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播磨陰陽師の独り言・第二十二話「カマクラ」
私の田舎は雪国ですが、カマクラを作ることの出来る種類の雪は降りません。カマクラは、ベタベタした重い雪で作るものです。十勝のようなサラサラな雪では、作っても固まりません。しかし、どうしても、カマクラを作りたくなって、ある時、作ったことがありました。
カマクラを作るには不向きな雪です。仕方がないので、バケツに水を汲んで、氷を割りながら、水を雪にかけて作りました。こうやると、表面が凍ります。それで、上手い具合にカマクラらしきものが出来上がるのです。
かまくらは快適でした。何人かの子供たちと作り、中に入って遊びました。しかし、中で餅を焼くのは無理でした。まだ、炭の存在を知らなかったのです。
「焼くにはどうしたら良いのだろう?」
と言っても、誰も知りません。七輪も火鉢の存在も知りません。火鉢など見たこともなかったのです。もちろん、コタツも見たことはありません。北海道には、そんな物はなかったのです。コタツの存在を知ったのは大人になってからです。
あるのはルンペン・ストーブばかりです。そんな物は大きすぎてカマクラには持ち込めません。しかも火力が強すぎます。仕方なく、暖房のないまま、カマクラにする入りました。
カマクラを作ったのはひな祭りの頃でした。なぜかひな祭りとカマクラをセットで考えいていたのです。従妹が甘酒を持ってきました。にわかにひな祭りのはじまりです。折り紙のお雛様を飾って……カマクラには飾りませんが……明かりをつけましょボンボリにと歌いながら遊んでいました。三月のはじめは、まだまだ冬です。それどころか、ゴールデンウィークに雪が降ることもある地方です。
カマクラで遊んでいると、あたりは吹雪になりました。吹雪がおさまるまで、カマクラを出る訳にはゆきません。カマクラは遊びの場から、にわかに避難所となりました。やがて吹雪の強い風でカマクラは壊れてしまいました。
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