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播磨陰陽師の独り言・第534話「見えている世界」

 最近、ますます目が悪くなってきました。以前にも書きましたが、私の目は見ている部分が歪んでいて、ハッキリと見ることが出来ません。人の顔が判別出来ないのです。
 文字を読む時はたいへんで、iPodの中の書類を拡大しながら見るしかありません。普通サイズの文字は小さ過ぎて認識出来ません。だからつい、普通の紙をピンチしてしまいます。ピンチとは画面を指で拡大縮小することです。
 私の視野の世界は、まるでドラマの夢のシーンのように、全体が霞《かす》んでいて、中心がぼやけています。
 いつも会う人々は病院の看護士さんばかりなので、皆、同じ制服を着ているため、見分けがつきません。声の調子で見分けているだけです。ほとんどすべての階に入院したことがあるので、向こうはこちらを知っています。他の階から来た看護士さんに話しかけられますが、顔を認識出来ないため、適当に話を合わして誤魔化しています。
 しかし、ハッキリと見える人たちがいます。人たちと言うか、霊的な何かなので、すべてが人とは限りません。時には黒い人影だったりします。人影は、まるでお芝居の黒子のような感じで見えています。
 時には動物の形をしたものが見える場合もあります。病院からの帰りなど、道の真ん中に大きな猫が座っていることがあり、妻に言うと見えていない様子。
「ハッキリと見えるなら、それは生き物じゃないでしょ」
 と言われてしまいます。
 道路の端のいつも同じ場所に立っている人もハッキリと見えています。しかし、これも妻には見えていないよう。
 大阪の病院に入院していた時は、窓から見える外のマンションの踊り場に、黒い人が立っているのを見ていました。それもすべての階に同じ人が立っていたのです。そして、こちらが見ると、向こうも見返して来ます。
 もちろん、他の人には見えていないため、ただの錯覚かとも思ったこともあります。しかし、見えていないだけで、近くの人は影響は受けているようなので、幻覚の類だとも言えません。たとえば、黒子みたいなやつに足首を掴まれて転ぶ人がいます。本人は、なぜ転んだかは理解出来ていない様子で、首を傾げていました。
 物理現象だけを起こすこともあります。たとえば、黒子みたいなやつが物を動かしていたりしても、
「何もないのに勝手に動く」
 と、騒いでいます。
 私にとっては、妙な黒子がそこにいて、物を動かしているだけなのですが……。

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