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播磨陰陽師の独り言・第三百五十三話「死人に鞭を打つなかれ」

は昔から、わが国で禁じられている物事のひとつに、
——死人しびとむちを打ってはならない。
 と言う言葉があります。
 この罪は、大祓祝詞の中にも〈死にぎだち〉と記載されているほど古くからあるもののひとつです。死んだ人の業績を低くしたり、身分を下げたり、悪口を言ってはならないと言う意味ですが、人は死ぬと、すべての罪が許されるのです。それを、わざわざ鞭打つなど、あの世に逝った人に対して、とても失礼なことだと思います。
 しかし、最近の世の中を見ていると、あれあれ? とか思います。どうなんでしょうね。罪人を見ているだけで不快です。

 わが国には昔から様々な禁止事項が伝えられています。
 お盆もすでに過ぎましたが、
——お盆に海や川で泳いではならない。
 と言うものもあります。不思議なのが、お盆の時期になると泳いで亡くなる人が出ることです。それも、毎年、同じ場所で亡くなるのです。死にに行くようなものですね。気味は悪くないのでしょうか? 人が亡くなった場所で泳いで騒ぐんですよ。手足をつけるだけで不気味だと思います。

 あっ、お盆で書き忘れていましたが、
——精霊馬をおさがりとして食べてはならない。
 と言う言葉があります。精霊馬は、先祖を迎えたり送ったりする時に使う、キュウリの馬とナスの牛のことです。これは食べずにお焚き上げします。もったいないからと言って、食べちゃダメですよ。霊の乗り物を食べるなど不謹慎過ぎます。

 さて、この時期、何かと肝試しへ行く方もおられるかも知れません。
 そんな時は、
——幽霊とすれ違ったら、けして振り向いてはならない。
 と言う言葉を思い出してください。振り向かずに、そのまま一目散に逃げるのが正解です。世の中は、障らぬ神に祟りなしですので、相手が気づかなければセーフです。しかし、振り向いてしまうと、相手はこちらを認識してしまうので、何だか怖しい現象を引き起こしてしまうのです。
 もし、そんなことに遭遇した後、神社などへお祓いに行く時は、
——墓参りの後に神社へ行くべからず。
 となります。先祖に守ってもらったから墓参りしてから神社へ行こうとする人がいます。しかし、行くなら神社が先になります。墓参りしたい方は、神社の後に行ってください。このことは、神社に張り紙をして書いてある場合もあります。神社によりますが……。

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