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播磨陰陽師の独り言・第四十九話「アマガエルの問題」

 カエルと呼ぶ生き物が好きです。特にアマガエルが好きです。アマガエルの別名を〈雨乞い虫〉と言います。われわれ播磨陰陽師も、昔からしばしば〈雨乞い虫〉と呼ばれて来ました。その理由は雨乞いをするからです。その時に必ずアマガエルが近くにたむろしています。アマガエルは雨の中を移動すると思われています。雨の中を移動していると、やがて雨が止んで、日が差して、あたりが乾くこともしばしば。アマガエルも、当然、乾きますが、死んだように乾いていても水をかけると蘇るのです。また、不思議なことに、アマガエルのオタマジャクシは水深が浅い場所でのみ生きることが出来て、深い場所では溺れ死んでしまいます。
 門司港の家の庭に何年か前、壺を置いて中に水をはり、水草やミジンコやクロメダカを入れて壺池を作りました。あとは、自然にアマガエルたちが来るだけだったのですが、今年は一番良い時期に入院してしまい、断念せざる終えませんでした。
 昨年はオタマジャクシが100匹ほど生まれたので何匹かは生き残った筈なのですが、アマガエルのサバイバル生活はなかなか厳しいものがあります。すべてのオタマジャクシがアマガエルになれる訳ではありません。また、オタマジャクシが無事にアマガエルになったとしても、直ぐに鳥たちや他の生き物たちに見つかって食べられてしまいます。
 私は、この厳しい現実を生きる小さなアマガエルを目にするたびに、とても愛おしく感じます。
 アマガエルの多くは、田んぼで生まれ、どこかへ移動します。その田んぼの環境がアマガエルたちにとっては死活問題です。田んぼを取り巻く環境が農薬で汚染されると、アマガエルたちは奇形になります。
 あるアマガエルは、手足の指が増えたり減ったり、また、あるアマガエルは口のどこかが上下に裂けたりしていました。
 奇形のアマガエルがいる田んぼのお米も、
――基準を守っているので安全だ。
 と言う人もいます。
 しかし、長い間、人が食べたらどうなるのか、まだ検証されていないのです。
 ふと、アマガエルのことを考えながら、
――安全な食べ物って、いったい、誰が保証するの?
 と、考えてしまいました。

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