ、十三、七つ……」
 と言うものがあります。
 幼い頃、よく父方の曾祖母が子守唄で歌ってくれました。しかし、曾祖母の歌は歌詞が少し違っていました。

——のんのさんいくつ、十三、七つ、まだとしわけえな、あの子を生んで、この子を生んで、だぁれかしょ。おまんに抱かしょ。おまんはどこへ?

 で、いつも終わり繰り返すのです。
 父方の曾祖母がこの歌を子守唄として歌っていたので、多分、平家の末裔の呪いの歌だと思うこともあり、その方向でこの歌を解釈してみると、最初の、
「のんのさん幾つ」
 は、時期を意味を表しています。何月何日かと言う意味です。その答えは十三・七つとあります。平家の古い規則では数字を逆に言うので、七つ目の月の十三日目にあたります。つまり旧暦の七月十三日で、この日はお盆になります。また、この歌は七回忌に歌われたことも意味しているようです。
 七回忌は死後六年目のことです。
 六は、地獄の六道に通じ、そろそろ溜まった恨みの念が化けて出る頃です。
 また、お盆なので、
「まだ年ゃ若いな」
 と感想を過去形で述べると言うことで、まだ若くして過去の人になったことを意味しています。
 そして、
「あの子を生んで、この子を生んで……」
 となりますので、ここからがこの歌の怖ろしいところですが、あの子とこの子は名を伏せるほど恐ろしい存在です。それを産み出すのです。つまり亡くなってから六年目に恨みの念が化けて出てわざわいを作ると言うことですね。
「誰に抱かしょ、おまんに抱かしょ、おまんはどこへ?」
 は、
「誰に抱かせよう?」
 です。
 次の〈おまん〉は、多くの解釈では〈お万〉と言う名前ですが、方言に〈お前〉のことを〈おまん〉と言う場合が多いので、ここは、
「お前に抱かせようか?」
 となります。
 そして、最後は、
「お前はどこへ?」
 と呪う相手を探している歌なのでした。呪いや祟りなどの怖いものは父方の曾祖母から、祓いと神事に関する知識は母方の祖母から伝えられました。このお話は曽祖母の伝えた知識で解釈したものです。

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